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瑞希 流星♟也中
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🍎🥧アップルパイ
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「セレーネよ、何が食いたい?」
「そうですね、名産の黒カニなんかは美味しいですよ」
よし、じゃあそれにしようと市場でゴンドラを降りる。
「さて、どこに行けば食えるのか。おい、そこの者よ。黒カニとはどこで売っている?」
通りすがりのおじさんに聞いてみると、おじさんは俺を見た瞬間、露骨に顔をしかめる。
「あんたさっきの……」
「リガルドの王子だ。今セレーネと見合いをしている最中だ」
「姫様、いけません。こんな奴の言うことを聞いちゃ! リガルドに攻められちまいますよ!」
「いえ、その……」
「姫様、どうかなさいました? だいぶ元気がないようですが」
「セレーネは腹が減っている。黒カニを食いたいと申したのだ」
「……まぁそれなら連れていってやるよ」
俺のことは嫌いだが王女の事は好きなおじさんは、黒カニを食べれる店まで案内してくれる。
店主のおばさんと知り合いなのか、おじさんは説明してオーダーまで入れてくれる。店主は生け簀からでかい黒カニを出して、手早くさばいてくれる。
俺達はテーブルで料理を待つと、黒カニの刺し身と、土鍋に入れられたカニ鍋が到着。
茹でられて殻が真っ赤に変化したカニが目を引き、出汁の良い香りが周辺に広がる。
「わんわんわんんわん!」
これにはナハト(犬)も尻尾を振って大喜び。
料理を並べ終えた店主の中年女性が、心配そうな目をセレーネに向けた。皺の刻まれた顔に優しさがにじみ、声には温かみがこもっている。
「姫様、大丈夫ですかい? 最近街に出ることもなくて心配していたんですよ」
「……すみません。いろいろあって」
店主は眉を寄せ、さらに言葉を重ねた。
「もしかして、このお見合いが嫌で体調が悪いんですか? 言えないなら、あたしが変わってあのデブ王子に言ってやりますよ」
とても本人が隣りにいるとは思えない言葉だ。
セレーネが慌てて手を振る。
「い、いえ違うんですよ。ラウル王子は本当にわたくしを慰めようとしているのです」
「かわいそうな姫様。そう言えって言われてるんですね……」
「いえ、本当に」
「そこのデブ王子、姫様に指一本でも触れたら許さないからね!」
啖呵を切る店主に俺はニヤリと笑い、わざとらしく声を張り上げた。
「それは無理な話だ。セレーネは既に余のハーレムに入ることが決まっている。指だけじゃなく、手も足も出すぞ」
「なんて奴なんだい!」
俺が「ぐへへへ」とわざと下品に笑うと、店主はイライラしながら店の中へ戻っていった。
「おいおい、それより早く食おうぜ」
ジャガーに促され、俺たちは黒カニを食す。
新鮮な黒カニは、殻を割ると白い身がブリンと飛び出し、海の甘みが口いっぱいに広がった。噛むたびにジューシーな旨味が溢れ、舌の上でとろけるような食感がたまらない。
「んむ、うまい! 食がうまい国は良い国だ!」
「全く、これすげぇな。つい無言になっちまうぜ」
ガツガツと食らう俺とジャガーに面食らうセレーネ。
「さすが男の子は勢いがありますね」
「単に品がないだけだ」
ソニアは半眼で俺達を見やりつつ、優雅にカニ鍋の出汁をすする。
「はぁ……なんと芳醇な味わいなのだ。まるで大海を食しているような気持ちになる。ただ単純に茹でているだけではなく、様々な魚介の出汁が出た鍋。アクアレムの長き歴史を感じる。これこそが料理への――」
うんぬんかんぬんと食レポを始めたソニアの目を盗み、ジャガーの手が彼女のカニの脚を一本ずつ盗んでいく。
「「むしゃむしゃむしゃ、ガツガツガツ」」
「全く、逃げるわけでもないのに。美しくない奴ら――」
ソニアは自分のカニの足が全部なくなっていることに気づく。
「私のカニの足が逃げ出した!」
「そいつは事件だな」
両手にカニ脚を持ったジャガーが他人事のように言う。
「貴様か! 私のカニを返せ!」
「オレはジャガーだぜ? 隙あらばその喉笛に食らいつく、野生の王子だ」
「やかましいわ泥棒め! 貴様のカニを寄越せ!」
品がないと言っていたのはなんだったのか。ドタバタとジャガーともみ合いになりながら、カニの取り合いをするソニア。トリスタンの人間が見たらひっくり返りそうな光景だ。
お返しにカニ味噌をとられて涙目なジャガー。
俺は最初のカニを食い終えて、おかわりを要求する。
「店主よ、次をくれ。この黒カニとやら、余は気に入ったぞ」
「はいどうぞ」
店主は俺の前にカニを持ってくるものの、明らかに小さい。
錯覚とか、個体差とかそういうレベルではなく、ズワイガニとサワガニくらい差がある。
「…………」
「はい、姫様はこちらをどうぞ」
セレーネの前には、巨大な黒カニが置かれる。
これはどう見ても差別である。
「店主よ、明らかに差があると思うが?」
「そうかい? そんな違わないと思うけどね?」
「これを同じサイズと思うなら、老眼始まってるぞ。いいからもっとデカいのを持ってまいれ」
そう言うと、今度は焼きサワガニを6匹持ってきた。
「違う、そうじゃない。余は通常サイズが食いたいのであって、このチビカニを要求しているわけじゃない」
「悪いね、老眼でカニのサイズがよくわかんないんだよ」
サワガニとズワイガニの区別もつかないなら、カニ屋やめてまえ。
「まぁええわ、このサイズなら殻もカリッとしてて食えるし」
パリパリと殻ごと食っていると、セレーネがおずおずともぎったカニ足を差し出してくる。
俺は殻だけ割って返してやる。
「いや、その、殻をむいてくれと思ったわけではないのでして」
「違うのか?」
「わたくしの分を半分どうかと」
「いや、そなたはたくさん食って体力をつけよ。気づいておらぬかもしれんが、げっそりしておるぞ。余は痩せ細った女は好かぬ」
そう言うと、セレーネは無理矢理にでもカニを胃の中に詰め込み始めた。
「おかわりをいただけますか? あとサザエとホタテのバター焼き、イカ焼きもお願いします」
「はい姫様、すぐお持ち致します」
「あと、ラウル王子にちゃんとしたカニをお願いします」
「しかし……」
「王子は我が国の大事なお客です……。とある事情で塞ぎ込んでいたわたくしを、外に連れ出してくださったのも王子です。少し口が荒々しいだけで、お優しい方ですよ」
「姫様がそうおっしゃるのでしたら……」
店主は仕方ないと、俺の方にもちゃんとしたカニを持ってきてくれた。
「ありがとうセレーネ」
「いえ、アクアレムの食材は良いものばかりですから。それを味わっていただかないと」
「この黒カニって、俺のムカム島近海にはいないんだけどなんでなんだろ」
「恐らく海水温度の違いですね。アクアレムの海水は温度が少し低めで、王子の領地は恐らく高めだと思います」
「へー、輸入とかできたらいいのにな。リガルドで何かやらかした時、父上に贈って機嫌をとりたい」
「やらかすこと前提なのですね」
クスクスと笑みを浮かべるセレーネ。
「うむ、よい顔をしている。食とは皆を幸せにするな」
彼女は自分が笑顔を浮かべていたことに、はっとする。
「王子の……おかげでございます」
赤面するセレーネ。
すると、犬形態でカニを食べてるナハトから思念が聞こえてくる。
『セレーネ、メスの顔になってるね』
そういうこと言うな。
コメント
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第46話、読了したよ〜!🦀✨ 今回のデート回、めっちゃほっこりした〜!まず「黒カニ食べたい」って言ったら連れてってくれるラウル、ちゃんとセレーネの気持ち聞いてて偉いじゃん🥺💕 でもって街の人たちからのラウルへの風当たり強すぎて草www「デブ王子」連呼、カニのサイズ差別、焼きサワガニ6匹押し付け…可哀想だけど笑った😂 だけどセレーネが「優しい方ですよ」ってフォロー入れたところ、じーんときたね…!彼女が少しずつ笑顔取り戻してるのが伝わってきて、読んでてこっちも嬉しくなったよ😭 「食とは皆を幸せにする」ってラウルの名言、ほんとそれな〜!ナハトの「メスの顔になってるね」で締めるのも最高でした🫶 次回も楽しみにしてるよ、ありんすさん!✨