挨拶回りで二手に別れたミンドリー、さぶ郎、ぺいん。
ミンドリーとさぶ郎はまずは同業者への挨拶で、市街地東にあるピザ屋へとやってきた。
「こんにちは」
「はーい。いらっしゃいませぇ」
店内に入ると奥の方から応えがあり、女性が現れた。
「あらぁ。見かけない方ですね?初めましてでしょうか?どのようなご用件で?」
「昨日、家族で移住してきまして。まずはおすすめの食べ物と飲み物いただけます?」
「はーい。そちらのお嬢さんも同じで大丈夫かしら?」
「大丈夫でーす」
「ではこちらお渡しして、請求切りますね」
「請求はまとめて俺にお願いします」
「承知しました!昨日、来られたって事ですけど、街で何をやるか決まっています?」
「今日の夜から中華料理店を始めるんですよ。なので同業の方への挨拶回りも兼ねて伺いました」
「わぁ、この街、飲食店少ないから助かりますー」
「あとは家族で街回ったり遊んだりですかね。家族の時間優先なので常時お店は開かないかもしれませんが」
「家族大事!いいですね!じゃぁ海辺の遊園地知ってます?あの辺り、遊園地以外にボートに乗れたり、釣りできたり、卓球場もあっておすすめですよ!」
「さぶ郎、卓球やりたいっ!」
「元気いいですね!この街、夕方から起きる人が多くて、夜はお客さんも増えたり、いろいろ街が騒がしくなるから、遊ぶなら昼から夕方がおすすめですよ」
ピザ屋からほど近いメカニックは無人だったため、二人は街中のメカニックへとやってきた。
「こんにちは。全修理とニトロお願い出来ます?」
店内には男性と着ぐるみを着た女性のメカニックがいた。
「ギルさん、私対応しますね?」
「よろしくー。ところでお兄さん、今朝リサセンにいました?」
「あ、はい。そんなに長時間では無いですけど」
ミンドリーはまさかリサセンのことで話しかけられるとは思っていなかったが、早朝から自分以外に何人かいたことを思い出した。
「ギルさん」と呼ばれた男性はそのうちの一人なのかもしれない。
「お兄さん、これはお願いなんだけど、素材売ってくれません?」
「売るのはかまいませんが、素材足りないんですか?」
「そー。こっちの内情になっちゃうんだけどね。うちメカニックたくさんいるんだけど、みんな夕方とか夜に起きてくるのよ。で、カスタムとか修理が楽しいらしくて、素材集めあまりしてくれないんだよねぇ。僕ともう一人で賄っているんだけどちょっと厳しくて。だからと言って店放置してリサセンに籠るわけにもいかないし」
「自分も店を開ける予定で、ファーマーでは無いんですけど、それでもよければ買い取ってもらえるとありがたいです」
「いやぁ、少しでも助かるよ。もちろん支払いはするから。じゃあ連絡先交換しましょ?」
二人はスマホを取り出して互いの連絡先を交換した。
「ミンドリーさんね?お店やるってどんなお店?」
「中華料理店です。場所はここから南に下がった辺りです。連絡もらえれば出前もやりますよ」
ミンドリーはその後も作業が終わるまで、メカニックのことや街の様子を聞いていた。
一方さぶ郎は修理を見ながら対応している女性メカニックに話しかけていた。
「…車持ってきたらカスタムとかしてくれる?」
「対応しますよ。カラーリングも凝った配色ができますからオリジナリティ出せますよ」
「やったー。お名前教えてもらってもいい?私、さぶ郎っていうの」
「れん、です。みんなには『れん君』って呼ばれています」
「さぶ郎ね、家族で中華料理屋さんやるの。良かったらきてね」
「………ギャングではない?」
突然、黒側である事を疑われ、さぶ郎は面食らった。
「えぇっ?違うよぉ?どうして?」
「この街、公務員は忙しくて自家用車乗らないし、白市民も色やステッカー以外のカスタムまでする人は少なくて。車のカスタムとアップグレードをする余裕があるのって、犯罪でお金持っている半グレかギャングだけなんだよね」
「さぶ郎たちは移住の時に車も持ってきたからあるだけで、悪いことしてないよ?」
「うん。そこは穿った見方をしてしまってごめんね?お店、今度暇な時行ってみますね」
「忙しかったらねぇ、出前もやっているから。ご飯ちゃんと食べてね」
「ありがとうございます」
「全修理とニトロの補充終わりました。請求はどちらに?」
「俺でお願いします」
「送りました。今後もご贔屓にお願いします。朝から晩まで誰かはいるので」
「了解です。それではまた」
挨拶周りが終わり、二人は帰路についた。
「遊園地と卓球、行きたいなぁ」
「明日みんなで行ってみる?」
「やったー!」
「………この街も前と同じく騒がしいのかな?」
「まだ聞いただけで分からないけどね。ただ、前とは職も違うし、任せるというか積極的に関わらなくてもいいんじゃない?ここでは義務では無いから」
「………うーん」
「心配?」
「悲しい思いをする人がいないかなぁって」
「どうだろうね。もしそういう人を見つけたら、店で話しを聞いてあげればいいんじゃない?」
「うん。そうしてみる」
挨拶周りでは新しい出会いや楽しそうな事以外に少し不穏な話も聞けた二人だった。
さて、救急隊とカフェに向かったぺいんにはどんな出会いが待っているのだろうか。
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