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#エッチなの書けないから
94
#地雷系
星乃宮学園の文化祭が終わってから、数日が経った。
校内はいつもの静けさを取り戻していた。
廊下に貼られていた飾りは少しずつ片付けられ、教室に残っていた段ボールもなくなっている。
でも。
私の中には、まだ少しだけ変化が残っていた。
「……天音」
「んー?」
隣を歩く天音を見る。
いつもの笑顔。
いつもの優しい桜色。
それを見るだけで、胸の奥が温かくなる。
……でも。
最近、少しだけ困っていることがある。
「……」
私はそっと天音の袖を掴む。
「紬?」
「……」
「どうしたの?」
答えられない。
自分でも分かっている。
最近の私は。
少し、おかしい。
⸻
「紬、今日も一緒にお昼食べよ!」
「……うん」
「手、繋いでもいい?」
「……うん」
「放課後、一緒に帰ろ?」
「……うん」
全部。
天音と一緒にいたい。
前からそうだった。
でも。
今はもっと強い。
少しでも天音が離れると。
胸の奥がざわざわする。
「……天音」
「なぁに?♡」
「……」
言えない。
「……なんでもない」
そう言うと、天音は少しだけ悲しそうな顔をした。
「紬」
「?」
「無理してない?」
「……」
その言葉に、胸が苦しくなる。
天音には、隠せない。
⸻
放課後。
寮の部屋。
二人きりになった瞬間。
私は天音の隣に座った。
いつもなら少し距離を空ける。
でも今日は。
気づけば、天音の肩に寄りかかっていた。
「……紬?」
「……」
「甘えんぼさんになってる?♡」
「……っ」
顔が熱くなる。
「……ごめんね」
離れようとすると。
天音が優しく手を握る。
「謝らなくていいよ♡」
「……」
「私は嬉しいから」
でも。
私は首を横に振る。
「……違う」
「?」
「私、変なの」
「天音がいないと落ち着かない」
「ずっと触れていたくなる」
「……こんなの」
「天音に迷惑じゃない……?」
声が震える。
すると。
天音はすぐに私を抱きしめた。
「迷惑じゃないよ!」
「……」
「絶対!」
⸻
翌日。
私は先生に呼ばれた。
星乃宮学園には、特別な力を持つ生徒をサポートするための先生がいる。
「紬さん」
「はい」
「少し、話しておきたいことがあります」
先生は優しく言った。
「あなたの能力についてです」
「……」
少し緊張する。
「人の感情を見る力」
「これは、ただ見るだけの能力ではありません」
「相手の感情を深く感じ取るほど、自分自身の感情にも影響が出ます」
「……」
「特に」
先生は少し間を置いた。
「あなたが心から大切に思っている相手に対して」
「感情が強く増幅されることがあります」
「……大切な相手」
頭に浮かぶ。
天音。
「それって……」
「はい」
先生は頷いた。
「天音さんへの気持ちです」
胸が締め付けられる。
「……じゃあ」
「私が天音を好きなのは」
「この能力のせい……?」
⸻
その日の帰り道。
私は一人で歩いていた。
いつもなら隣にいる天音。
でも。
怖かった。
もし。
私の好きという気持ちが、本当じゃなかったら。
もし。
能力が作った感情だったら。
天音を傷つけてしまう。
「……紬」
聞き慣れた声。
振り向く。
天音がいた。
「どうして一人で帰ってるの?」
「……」
「私、寂しかったよ〜…」
その言葉を聞いた瞬間。
天音の色が見える。
桜色。
でも。
少しだけ青が混ざっていた。
寂しい色。
「……ごめんね」
「紬」
「……私」
言葉が震える。
「天音のこと好きなの」
「でも」
「それが本当なのか分からなくなったの」
沈黙。
でも。
天音は怒らなかった。
「……そっか」
「怖かったんだね」
「……」
「紬」
天音は私の手を握る。
「私ね」
「紬が私を見る時の顔、知ってるよ!」
「……」
「すごく優しい顔してる」
「能力だからじゃない」
「紬自身が、私を大切に思ってくれてる顔だよ」
涙が出そうになる。
「でも……」
「甘えたくなるのも?」
「うん♡」
天音は笑う。
「嬉しいよ」
「紬が私に甘えてくれるってことは」
「私を信じてくれてるってことだから」
⸻
寮の部屋。
夜。
私は天音の隣に座っていた。
「……天音」
「なぁに?」
「ぎゅってしてほしい」
「もちろん♡」
腕の中に包まれる。
安心する。
「……天音」
「?」
「私」
「もっと、好きって言っていい?」
天音は優しく笑う。
「いっぱい言って!♡」
私は少しだけ勇気を出す。
「……好き」
「天音が好き」
「大好き」
天音の桜色が、優しく輝く。
「……紬」
「?」
「今の言葉」
「私の宝物♡」
胸がいっぱいになる。
そして。
私は気づいた。
この気持ちは。
能力が作ったものじゃない。
私が選んだもの。
天音を大切にしたいと思った。
私自身の気持ち。
「……天音」
「うん♡」
「……ち、ちゅーしてもいい?」
天音が少し驚く。
でも。
すぐに優しく笑った。
「もちろん♡」
そっと近づく。
触れるだけの、小さなキス。
でも。
私にとっては、大きな一歩だった。
離れたあと。
顔が熱くて、目を合わせられない。
「……紬」
「?」
「今の紬」
「すごくかわいかった♡」
「……」
「……もう一回って言ったら?」
「……だめ」
「ふふ♡」
笑い声が部屋に響く。
私は思う。
人の気持ちが見えることは。
ずっと怖いものだと思っていた。
でも。
この力があったから。
私は天音の優しさを知った。
そして。
自分の中にある、本当の気持ちも知ることができた。
世界には、たくさんの色がある。
だけど。
私が一番大切にしたい色は――
やっぱり。
天音だけの色。
コメント
1件
第3話、めっちゃ胸にきました…!「感情を見る能力が自分の気持ちを偽ってるんじゃないか」って悩む紬ちゃんの苦しさ、すごく伝わってきた。でも天音ちゃんが「紬の見てる顔はすごく優しいよ」って言ってくれたところで、私もほっとしたよ。最後のちゅーシーン、ちょっと照れるけどすごく可愛かった…!2人の距離がちゃんと近づいてて、いい回だった🥀🤍✨