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「……どうする?」
また聞かれる。
僕は少しだけ黙って、
それから——
「返さない」
はっきり言った。
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「は!?」
「正気かよ!」
周りがざわつく。
でも僕は気にしない。
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「この子が嫌がってる」
それだけで十分だった。
⸻
「それに」
僕は小さく笑う。
「もう僕のこと好きだし」
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「……はぁ」
呆れた声が聞こえる。
でもそのとき——
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「……見られてるよ」
誰かが低く言った。
「……は?」
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空気が一気に変わる。
ピリ、と肌が粟立つ。
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「……いる」
視線を感じる。
窓の外。
暗闇の中。
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「……へぇ」
僕はゆっくり立ち上がった。
赤ちゃんオオカミを抱いたまま。
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カーテンを少し開ける。
すると——
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そこにいた。
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細身の男。
風に揺れるコート。
そして——
楽しそうに笑う目。