テラーノベル
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「まずはフラン・ミメシス!」
「はい!」
綺麗な髪を手でサラリとなびかせながら、彼女はツカツカと神官の前まで歩いてゆく。
勝気な表情だが、その頬には一筋の汗が伝っていた。
人生を左右する結果だ、彼女でも緊張しているのだろう。
「では、フラン・ミメシスの魔術紋章を発現する! 【デラノア】!」
神官が呪文を唱えると、フランの手の甲が激しく発光する。
そして、フランが恐る恐る目を開くと、そこには稲妻の形の紋章が浮かび上がっていた。
それを見て、フランは歓喜の声を上げる。
「や、やった……! 『黄色の紋章』よ!」
そして、周囲から歓声が上がる。
『黄色の紋章』は実用的な強紋章だ。
雷属性。速度と貫通力に優れ、対人戦では無類の強さを誇る。
一方で、強力だが自然界の「雷」の法則に縛られている。
絶縁体の魔法障壁一枚で無効化できるし、俺からすれば「対策が容易すぎる」紋章でもあるんだが……、まぁ《《アレ》》よりかはマシか。
「次に、レニール・レオグラッド!」
「はい!」
レニールが自信満々に神官の元へと歩いてゆく。
そして、フランの時と同じように紋章発現の呪文が唱えられた。
「おぉ……!」
「これは……!」
周囲の関係者達が驚きの声を上げる。
レニールの手には『赤の紋章』が浮かび上がっていた……。
(あちゃー!)
俺は頭の中で同情する。
何を隠そう、『赤の紋章』は生前の俺の紋章だ。
火属性。一見すると火力が高くて強いが魔力を熱に変換する効率が極めて悪く、常に大量の魔力を無駄食い(放熱)している。
「火」という単一属性の、しかも「放出」に特化しすぎているため、防御魔法や精密な操作が一切できないという『拡張性の欠如』。
派手な一撃を撃つたびに魔力タンクを空にするため、長期戦ではただのデカいだけの的になるという『魔力の枯渇』。
(最悪の紋章だ。俺は創意工夫で何とかしてきたが、この紋章を変えたくて5年は人生を捧げたほどの『大ハズレ紋章』……)
レニールはその結果を見て全身をプルプルと震わせる。
そして、大きく声を上げた。
「やったぁ~! 最強の、『赤の紋章』だ!」
(……は?)
そして、周囲の関係者たちも大歓声を上げる。
「素晴らしい、最強クラスの火力を誇る赤の紋章を!」
「これは、次期レオグラッド家の当主にふさわしいですな!」
「やはり、成績が良いと現れる紋章も最高のモノが出るのか!」
俺は困惑を隠せない。
(何を言っているんだ? 赤の紋章は、穴の開いたバケツで水を運んでいるようなものだぞ!? 派手な音を立ててこぼれているのを、『威勢がいい』と勘違いしている馬鹿もいるが……も、もしかして今の魔法ってそんなに低いレベルなのか!?)
当主のドラルは大喜びしながらレニールの肩を抱く。
「よくやった! コルネリウス様と同じ赤の紋章とは! 我がレオグラッド家を継ぐのはお前しかおらん!」
「ありがとうございます、父上! ですが、継承権の順位的には僕の兄――レティスではないのですか?」
「あぁ、おったなそんな奴も……。だが、この儀式を終えたら居なくなるからな!」
俺がドン引きしている様子を見て、レニールは何を勘違いしているのか得意げに赤の紋章を見せびらかす。
「おいおいそんなに怖がるなよ! この最強の紋章でお前を黒焦げにしようなんて思ってないからさw」
「あっ、はい……」
かつての自分の紋章だったこともあって、自信満々なレニールが恥ずかしくて、そんな返事を返すのが精いっぱいだった。