テラーノベル
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二人は雄大のマンションへと急いだ。雄大の隣人というのは、30代くらいの痩せた男性で、いつも顔色が悪い。引っ越してきた当初に一度挨拶したきりだったが、彼こそが「間の住人」について知っている唯一の人物だった。
雄大はインターホンを鳴らす。
雄大「すみません、隣の雄大です! 至急、お話が……!」
何度かインターホンを鳴らした後、ガチャリとドアが開いた。隙間から顔を出したのは、やはり顔色の悪い男性だった。
隣人「……雄大さん。それに、もしかして、夢さん?」
夢「はい、そうです! 私たち、助けてもらいたくて……」
隣人「……とにかく、中へ入ってください。早く」
隣人は二人を招き入れた。部屋の中は薄暗く、窓は全て遮光カーテンで閉め切られていた。室内には奇妙な呪術的な模様が描かれた紙が何枚も貼られており、塩の山が四隅に置かれていた。
雄大「あの、俺の部屋に来てくれた時、あなたが『間の住人』のことを教えてくれたんですよね? 詳しい話を……」
隣人は重々しく頷き、ソファに座るよう促した。
隣人「……私は、見えるんです。境界線の隙間から現れる、あれらが」
彼はゆっくりと語り始めた。彼の家族は代々、この「間の住人」に憑りつかれてきたという。あれらは実体を持たないエネルギー体のようなもので、人間や動物の隙間(物理的な隙間、時間の隙間、心の隙間)を狙って現れる。そして、人間の姿や声をコピーし、混乱させて境界線を跨がせようとするのだと。
夢「じゃあ、やっぱり昨日のあれは……」
隣人「夢さんの部屋のベランダの髪の毛は、あれらが侵入を試みた痕跡でしょう。あの髪の毛自体が『隙間』なんです」
雄大「境界線を跨げないっていうのは本当なんですか?」
隣人「はい。物理的に『ここからここまで』という線が明確にあれば、侵入はできません。だから私の部屋はこうして対策をしています。……ですが」
隣人は言葉を切った。
雄大「ですが、何ですか?」
隣人「一度狙われたら、終わりです。あれらは執念深い。姿が見えなくなっても、必ずまた現れます。あなた方が安全に過ごせる『間』は、もうありません」
隣人は蒼白な顔で二人を見た。その目は、諦めと恐怖に満ちていた。
夢「そんな……じゃあ、私たちはどうすれば……」
隣人「一つだけ方法があります。あれらが最も嫌うもの、それは……」
つづく
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