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11 - 第6話:飼い主とsystem_0

2025年05月11日

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第6話:飼い主とsystem_0

COKOLOメインホール、バーチャルライブステージ“エモクラウン・ドーム”。

昭和アイドル風にピンクとライトが交差し、サイドスクリーンには羽根が舞うエフェクト。


ステージ中央に立つのは、赤と緑のツートーンボブを揺らすコザクラ。

昭和風ミニドレスにピンヒール。深めの礼と、お決まりの挨拶。


「お待たせしましたぁ!今日も飼い主たちの愛、ぜんぶ受け止めますっ!」





【ライブ:カミツキ ver.昭和アレンジ】


コザクラの代表曲「カミツキ」が、ピアノとストリングス入りの昭和アレンジで始まる。

歌声は静かに、けれど言葉は鋭く。飼い主たちのハートを強く、甘く、噛みしめる。


間奏のトークパート、コザクラはふとこう言った。


「それにしてもさ……

うちの兄がさ、どんなバグも無言で直すわ、LAST STRIDEでタグ奪って逃げ切るわで――」


観客がざわつく。

コザクラは気づかない。


「やっぱ、お兄ちゃんが一番カッコいいんだよね。system_0よりも!」


……一瞬の沈黙。

そしてコメント欄が爆発する。


「え?兄=system_0って言った今?」

「兄、無言でタグ取るって……あの無言の黒アバターのこと??」

「今の、録画残るの?」







【現実:シスケープ社】


ユーヤのデスクに、同僚たちの目線が集まっていた。

「お前さ、昨日のタグ戦、また逃げ切ってなかった?」「てかsystem_0って……」


彼は何も言わず、モニターに向き直る。

指先だけが、静かに再起動されたバトルテスト環境を操作していた。





【LAST STRIDE:Phantom Tag戦】


開幕と同時に、タグを奪われる。

が、system_0の動きは微動だに乱れない。


「奪い返すだけだ。」


草原マップの中で、彼は高台を利用し、

狙撃ポイントと罠地点を瞬時に判断。タグ保持者が通るルートを予測し、

無音の突進からのカウンター斬撃で奪取。


その瞬間、観戦コメント欄にはまた同じ言葉が連なった。


「やっぱり……system_0って、コザクラの兄だよな」

「黙って取り返すの、兄貴すぎる」







【COKOLO:ライブ後】


ステージ袖で、メロンソーダを飲むコザクラがスマホを見て絶句していた。


「え、なに?なに!? あたし、今、バラした? おにーちゃんのこと……?」

「やばい。ファントムなの、バレた……いや、でもそれも推せる……!」


顔を真っ赤にして、何度もリロードする彼女の横で、

COKOLOのAIマネージャーが呟いた。


「視聴率、今期最高更新です。ファンとの関係性分析値、突出しています」


「うるさい、今それどころじゃないの!」





【ユーヤ:ログイン画面】


system_0はログイン前の画面でしばらく止まっていた。

画面には「コザクラチェック!特別編:今週の“兄バレ”」のサムネイルが表示されている。


……一瞬、目を細める。


だが、何も言わずにログインボタンを押した。


「タグは、黙って取り返す。それだけだ。」

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