「はー、今日も疲れたねー」
「ほんとそれ」
その日、私は友達と一緒に学校から家に帰る途中だった。
毎日代わり映えのない道を通って帰宅するのは少し退屈だけど、仕方がない。これが私の日常なのだから。
「じゃ、また明日!」
いつもの交差点で別れて、それぞれの帰路につく。
私の家は住宅街の中にあって、交差点からは歩いて十分くらい。もうすっかり暗くなった空を見上げながら歩いていると、ふと足元が光っていることに気づいた。
なんだろう? 不思議に思って近寄ると、そこには見たこともない奇妙な模様が描かれた、大きな石が落ちていた。
「なんだこれ?」
しゃがみこんでまじまじと見つめていると、その石の模様がチカチカッと点滅し始めた。
びっくりして後ずさりすると、さらに激しく点滅し始める。まるで、何かを警告するように。
そして次の瞬間。目の前の石が眩しく光って、思わず目を閉じた。
***
目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。
えっと、確か私は学校から帰る途中、いつものように公園を通っていて。
そうだ、あの時。
石が突然、強く発光したんだ。
そして、次に気づいた時にはここに立っていた。
「ここは、どこだろう」
辺りを見渡すけれど、見える景色は変わらない。
真っ白で無機質な部屋だ。
ただ一つ、私の正面にある扉を除いては。
ドアノブに手をかけようとして、その手が震えていることに気づいた。……どうしてこんなに怖いのかわからない。
まるで、自分の体が言うことを聞かないみたいだった。
ゆっくりと深呼吸をして、震える手を落ち着かせる。……そうしてようやく、私はドアノブを握った。
ガチャリと音を立てて、扉が開かれる。
中は広くて薄暗い。奥の方に明かりが見えるけど、それくらいしか目立った点はなかった。
「誰か、いますか?」
返事はない。
私は恐る恐る、部屋の中に足を踏み入れた。
床は石造りで、壁も天井も同じような材質だ。部屋の中央にある大きなテーブルの上には、ランプが置いてあった。
それ以外、特に目を引くものもない。誰もいない。
ここに来れば、会えると思ったんだけど。
肩を落としながら、私は来た道を戻ろうとした。
その時だった。
カチャ、という音が聞こえた。
振り返ると、さっきまでなかったはずの、ドアがそこに出現していた。
そしてその向こうから、一人の少年が現れた。
「おめでとうございます! あなたは見事、この部屋をクリアしました!」
私より少し年上の、眼鏡をかけた少年だ。
彼は私に向かって、手を差し伸べてきた。
「ようこそ、僕の館へ。歓迎しますよ」
この部屋に、出口はない。
壁も床も天井も真っ白で、窓もない。家具の一つもなく、殺風景極まりない。
私はここに来て初めて、自分が裸足であることに気付いた。
この奇妙な空間に、たった今、私は連れてこられたのだ。
「君は、僕と契約したんだ。その代償として、この部屋を出ることは許さないよ」
目の前に立つ少年が、にっこりと微笑む。
「さ、早く服を脱いで。僕は君の全てを、余すことなく知りたいんだよ」
そう言って彼は私のブラウスに手をかけた。
ああ、これが現実だっていうのか!
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