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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「───な 、るな 、るなっ」

「んぅ…?」

優しく揺り起こされて、るなはゆっくりと瞼を開けた。

差し込んできた光が眩しくて、何度か瞬きを繰り返す。

光を取り込んですぐ、目の前に飛び込んできたのは優しく微笑むゆあんくんの顔。

「……ゆあんくん、おはよ ~ …」

「おはよ、るな。よく眠れた?」

「う、うんっ」

大きく頷く。実際は一回盛大に起こされているけど……でもその後はちゃんとぐっすり寝られたし。嘘ではない、よね!

ゆあんくんはるなの言葉に「そっか」とほっとしたように微笑んだ。

「起こさなかったならなにより。……さて、それじゃあ、そろそろ起きて朝食を作らないとね」

「うんっ!あ、昨日買ってきたジャム、早く食べたいなぁ ~ っ」

「そうだったっけ。でもまずは着替えてから」

「はーいっ」

部屋着に着替えよう、とベッドを降りかけたその時だった。

「る 、る 、るな!?」

「ふぇっ?ど、どうしたんですか!?」

普段そんなに大声をあげない彼が、凄く大きな声を出したのでるなは飛び上がった。

そこには、大きく目を見開いて動揺した表情のゆあんくん。え、なに、?どうしたの?そうるなが尋ねる前に、彼はるなの腕を指さして言った。

「どうしたの?!それ!!」

「んぇ?……あっ」

ど、どうしよう…みられた。ゆあん、くんに

冷やさなかったのがいけなかったのか、原因はわからないけれど。

昨夜、ゴンッ!と頭を受け止めてくれたるなの二の腕さんの一部が、真っ青な痣になっていた。

「あ、ぁはは……」

どうしよう、これは、気づかなかった。

だって、こんなに腫れてるなんて、思わなかったし。

どう言い訳しよう、と思っていると、ゆあんくんが先回りして言った。

「…もしかして、俺が殴った?!寝てるとき!!」

「う、ううんっ!!違うの、殴られてはいな……あっ」

青くなって震えるゆあんくんに反射で否定を返してしまってから、しまった。と気がつく。話を合わせておけばよかったのに、るなのばかばか ~ っ!!!

もちろんそれを頭の良いゆあんくんが聞き逃してくれるはずもなく…。

「え、違うの……?というかるなさ、その言い方ぶりに、その傷の心当たり、ある?」

「ぇえっと…そのぅ…あの」

しどろもどろになりながら、るなは視線をさ迷わせる。そっと触れた二の腕は確かに押すとまだ痛い。やっぱり結構勢いよく落とされたのかな…?とにかく、頭を打たなくてよかったぁ……。

「るな?」

「ひゃ、ひゃいっ…?!」

「…………」

じ ~ ~……っとゆあんくんが見てくる。えっと、え ~ っと、と小さく繰り返するなは、だらだら冷や汗を流しながらつい目を逸らしてしまった。

るながいよいよ何にも言えずに、なんとかしてゆあんくんの気を逸らせないかとぐるぐるし始めた頃。

ゆあんくんはすっと目を細めて言った。

「……るな」

「な、なに?ゆあんくん」

「るなさ、ベッドから落ちたでしょ」

ひゅ、とるなの喉がお返事をした。やばい、はやく弁明しなきゃ

「お、おっ、落ちてないっ!!落ちてないです!!!」

「いやその反応は絶対落ちたヤツ!!俺が蹴り飛ばしちゃった?!」

「蹴り飛ばされては、っ…ないのっ…!!!」

「は、てことは落とされはした?!蹴られはしたんだね?!」

「し、し……してないよ、……!!」

「るな、目泳いでるから!!俺の目は誤魔化せないからね?!」

ぅ、うぐぐぐぅ…っ!!!

ゆあんくんの言葉に、るなは今にも泣きそうな顔になりながらぶんぶん首を振り続ける。でもゆあんくんはもう確信を持ってしまっているみたいで。

「まったく、そうなら素直に言ってよ……!」

と小さく呟いたあと。

シーツの上で足を揃えて正座し、腕を前に突き出して……….


伏せた。


「すみませんでした!!」

「うええっ?!ゆ、ゆあんくん?!土下座なんてしなくて大丈夫だよ?!」

「いや!!愛するひとをベッドから落とした挙句怪我をさせるなど本当に最低だから…っ!るな、俺を殴って…!!!」

「え、あ、愛するひと……?えへへ……」

「照れてる場合じゃないんだよ?!こんなに大きな痣になってるじゃん!!」

「う ~ …大丈夫なのに……」

「本当?」

「うん……いたっ…、?」

「こら、やっぱり痛いんじゃん」

「い、今のはゆあんくんが押すからだよっ…!」

洗いたての朝の光が降り注ぐベッドの上で暫く押し問答を繰り返す。平気だと言い張るるなに、ゆあんくんも珍しく頑なだ。

「るな。最初に約束した通り、寝室は分けよう。やっぱり危険だから」

「そ、そんなことないよぉ…」

「あるでしょ。今回は運が良かったけど、もし頭を打ってたら……」

ゆあんくんが、硬い表情でるなの手をぎゅっと握ってくれる。その指先がなんだかいつもより冷たいような気がして、るなははっとした。

「ぁ……」

なんだかいつもの調子でお話しちゃってたけど、……ゆあんくん、こんなに怖がってたんだ。

「本当は、1番寝相を直すのが効率いいんだろうけどさ、時間が掛かるし。るなに迷惑がかかるから。」

真剣な顔つきのまま、ゆあんくんは言う。

でもるなはっ、るなはっ……。

「や、やっぱりやだぁぁぁ ~ !!!!」

「るな、そうは言ってもさ、…」

「絶対他の方法がある、あります!!だから、ね 、?るな、たくさん考えるからっ…だからっ……!!!」

泣いてもとまらない、るなだって必死だもん。思わず身を乗り出して言葉を続けた。

「るな、……るなね、起きてすぐにゆあんくんのお顔が見られるのすごく嬉しいの。あとね、ぎゅってしてもらいながら寝るのも大好きなんだ。それがなくなっちゃうの嫌だよぉ……っ」

「る、るな……それは俺だって好きだよ…?でも、っ…」

ゆあんくんの瞳が揺れ動く。同じ気持ちでいてくれたのが嬉しくて、るなはさらに重ねた。

「ね、るながいますぐ閃いちゃうから、一緒に寝てても危なくない方法を!!」

例えば、…えっと、えーっと。

るなはぐるぐる部屋の中を見回して。

はたと、椅子の上に置いてあるクッションが目に入った。

それが、凄く神秘的に見えて…__________

「あ!これだ、これだよっ!!ゆあんくんっ!!」

「え、?…あ、」



ぴんぽーん


「あ、はーいっ!!」

「宅配でーす」

「ありがとうございますっ」

「ここにハンコをお願いします」

「はいっ」

「ありがとうございましたー」

「お疲れ様です!」

受け取った荷物のうちひとつを抱えて、るなはばたばたとリビングに戻る。

「ゆーあーんーくん!!来た!来ましたぁっ!!」

「お、本当?俺も手伝うよ。るな」

「ありがとうございます!!!さっそくセットしましょうっ!」

玄関に置き去りになっていたふたつめのダンボールはゆあんくんが持ってきてくれて、るな達はすぐにそれらの封を切った。

中から出てきたのは。

「お ~ …!ふかふかぁ…!」

「これ、普通にこのまま寝られそう………」

「ですね、!このクッションの上でお昼寝したら気持ちよさそぉ……」

そう、大人ひとりが眠れてしまうサイズの大きなクッションである。

るなとゆあんくんはそれをベッドの両脇に置いて、もしるなが落っこちても痛くないようにすることにしたんです!

「ナイスアイデアだね、るな。やっぱるなの発想力は凄いよ」

「えへへ…ありがと、っ」

ごろん、と並んで寝っ転がったベッドの上で、ゆあんくんがるなの頭をわしゃわしゃ ~ って撫でてくれる。せっかくちょうどお休みだし、ちょっと試しにお昼寝してみよう!ということになったのだ。

るなはぜ ~ ったいなくなったら困ると思っていたゆあんくんのぎゅ ~ を堪能しながら、ふと思い出して「あ、!そうだぁ!!」と声を上げた。

「ん。どうかした?」

「あのねゆあんくん、るな 、もう一個考えたのっ!これはね、ゆあんくんの寝相が悪くならない方法!」

「えっ?本当?」

ゆあんくんが目を見開く。えへへ、だってこれは、ゆあんくんには伝えていなかったから秘密の作戦だったからだ。

るなはぴょんとソファから降りると、あるものを手に取って再びゆあんくんの腕の中に収まった。

「よぉ ~ し…♪」

「え、…?わっ…るな!?」

「あははっ!びっくりした?しました ~ ?」

「いやびっくりするでしょ、誰だって…え、?これは…」

るなのことを抱きしめる手首を、きゅっとくっつけて。それからそこにぐるぐるかわいいリボンを巻き付ける。

最後にふわっとちょうちょ結びに結んだら、もう簡単には解けないはず!

「どうですかどうですか?!これでずっとるなのことぎゅっとしていられますよ!」

「るな、……単にこれ、るながぎゅっとされていたいだけでしょ?!」

「そうです!!!」

「そうですって、……るな自身も寝返りすらうてないけど」

「大丈夫だよ ~ っ」

「……る、るなぁ ~ ……」

はあ……ってため息をついたゆあんくんに、るなの方からもぎゅっと抱きつく。

「まぁまぁ、一回やってみよ?ね?」

「まぁ、結ばれてしまったものは仕方ないか……」

意外とあっさり折れてくれたゆあんくんが、るなを抱え直す。ん、?もしかして結構気に入ってくれたかも?上手く上を見れなくて、ゆあんくんの表情が見えないけど…、あんまり怒られなかったってことは、多分そういうことだよね?

「えへへっ…んふふぅ……」

「……るな、笑ってないで寝るよ」

「ふふ、はーいっ」

ゆあんくんの呆れたようなやわらかい声に返事をして、素直に目を閉じる。

すぐ側にゆあんくんのあったかい肌があって、匂いがあって…とく、とく、と鼓動が聞こえる。

ああ、ほら、やっぱり、そうだ。

ここより安心して眠れる場所、他にないんだよ、るな。

るなは緩く口元に笑みを浮かべながら、夢の世界へと旅立っていくのだった。


「案外いいかも、これ…」

「やった ~ っ!!!!!」

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