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自由だったぼくが、突然不自由になった。ただそれだけで、心も身体も、すっかり別の人間になってしまったような気がした。
思うように笑えない。言葉も、感情も、どこか遠くに置いてきてしまった。
昔のぼくは、どんな性格だったっけ?
人とどうやって接していた?
友達にはどんな顔で「ありがとう」と言っていた?
今のぼくは、それすらもうまくできない。
優しさって、どうやって表すんだろう。
寂しいとき、どう伝えればいいのかもわからなくなった。
誰かが差し伸べてくれた手を、どう握ればいいのか。
その手を引っ張ってしまわないか、離してしまわないか、怖くてたまらない。
それでも、ぼくは歩いていた。希望なんて見えないまま、ただ一歩一歩。
リハビリも、学校も、周囲との関わりも、全部が“テスト”のように感じた。
正解がどこにあるのか分からない。
でも間違いを恐れていては、何も進まないと気づき始めた。
ある日、母が小さなメモをくれた。
ぼくがまだ発症する前に書いていた「夢のノート」からの切り抜きだった。
《大きくなったら、人を笑わせる仕事がしたい》
それを見たとき、なぜか涙が出た。
そうだ、ぼくは誰かの笑顔が好きだった。
手足が自由だったころのぼくは、そんな願いを持っていた。
もしかすると、その気持ちは今も消えていないのかもしれない。
やり方は変わったけれど、“ぼくの中身”は、ちゃんとここにいる。
次の日から、ぼくは周りの人の「笑顔」に注目してみるようになった。
先生の笑いジワ、友達のくしゃっとした顔、母の静かな微笑み。
そこに気づけたとき、心の中がほんのりあたたかくなった。
愛情表現が分からなくても、
うまく話せなくても、
手がうまく握れなくても、
「見つけたい」と思う気持ちが、もう愛情なのかもしれない。
ぼくは、少しずつ輪郭を取り戻していく。
前とは違うけれど、新しい「ぼく」という形で。
たとえ希望がすぐに見えなくても、
一歩踏み出すたびに、景色は変わる。
歩いていこう。
まだ不器用だけど、今のぼくなりに。
ぼくの未来は、きっと“これから”つくられていく。