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ボクの一生

6 - 『ぼくの輪郭』

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2025年04月23日

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自由だったぼくが、突然不自由になった。ただそれだけで、心も身体も、すっかり別の人間になってしまったような気がした。

思うように笑えない。言葉も、感情も、どこか遠くに置いてきてしまった。


昔のぼくは、どんな性格だったっけ?

人とどうやって接していた?

友達にはどんな顔で「ありがとう」と言っていた?


今のぼくは、それすらもうまくできない。

優しさって、どうやって表すんだろう。

寂しいとき、どう伝えればいいのかもわからなくなった。


誰かが差し伸べてくれた手を、どう握ればいいのか。

その手を引っ張ってしまわないか、離してしまわないか、怖くてたまらない。


それでも、ぼくは歩いていた。希望なんて見えないまま、ただ一歩一歩。

リハビリも、学校も、周囲との関わりも、全部が“テスト”のように感じた。

正解がどこにあるのか分からない。

でも間違いを恐れていては、何も進まないと気づき始めた。


ある日、母が小さなメモをくれた。

ぼくがまだ発症する前に書いていた「夢のノート」からの切り抜きだった。


《大きくなったら、人を笑わせる仕事がしたい》


それを見たとき、なぜか涙が出た。

そうだ、ぼくは誰かの笑顔が好きだった。

手足が自由だったころのぼくは、そんな願いを持っていた。


もしかすると、その気持ちは今も消えていないのかもしれない。

やり方は変わったけれど、“ぼくの中身”は、ちゃんとここにいる。


次の日から、ぼくは周りの人の「笑顔」に注目してみるようになった。

先生の笑いジワ、友達のくしゃっとした顔、母の静かな微笑み。

そこに気づけたとき、心の中がほんのりあたたかくなった。


愛情表現が分からなくても、

うまく話せなくても、

手がうまく握れなくても、

「見つけたい」と思う気持ちが、もう愛情なのかもしれない。


ぼくは、少しずつ輪郭を取り戻していく。

前とは違うけれど、新しい「ぼく」という形で。


たとえ希望がすぐに見えなくても、

一歩踏み出すたびに、景色は変わる。


歩いていこう。

まだ不器用だけど、今のぼくなりに。

ぼくの未来は、きっと“これから”つくられていく。


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