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第6話:飼い主とsystem_0
COKOLOメインホール、バーチャルライブステージ“エモクラウン・ドーム”。
昭和アイドル風にピンクと金のライトが交差し、サイドスクリーンには羽根が舞うエフェクト。
ステージ中央に立つのは、赤と緑のツートーンボブを揺らすコザクラ。
昭和風ミニドレスにピンヒール。深めの礼と、お決まりの挨拶。
「お待たせしましたぁ!今日も飼い主たちの愛、ぜんぶ受け止めますっ!」
【ライブ:カミツキ ver.昭和アレンジ】
コザクラの代表曲「カミツキ」が、ピアノとストリングス入りの昭和アレンジで始まる。
歌声は静かに、けれど言葉は鋭く。飼い主たちのハートを強く、甘く、噛みしめる。
間奏のトークパート、コザクラはふとこう言った。
「それにしてもさ……
うちの兄がさ、どんなバグも無言で直すわ、LAST STRIDEでタグ奪って逃げ切るわで――」
観客がざわつく。
コザクラは気づかない。
「やっぱ、お兄ちゃんが一番カッコいいんだよね。system_0よりも!」
……一瞬の沈黙。
そしてコメント欄が爆発する。
「え?兄=system_0って言った今?」
「兄、無言でタグ取るって……あの無言の黒アバターのこと??」
「今の、録画残るの?」
【現実:シスケープ社】
ユーヤのデスクに、同僚たちの目線が集まっていた。
「お前さ、昨日のタグ戦、また逃げ切ってなかった?」「てかsystem_0って……」
彼は何も言わず、モニターに向き直る。
指先だけが、静かに再起動されたバトルテスト環境を操作していた。
【LAST STRIDE:Phantom Tag戦】
開幕と同時に、タグを奪われる。
が、system_0の動きは微動だに乱れない。
「奪い返すだけだ。」
草原マップの中で、彼は高台を利用し、
狙撃ポイントと罠地点を瞬時に判断。タグ保持者が通るルートを予測し、
無音の突進からのカウンター斬撃で奪取。
その瞬間、観戦コメント欄にはまた同じ言葉が連なった。
「やっぱり……system_0って、コザクラの兄だよな」
「黙って取り返すの、兄貴すぎる」
【COKOLO:ライブ後】
ステージ袖で、メロンソーダを飲むコザクラがスマホを見て絶句していた。
「え、なに?なに!? あたし、今、バラした? おにーちゃんのこと……?」
「やばい。ファントムなの、バレた……いや、でもそれも推せる……!」
顔を真っ赤にして、何度もリロードする彼女の横で、
COKOLOのAIマネージャーが呟いた。
「視聴率、今期最高更新です。ファンとの関係性分析値、突出しています」
「うるさい、今それどころじゃないの!」
【ユーヤ:ログイン画面】
system_0はログイン前の画面でしばらく止まっていた。
画面には「コザクラチェック!特別編:今週の“兄バレ”」のサムネイルが表示されている。
……一瞬、目を細める。
だが、何も言わずにログインボタンを押した。
「タグは、黙って取り返す。それだけだ。」