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数週間後、紗季は初めて、自分の「書いたもの」を誰かに見せた。
それは、短いエッセイだった。
葵に宛てた、でも誰にでも届くような、心の中を言葉にした文章。
それを読んだ葵は、そっと微笑んだ。
「紗季って、本当は“伝える人”なんだね」
「……そんな風に思ったこと、なかったけど」
「私は、伝わったよ。だから、これからも書いて。いつか本当に“言葉で生きる人”になるかもしれないね」
その言葉が、紗季の胸の奥にあたたかく灯った。
未来はまだ見えない。けれど、それを誰かと一緒に探していけることが、こんなにも心強いなんて――
二人は少しずつ、自分の足で歩き始めていた。