テラーノベル
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「……やってしまった」
スマホの画面を閉じ、僕はソファに深く体を沈めた。
画面の向こうでファンのみんなと楽しくお喋りしていたはずのインスタライブ。その数秒間、画面の端を横切った「彼女の影」が、今、ネットの海で猛烈な勢いで拡散されている。
「元貴さんの後ろ、誰かいたよね?」「女の子の影っぽくない?」
そんなコメントが流れた瞬間、心臓が跳ね上がった。
あの日、彼女を見つけた時から、僕は彼女を「僕だけのもの」として、誰の目にも触れない場所に隠しておきたかった。
事務所の管理、メンバーの協力、そして何より僕自身の徹底した「鉄壁のガード」。
それらすべてを、僕自身の不注意で台なしにしてしまった。
「……元貴さん? どうかしたんですか?」
キッチンから、心配そうにらんちゃんが顔を出す。
ニュースの通知で埋まった僕のスマホを見せると、彼女の顔からさっと血の気が引いた。
「私のせいで、元貴さんの活動に傷がつくかも……ごめんなさい……っ」
震える声で謝る彼女を、僕は反射的に引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
違うんだ、らんちゃん。僕が怖がっているのは、自分の評価が下がることじゃない。
「大森元貴の熱愛相手」という好奇の目に、君を晒してしまうことが、何よりも耐えがたいんだ。
これまで大切に、大切に、外界の毒から守り抜いてきた僕の宝物が、誰かの指先一つで傷つけられるかもしれない。その恐怖が、独占欲を黒く塗りつぶしていく。
すぐさまマネージャーに連絡を入れ、事務所の対応を仰ぐ。
「公表するか、否定するか、スルーするか」
話し合いの最中も、僕は隣で俯くらんちゃんの小さな手を離さなかった。
「……大丈夫だよ。何があっても、僕が君を守るから」
耳元で囁く言葉は、彼女を安心させるためのもの。
けれど、その実、僕自身に言い聞かせている誓いでもあった。
世間がどれだけ騒ごうと、彼女が僕の隣にいるという事実は変わらないし、変えさせない。
むしろ、このまま「僕のものだ」と世界中に宣言してしまいたい衝動を、僕は必死で飲み込んだ。
僕の愛は、こんなトラブル一つで揺らぐほど軽くはないんだ。
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