「妹みたいな存在なんだよ、アイツ。」
屋上の影で聞いてしまったリュウジの声。私はずっと好きだったのに、そう伝えてたつもりがまさか妹扱いとは。ショックで固まって動けない。
「へえ、緑川いつもあんなに好き好き言われてるのに。てっきり付き合ってるのかと」
「そんなんじゃないよヒロト、きっと向こうも家族みたいに思ってくれてると思うんだ。」
そんな訳ない、そんなつもりじゃない。伝えたいけど、伝えたらもうこの関係は終わってしまいそうで言えない。でも…もう家族みたいって言われながらずっと一緒にいられれば、それでいいのかもしれない。
「ふーん、じゃあ俺が貰おうかな。」
「…は?」
ヒロトは突拍子もなく呟いた。
「家族なんだろ、俺は異性として彼女を見てる。あーあ、これで緑川に遠慮しなくてよくなって助かったよ。」
のんびり話す彼の言葉に、動揺を隠せなくなる。彼がそんなこと思ってたなんて、知らなかった。
「…おい、ふざけるなよ。ヒロトお前、アイツに」「何したっていいだろ、彼女を異性として見てない緑川には関係ない。」
癇癪を起こしたように話すリュウジに、被せるように淡々と話すヒロト。 そうだ、リュウジには関係ない、妹と思って、 守って欲しいなんて思ったことないし。
夕暮れ時、もう陽が沈む。暗くなる前にそっと帰ろうかな。
「………アイツが好きなんだ。誰にも触らせたく無い。でもアイツに、こんな気持ち知られたら嫌われる。俺だって我慢してんだよ。」
小さな、震えたか細い声で聞こえたリュウジの言葉。顔がニヤける、身体中が震える。少しだけ姿を見て帰ろうと、顔を壁から少し出す。背中を向けて俯くリュウジ。
「ふぅん、だからって俺も易々と譲ったりなんかしないけどね。敵同士、よろしくね。」
「望むところだ。」
握手のつもりだろうか、手を差し出しているヒロト。
瞬間ヒロトと目が合い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
バレたと思い、慌てて壁の裏にもう一度隠れる。2人が去ってから出ればよかった。
「初めから俺は分かっていたよ。覚悟、してね」
そう話した彼は、リュウジに言ったのか、はたまた私に言ったのかはわからない。 しばらくはここから動けなさそうだ。
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