テラーノベル
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俺は、セレーネをつれてゴンドラに乗り込む。すると監視のアクアレムの騎士たちが6人乗り込んできた。
「お前ら何人で来てるんだ、水の街観光ツアーみたいになっているだろうが!」
「し、しかし警護を兼ねておりますので」
「そんなもんいらぬ! 見合いの邪魔ださっさとどけ!」
俺は騎士たちを追い出し、オールで桟橋を突いてゴンドラを出航させる。
そこにソニアとジャガー、ヨハンナ、ママ上、ナハトが飛び乗ってくる。
「安心しろ、護衛はオレ達がやってやるからよ」
「遠くから眺める事は許すが、半径30メートル以内に入ったら余はキレるからな!」
これで邪魔な奴はいなくなった。
ゴンドラがスイーっとポセイドン城から離れ、市場方面の水路へと入る。
「おいジャガー、オール漕いでくれ」
「なんでオレが」
「今回は俺とセレーネの見合いだぞ。デート中にバテて低血糖起こしたらどうするつもりだ」
「ったく、ダイエットだと思ってやれよ」
そう言いつつもジャガーが船尾でゴンドラを漕ぎ、俺とセレーネは隣あって座る。
さて、悪役演じてる時は割とスラスラ言葉が出てくるんだが、こうやっていざ同い年くらいの子とデートすると言葉につまるな。
俺のエロゲ引き出しを総動員し、どんな話題がいいかを考えると、街を褒めろとめちゃくちゃ無難なトークテーマが出てきた。
「美しい街だな」
「そうですね……」
特に話題も膨らまず、選択肢は失敗したっぽい。というより、今のセレーネのテンションが低すぎて、何を言ってもダメそう感がある。
俯いた彼女の顔は、明日世界滅びないかなと思ってそうなくらい暗い。
「緊張しているのか?」
「緊張というか、その……」
「じー……僕のことは気にしなくていいよ」
ナハトが、至近距離でセレーネを覗き込んでいる。
「何してんだお前は?」
「一応僕の後輩になるわけだからね、しっかり見ておかないと。顔は合格、体もエッチなラインしてるね。一応チェックしとくけど、性病とかある? 虫歯とかもあったら駄目だよ。キスしたとき移っちゃうから、ちゃんと治療して」
既に先輩ヅラのナハト。まるで風俗店の面接をしているようだ。
「そのような病気はございません」
「じゃあ処女かな?」
「お前は何を聞いとるんだ! ナハト、わんわん!」
俺がそう言うと、彼女は豆柴形態になった。
彼女はわんわんと言うと、条件反射で犬化するのだ。
「わんわん!」
「しばらくその格好でいなさい」
「わんわん! がるるるるる」
抗議のつもりか、俺のズボンを噛んでくるナハト。
続いてママ上が質問をする。
「あ、あの、セレーネちゃんは、どうしてラウルちゃんに釣書を送ってきたのかしら? 他にもソニアちゃんや、ジャガー君もいるのに」
「それは……その……一番……」
「一番?」
「優しい王子なので……」
セレーネは耳まで赤くして、ゴニョゴニョと言う。
「悪役人格で接することが多いのですが、周囲に気遣うところがあって……」
「合格」
ママ上から、早くも合格判定が出た。
「仲良くなれるといいわね」
「は、はい」
「その……最後に、複数人での性交に対して抵抗あるかしら?」
「えっ?」
「例えよ、例え。もしかしたら、そういうことが起こるかもしれないから」
「そ、それは当事者が良いのであれば、良いのではないでしょうか?」
「ママ上もナハトみたいなこと聞かないで! 全く、質問内容が本気でハーレムにいれるつもりじゃないか」
「えっ、入れないのか?」
船首でオールを持つヨハンナは違うのか? と首を傾げる。
「表面上は入れるけどね。そうすれば亡命できるし」
これからの俺の予定は「ギャハハハ、この女は気に入った。今日から我がハーレム入だ。もうリガルドに連れてかえるから、あばよタコ騎士」と言って、アクアレムを出るつもりである。
しかしセレーネは、暗い表情で首を横にふる。
「その件なのですが、亡命はとりやめようかと思っています」
「えっ? なんで? そのために俺を呼んだんだろ?」
「……釣書を出すまでは、そう思っていました。ですが」
「ですが?」
「父が、オクタスに殺されました」
「「「!」」」
「今は、心が追いついていなくて涙も流れません。恐らくわたくしもオクタスに殺されるでしょう。でも、それでもいいかとも思っています。わたくし一人生き残ったところで、一体何ができるのか」
「しっかりするんだセレーネ、自暴自棄になるな」
「そうだぜ、死ぬのはアレだ。よくないぜ?」
ソニアとジャガーが、必死に思いとどまらせるも、彼女の目は虚ろだ。
そうか、国と玉座を奪われただけじゃなく、肉親までも奪われてしまったのか。そのメンタルで見合いとか、もう情緒がグチャグチャだろう。
「ラウル王子には、このような場所まで助けに来ていただき、大変恐縮ですが……」
「そうか……負け犬に徹するのか」
俺が言うと、ソニアが肘で突いてくる。
「言い方というものがあるだろう」
「どんな言い方をしようが、あのタコ騎士に国を盗られ、父を殺された事実はかわらない。おまけにタコ騎士に殺されることまで受け入れている。これを完全敗北と言わず、なんと言う?」
「…………」
「先に言っておく、そなたが指導者を降りるのであれば、ほぼ確実にリガルドと戦争になる。その頃にはもう死んでるから、どうでもいいと思ってるかもしれないが、そなたが諦めればアクアレムの民はリガルドに滅ぼされるだろうな」
「……わたくしはもう、王女ではないのですよ。そもそもわたくしに王族の器なんてなかったのです」
俺は彼女の言葉に首を傾げる。
「そなたの言う器とは、一体誰が持っているのだ?」
「それは……ラウル王子や、ソニア王女のような……」
「何か勘違いしているようだが、余は15の歳まで引きこもりのイジめられっ子だったのだぞ」
「「「えっ!?」」」
驚いたジャガーとソニアの目もこちらに向く。
「父王には興味を持たれず島流し。兄上には無能豚とそしられ、住民からは悪王の子というだけで嫌がらせを受けた。余は痛みを恐れて屋敷で引きこもり続けた。そんな余に、王の器があると思うのか?」
「でも、今はそんなに堂々とされてますし、ダークラインではご活躍も」
「それは単にスイッチを入れただけだ。余は昔、盗賊に命を狙われた。そ奴らは無茶苦茶な正義を盾に、余の命を奪おうとした。そんな連中に殺されるわけにはいかない。奪われるくらいなら奪ってやると、戦いのスイッチを入れた。それからはスイッチのオンオフで、悪王子が出てきてくれるようになった」
「…………」
「セレーネ、厳しいことを言ってすまない。だが、何事も準備完了で始まることは人生において少ないのだ。突然王冠が転がり落ちてきて、それが自分の頭に乗ってしまうこともある。また後ろから突然王冠を盗む輩が出てくることもある」
「…………」
「そなたは心優しい。しかし民を、国を愛しているのなら、時にはその手を血に汚してでも戦うことが必要だ」
他者を労ることだけが優しさではない。誰かに優しくするには、誰かを守れるくらい強くないといけないのだ。
虚ろだった彼女の瞳に、色が戻ってくる。
「王子」
「うむ?」
「見合いを続けてもよろしいでしょうか? お腹がすいてきました」
「うむ、飯を食うと元気が出るからな」
「はい、これから体力がいりそうですから」
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瑞希 流星♟也中
372
🍎🥧アップルパイ
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コメント
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第45話、読み終えました。 前半の賑やかなデート風景から一転、セレーネの父王がオクタスに♡♡♡れたという重い告白。あの虚ろな目には胸が締め付けられました。そこからのラウルの「負け犬に徹するのか」という言葉は一見厳しいけれど、彼自身の過去(引きこもりのいじめられっ子だったこと)を明かして、「準備完了で始まることの方が少ない」と説く流れがすごく沁みました。 最後に「お腹がすきました」と言えるまで立ち直ったセレーネに、ほっとしました。