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kaede🍁
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#mmab
七瀬⛄️
1,551
それから。
目黒は赤い縁を。
前より気にするようになった。
朝。
手を繋いで。
昼。
阿部が自分を見て笑って。
夜。
隣に座って。
赤い光が見えるたび。
嬉しかった。
ある日。
阿部は深澤と照に。
少し遠い森へ修行に連れていかれることになった。
「めめは留守番ね」
目黒は明らかに嫌そう。
「俺も行く」
「修行にならないから」
「邪魔しない」
「ふっかと喧嘩するでしょ」
「しない」
深澤がすぐ言う。
「絶対する」
「ふっかさん」
「昨日したじゃん」
阿部が笑う。
「めめ」
「今日は待ってて」
目黒が阿部を見る。
「帰ってくる?」
「帰ってくるよ」
「絶対?」
「絶対」
阿部が手を取る。
赤。
細い光。
「ほら」
「今日もある」
目黒の表情が柔らかくなる。
「うん」
「じゃあ行ってくるね」
阿部の姿が見えなくなるまで。
目黒はずっと見ていた。
「めめ」
後ろから翔太。
「寂しい?」
「……少し」
翔太が笑う。
「素直になったね」
縁側には涼太もいる。
三人で座る。
それでも。
目黒は何度も。
阿部が消えた方を見る。
「ねえ、めめ」
「何?」
「もしさ」
「あべちゃんが神様にならなかったら」
目黒の顔が止まる。
「ずっと人間のままだったら」
紺色の神力が濃くなる。
「人間って」
「いつか死ぬでしょ」
「めめよりずっと早く」
神力が一気に沈んだ。
「もしそうなったら」
「どうする?」
目黒は黙る。
阿部がいない。
部屋にも。
庭にも。
名前を呼んでも返事がない。
赤い光もない。
「……嫌」
「何が?」
「いなくなるの」
俯く。
「俺より先にいなくなるの」
「嫌」
少し間。
「ずっと」
「あべちゃんにそばにいてほしい」
翔太が静かに言う。
「それ前から言ってたじゃん」
目黒が顔を上げる。
「でも前は」
「気に入ったからそばに置きたい」
「だったでしょ」
最初。
山で見つけた阿部。
白い衣。
弱くて。
かわいくて。
俺のもの。
飼う。
そう言った。
「今は?」
目黒は考える。
阿部が言うことを全部聞くより。
自分で選んで。
笑って。
自分から来てくれる方が嬉しい。
「……違う」
「何が?」
「俺」
「あべちゃんを置いておきたいんじゃない」
ゆっくり言葉を探す。
「あべちゃんが」
「俺といたいって思って」
「それでいてほしい」
翔太が少し笑う。
「それ」
「恋じゃない?」
「恋」
涼太も穏やかに言う。
「その人がいなくなるのが嫌で」
「自分を選んでほしくて」
「その人の幸せまで考える」
目黒は黙る。
阿部。
春。
笑顔。
繋いだ手。
赤い縁。
「……俺」
少し驚いたように言う。
「あべちゃんに恋してる?」
翔太が笑う。
「多分ね」
涼太も頷く。
「もうそうなんじゃないかな」
紺色が少しずつ柔らかくなる。
恋。
やっと。
名前がついた気がした。
夕方。
阿部たちが森から帰ってくる。
目黒はすぐ立ち上がる。
「あべちゃん」
「ただいま」
それだけで。
胸が温かくなる。
これも。
恋。
「めめ?」
「何?」
「どうしたの?」
少し考えて。
「帰ってきて」
「嬉しい」
阿部が柔らかく笑う。
「俺も」
「めめの顔見たら安心した」
赤。
二人の薬指を。
また細い光が繋ぐ。
目黒は思う。
これを。
ずっと見たい。
その夜。
二人は縁側にいた。
春。
桜。
風が吹くたび。
花びらが舞う。
今日は珍しく。
目黒が静かだった。
「めめ」
「何?」
「今日、変じゃない?」
「変?」
「静か」
「考えてる」
「何を?」
少し沈黙。
「恋」
阿部が固まる。
「……恋?」
「うん」
「翔太くんに教えてもらった」
「何を?」
目黒は普通に言う。
「俺」
「あべちゃんに恋してるかもしれないって」
阿部が完全に止まった。
「……」
「あべちゃん?」
顔が熱い。
「翔太、何言ってるの……」
「違う?」
本気で聞かれる。
違うとは言えない。
自分だって。
もう目黒が好きだと分かっている。
「俺に聞かないで」
「なんで?」
「自分で考えて」
目黒は素直に頷く。
「考えた」
「それで?」
「やっぱり恋だと思う」
また胸が鳴る。
「だって」
「あべちゃんがいなくなるの」
「想像したらすごく嫌だった」
「神様にならなかったら」
「俺より先にいなくなる」
阿部は目を伏せる。
目黒が少し不安そうに聞く。
「あべちゃん」
「どうして神様になりたいの?」
前にも聞かれた。
村も。
家もなくなったから。
どうせ神様になるなら早く。
最初はそう思っていた。
でも。
今は違う。
「……最初は」
「戻るところもなくなったから」
「神様になってもいいかなって」
「うん」
「でも」
阿部が目黒を見る。
静かな紺色。
「最近はちょっと違う」
「何が?」
「めめって」
「ずっと生きるんでしょ?」
「多分」
「多分なんだ」
「死んだことないから」
阿部が吹き出す。
「そりゃそうだね」
少し緊張が解ける。
「俺が人間のままだったら」
「いつか」
「めめより先にいなくなる」
紺色が沈む。
阿部はそれを見て。
ゆっくり言う。
「それ」
「俺もちょっと嫌かも」
目黒が目を見開く。
「あべちゃんも?」
「うん」
恥ずかしくて。
桜を見る。
「神様になったら」
「めめと同じくらい」
「長く生きられるんでしょ?」
「うん」
「だったら」
声が小さくなる。
「めめと」
「同じ時間を生きられるなら」
「神様になるのも」
「いいなって」
静か。
桜だけが揺れる。
紺色が。
今まで見たことがないほど柔らかく広がった。
「めめ?」
「あべちゃん」
「何?」
「それ」
「嬉しい」
阿部の胸も温かくなる。
「そっか」
「うん」
目黒がゆっくり手を出す。
でも。
触れる前に止まった。
「手」
「繋いでいい?」
阿部が少し驚く。
前なら。
勝手に取っていた。
今は。
聞いてくれる。
それが嬉しい。
「うん」
阿部から手を重ねる。
赤。
いつもより。
ずっと濃い。
二人の薬指から。
はっきり伸びている。
「あ」
「今日、すごい」
「うん」
目黒が言う。
「あべちゃんが」
「自分で俺のそばにいたいって」
「思ってくれるのが」
「一番嬉しい」
阿部は息を止める。
最初。
俺のもの。
飼う。
そう言った神様が。
今は。
自分で選んでほしいと言っている。
胸の奥で。
何かがほどけた。
「……俺」
「今は」
目黒が待つ。
阿部は赤い光を見ながら笑う。
「自分でここにいるよ」
紺色が一気に明るくなる。
赤い縁も。
強く光った。
次の日。
夕方。
阿部は庭で修行を終えたところだった。
「今日はここまで」
照が言う。
「うん」
前よりずっと疲れなくなった。
一輪だけ花を咲かせる。
一枚だけ葉を動かす。
もうほとんど失敗しない。
「あべちゃん」
深澤が満足そうに言う。
「本当に上手くなったね」
「ふっかが教えるの上手いから」
「でしょ?」
照が横から言う。
「本人も飲み込み早いからだよ」
阿部が笑う。
「ありがとう」
その時。
「あべちゃん」
振り向く。
目黒。
「あれ」
「今日見てなかったね」
「うん」
「珍しい」
目黒が目の前まで来る。
「終わった?」
「終わったよ」
手を差し出す。
「来て」
「どこに?」
「見せたいものある」
「何?」
「言ったら見せる意味なくなる」
阿部が笑う。
「そういうの覚えたんだ」
「翔太くんに教えてもらった」
「びっくりさせたい時は先に言わない」
「それ本人に言ったら半分意味なくない?」
目黒は少し考える。
「……そうかも」
阿部はまた笑った。
差し出された手へ重ねる。
赤。
今日も細い縁。
コメント
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うわあああ〜!!😭💕 第14話、めっちゃ良かった!!✨ 目黒が「あべちゃんに恋してる」って自覚するシーン、胸がぎゅってなったよ…!最初は「俺のもの」「飼う」って言ってたのに、今は「あべちゃんが自分でそばにいたいって思ってくれるのが一番嬉しい」って…成長が尊すぎる😭💖 夜の縁側で二人がお互いに「同じ時間を生きたい」って思うとこ、赤い縁が濃くなる描写がもう美しすぎて何回も読み返した!次の話も楽しみにしてますっ!!🌸