テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……一体、何をしたらあんな風に追われたり、狙われたりするんですか?」
安堵した優來の口から出てきたのは次々と湧き上がる疑問だった。
先程の出来事を思い返せば恐怖が蘇ると同時に、どうして自分があんな目に遭わなければならなかったのかという疑問が尽きない。
そんな優來の問いを受けた至は、まるで世間話でもするかのような気軽さで口を開いた。
「別に、何か明確な理由があるわけじゃねぇけど、俺らの世界には普通じゃ説明出来ねぇことが山程あんだよ。組織同士の繋がりってのはデケェし、中には対立してる組織ってだけでちょっかいをかけてくる連中もいるしな……」
「…………」
疑問に思ったからこそ尋ねたものの、返ってきた答えは優來の理解を超えるものだった。
むしろ聞かなければ良かったとさえ思えてくる。
至にとっては当たり前なことなのかもしれないが至の言う世界と自分の常識はあまりにもかけ離れていた。
「……そんな組織に身を置いていながら、いくら組織と繋がりがあるからって一般企業で働くなんてリスクしかなくないですか? その……対立してる組織の人に知られたら密告されたりするんじゃ……」
「まぁそういうリスクはあるけどよ、大抵のことは揉み消せるし俺らと同じように対立してる組織の連中の中にも俺みたいに一般企業で働いてる人間はいるしなぁ……」
「……そんなにそういう世界の人たちと繋がりのある一般企業があるっていうんですか?」
「そりゃあるだろ? つーかどの世界だって裏との繋がりがねぇ完全にクリーンな企業なんてほんのひと握りなんじゃねぇの?」
「…………」
返ってくるのは優來にとって到底理解しがたい話ばかりだった。
あまりにもあっけらかんと話す姿に優來はどう反応すればいいのか分からずただ困惑するばかり。
これ以上話を聞いたところで自分の知らない世界を突きつけられるだけなのではないかという思いが頭を過ぎったところで至がふと思い出したように声を上げる。
「はぁ、それより流石に腹減ったなぁ。優來も空いただろ? 県外まで来ちまったからすぐには帰れねぇし、飯食ってこうぜ?」
「あのねぇ……、あんな目に遭ってお腹なんて空いてるわけないでしょ? 私は一刻も早く帰りたいんです!」
あまりにも呑気な提案に優來は思わず声を荒らげた。
「送っていただけないならもういいです! 貴方と一緒に居るとろくなことにならないし、もう一人で何とかしますからいい加減解放して――」
そこまで一気に捲し立てたそのとき、ぐぅーっと静かな空間にやけに大きなお腹の音が響き渡った。
「…………っ!」
その音に優來がぴたりと言葉を止めると、みるみるうちに頬が赤く染まり、気まずさから顔を上げられなくなる。
あれほど強気に捲し立てていたのが嘘のように優來は黙り込んでしまった。
そんな優來を前に至は一瞬だけ何かを言いかけたように見えたものの音には一切触れず、
「悪かったって。そんなに怒るなよ……飯食うだけ食ったらちゃんと送り届けるから、とりあえず飯だけ食おうぜ? な?」
あくまでも先程と変わらない調子で至はもう一度優來を食事に誘う。
からかうこと無く何事も無かったように会話をする至に優來は、
「…………分かりました。それじゃあご飯だけ……」
気まずさから渋々食事を共にすることを了承したのだった。
けれど、高速道路を降りた先は少し田舎なのか目に入るのは住宅ばかりで食事が出来そうな店はなかなか見当たらない。
「んー、何もねぇな……」
当てが外れたのか至は困ったように呟きながらも車を走らせ続ける。
そんなさなか、車内に至のスマートフォンの着信音が鳴り響いた。
「はいはい?」
至は片手でスマートフォンを取り上げると慣れた様子で通話を始めた。
「あー、やっぱりな……まあそうだと思ったよ。で? 当の本人は?」
当然相手の姿は見えず誰と話しているのかも分からないものの、至の口調からして親しい間柄なのだろうと優來は推測する。
至は時折相槌を打ちながらも変わらず車を走らせているので、優來は窓の外へと視線を向けて流れていく景色を眺めながら耳に入ってくる会話に何気なく意識を傾けていた。
すると、ふいに聞き覚えのある名前が耳に飛び込んでくる。
「マジで執拗い男だよな、七海の野郎は」
その名前に優來の肩が微かに揺れた。
コメント
1件
うわぁ〜今回もヤバかった!!😭💕 優來の「あんな目にあってお腹すくわけないでしょ!」→直後にお腹なるの可愛すぎるでしょww至がからかわずにスルーするとこも大人流儀って感じでキュンとくる…! でも最後に「七海」の名前出てきて空気変わったね…まさか元カレとか? 続き気になりすぎるよ〜〜!!🌸
管野アリオ
875
#オリジナル
重田💋(omoda)
886