テラーノベル
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商店街を抜けると、小さな公園があった。
ブランコと滑り台、それから古いベンチが二つ。小さいころ、何度か来たことがある。
昴はブランコの前で足を止めた。
「乗る?」
「今さら?」
「最後なんだからいいじゃん」
「それ言えば許されると思ってない?」
「思ってる」
昴はブランコに腰を下ろし、ゆっくりと地面を蹴った。
きい、きい、と鎖が鳴る。
わたしは隣のブランコに座った。
子どものころより座面が小さく感じられた。足を伸ばせば、すぐに地面に届く。
わたしたちはしばらく、ゆっくりとブランコを揺らしていた。
「ねえ、咲」
「なに?」
「昔さ、わたしが泣いたとき、どう思ってた?」
わたしは足を止めた。
「…困った」
「それだけ?」
「うん」
「ひどいなあ」
昴は笑ったけれど、すぐに視線を落とした。
「わたし、あのとき本当に悲しかったんだよ。何をしても、咲はこっちを見てくれなかったから」
「うん」
「嫌われてると思った」
わたしは何も言えなかった。
あのときのことを、忘れたことはない。
昴が泣いた顔も、そのあと来なくなったことも、自分から声をかけるまでの心細さも。
「ごめんね」
今度は、ちゃんと言えた。
昴は首を横に振った。
「だから、もういいって」
「でも、わたし、あのとき……」
言葉が続かなかった。
あのとき、どうして無視していたのか。
どうして素直に話せなかったのか。
今なら、少しはわかる気がする。
誰かを大切に思うことが怖かったのだ。
一緒にいたいと思うことも、離れたくないと思うことも、知らないままでいたかった。
それなのに、昴が来なくなっただけで、あんなにも寂しかった。
わたしは自分の手を見つめた。
「昴が来なくなって、初めてわかったんだと思う」
「何が?」
「昴と一緒にいたいってこと」
昴は黙っていた。
わたしは顔を上げられなかった。
「だから、あのとき、自分から声をかけたの」
「うん」
「…来てくれて、よかった」
言い終えてから、わたしは少し恥ずかしくなった。
「わたしも、よかった」
しばらくして、昴が立ち上がった。
「そろそろ行こうか」
「うん」
わたしたちは公園を出た。
背後で、ブランコが風に揺れていた。
コメント
1件
お気持ち、とても伝わってきました……。公園のブランコであの日の話をするシーン、胸にじんわりきましたね。「ごめんね」が今度はちゃんと言えたこと、一緒にいたいと初めて言葉にできたこと。どちらも大人になってやっと届く言葉で、静かだけれど重みがありました。ブランコのきいきいという音の描写も、子どもの頃と今の座面の大きさの違いも、時間が経ったことをやさしく教えてくれていた気がします。昴との距離が少し縮まった、とてもいい第6話でした。
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