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#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
「だ、だって初めてだし…っ!そ、それより……今から、えっち、するの……?」
上ずった声で聞く私に、叶人くんは困ったように微笑むと
そっと私の手を優しく握り締めた。
「……さすがに、今すぐえっちはさっちゃんにはハードルが高いと思うから。まずは手を繋ぐとか、ハグをするところから始めてみよっか」
「…!わ、わかった。それくらいなら……!」
緊張で身体を強張らせながらも、私は彼の手を強く握り返す。
指先から伝わる彼の熱い体温がやけに生々しく感じられて
胸の奥の鼓動が早鐘のように打ち始めた。
「さっちゃん、そんなに肩に力を入れないで」
優しく諭すように言いながら、叶人くんがゆっくりと距離を詰めてくる。
「だ、だって……今更だけど、男の人とこんなに近づくの、本当に初めてだから……っ」
「大丈夫。俺に全部預けてリラックスして?」
叶人くんの長い腕が私の背中に回され、大きな手のひらが腰へと滑り落ちてくる。
ゆっくりと引き寄せられると、彼の厚くて逞しい胸板が、私の胸元にぴたりと密着した。
「んっ……」
不思議な感覚だった。
異性とこれほど肌を密着させること自体、人生で初めての経験だ。
ただ一つだけ確かに分かるのは、これが夢の中ではない現実の出来事であるということ。
そして、私にとってかけがえのない大切な幼馴染である叶人くんと
ハグをしているという事実だけで、頭がどうにかなりそうなほど幸せなのだ。
「これくらいで、そんなにドキドキしてるの?」
叶人くんの声が、驚くほど耳元に近い場所で響いた。
低く甘いトーンにゾクリとするような痺れを感じながらも
同時に、深い安心感すら覚えてしまう自分に困惑する。
「っ、叶人くんはモテるし、こういうの慣れてるかもしれないけど…っ、私にとっては、全部が初めての体験なの……っ!」
「……さっちゃん。俺の心臓の音を聞いても、俺が慣れてるって思える?」
「心臓の音……?」
私は恐る恐る、彼の胸元に耳を寄せてみた。
トクトクトク、と衣服越しに響いてくる鼓動の音は、驚くほど速く力強かった。
まるで、彼もこの状況に破裂しそうなほど緊張しているかのように。
「えっ……叶人くんも、ドキドキしてるっ?」
私の言葉に、叶人くんは少し照れくさそうに、耳を赤くして笑った。
「そりゃあね。俺だって男だし……さっちゃんみたいな可愛い女の子を抱きしめてて、平常心でいられるほど、かっこいい男じゃないよ」
その一言に、胸の奥がさらに熱くなる。
彼の素直な気持ちが、私の中にゆっくりと、甘く染み渡っていくようだった。
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