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「おはようございます」
「おはよう、直美さん。早いお出かけだったのね」
「はい。まだ暑いので朝一で銀行に行って来ました」
自転車を戻しながら返事をする私に、風子さんの視線が刺さる。
「……とても疲れて見えるけど、大丈夫?」
「大丈夫です」
「やっと2学期が始まったけど……長い夏休みに疲れたって顔だわ。本当に大丈夫?」
大丈夫ではなかった。
抱きつぶされる行為ではなく、二人目を考えていた私と、私しかいらない夫。
そこがあまりにもはっきりした今
このままで夫と家族としてやっていけるのか
そればかり考えて、ずっと苦しい。
何かを感じたのか風子さんは
「少し時間ある?うちで一緒に、お茶しましょうか?」
と、誘ってくれた。
初めてお邪魔した風子さんの家の中は、玄関に花が飾られ、部屋も完璧に整えられている。
「モデルルームみたいに綺麗に保てるって、すごい…」
「そうでもないけど。どうぞ」
「ありがとうございます」
出されたアイスコーヒーと小さなクッキーを見て、なぜだか泣きたくなった。
こっちへ引っ越してから、家でもバイト先でも夫の目があることに疲れ果てて苦しかった。
今、夫の知らないこの瞬間、やっと緊張感から逃れられたのかな。
「とても疲れて見えるわ。コーヒーは大丈夫?」
「あ、嬉しいくらい好きです。いただきます」
「どうぞ」
一口アイスコーヒーを口にしてから、私は隣のキャビネットの上を指した。
「パパの千愛ちゃん愛が、本当に羨ましい。微笑ましい写真が、すごい数ですね」
「ちょっと行き過ぎだと思うけど?ほんの少しその熱を私にも向けて、優しくして欲しいわ」
「そういうものですか?うちなんて、参観で亜優の写真を撮ったのは私だけ…結構ご夫婦参加の方はパパさんが撮っていたみたいだけど…うちは全く…」
男の視線をきょろきょろとチェックしていたとは言えず、アイスコーヒーをまた一口飲んだ。
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