私はイチゴのパフェと温かいストロベリーティー。
篤久様はイチゴの乗ったワッフルとコーヒー。
「こんな贅沢な一日は初めてです」
ティーカップを持ったままそう呟いた私に
「今日はたまたまそういう休日。今度は何もせずに音楽を聴くだけの休日や、本を読むだけの休日も紹介するよ。真奈美さんは休日を取ることに慣れていないみたいだから。休む練習」
と、篤久様が言う。
「休む練習……」
でももうそんなに時間がないとも思う。
この数時間は完全に忘れていたけれど、やっぱり帰る頃には思い出す……遥香は毎日が休日のようだな。
「これ、今日のお土産」
帰りの車に乗り込むと、篤久様が私に手のひらサイズのものを差し出す。
「あ、さっきのストロベリーティー…ですか?」
「そう。むき出しで悪いけど、ラッピングで大きくなるとそのバッグに入らないだろ?」
ストロベリーティーのティーバッグ5個が透明フィルムにくるまれた上に、カフェのシールが無造作に貼られている。
私がトイレに行った間に購入してくれたようだ。
「ありがとうございます……いっぱい、何もかもすみません」
「俺の休日に付き合ってもらってありがとう。一口ごとに美味しそうな顔で味わっている真奈美さんが可愛くて、いい休日になった」
可愛くて……?
いやいや、ドキッとするのは間違いよ。
私……食べたことのないような美味しさの連続に、きっとすごい顔をして食べていたんだね……
そう思いながらも、ドキドキも継続しておかしな緊張を抱えて帰宅する。
「……池田様の車ですね」
「前はもっと出掛けていたと思うが、最近よくここに来てるな」
本当にそうだよ……
「篤久様、楽しかったです。ありがとうございました。私はこちらから戻ります」
裏から建物に入ればすぐに私の部屋だ。
私が玄関から帰るのはおかしい。
篤久様も分かっているのだろう。
何も言わずに、軽く手を上げて玄関へと向かわれた。
はぁ……贅沢しちゃった。
朝着ていた服の入った袋を抱きしめて空を見上げてから裏へ向かうと
「真奈美」
忌々しい声が後ろから聞こえた。
「どこか行ってたのか?」
「休日です。放っておいてください」
「偉そうな返事をしていられるのも、今だけだ」
池田はそう言いながら私の前まで来ると
「お前の父親の冤罪事件、遥香が絡んでいるって?」
ニヤリと私を見た。
……どこで知った……?
「図星って顔」
ますますいやらしい笑みを浮かべた池田は
「篤久さんとお前が話しているのを聞いた」
という。
「……何を聞いたと?」
第一家事室の前でのことか……どこからどこまで聞いていたのか確めたい。
「うん?帰ろうとした階段で、お前が“篤久様以外の誰も、遥香様の起こした冤罪事件が私の家族を不幸にしたと知らないので、このまま言わないでいただけますか?”って。そんなことがあって、真奈美がここにいる理由……何だろうな?」
名俳優でもそんなに気持ち悪い表情は出来ないわ、という顔つきになった池田が半歩私との距離を詰めた。
コメント
3件
😰 せっかく素敵な休日やったのに😭
えぇ😣とうとうバレた…なんとかこの場を切り抜けて欲しい🙏篤久様、気付いてー ク○達に負けないで!!
聞かれてたとは… こやつそのことに付け込んで、愛人にするとか、全て自分の言いなりにさせるつもりだぞ!真奈美ちゃん!冷静に! っていうか篤久様!誰かが聞いててもおかしくない所で話した、これは篤久様の落ち度です!!! うん?待って、篤久様、わざと聞かせた?