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文豪と胡蝶の夢
俺の名前は、佐川 充。
官能小説を書いている。これでも一応小説家なのだが、日頃から文学の方の小説を書きたいと思いつつ生活の為に官能小説を書きまくっている。
それでも、書いてくれと言われるだけでも、この世界では恵まれている方なのだ。
なんでもZEROからの作品(絵画、作詞、作曲、小説、俳句、陶芸、華道、書道、などエトセトラ )作品作りは努力と忍耐とセンスだと思っている。
たかが官能小説だと思っている下々の者に言いたい、書いているこっち側の奴の中でも書く事で精神を病んでしまう者もいるということを知って貰いたい。
そこの所、俺の精神は鋼なみの心を持ち合わせている。
明日までに書きあげなければいけない作品
(嫌、作品とは言えないなあ笑)が1つあるが、この季節と気候が俺の眠りのサイクルを狂わす。(眠りの時間がほんとに足りないんだ。)
隣に寝ている彼女の顔を見て思う。本物の文學作品が書きたい。日々の生活の維持の為のもので無く。
彼女がたまに、「充の文學作品を読んでみたいなあ。」の言葉に感化されているのか、わからないが今のままではいけない気がする。
そんな事を思いながら眠気に勝てず微睡む。
音がする、徐々に賑やかな祭囃子が聞こえ初め
自分は、何故か祭りをしている場所にいる。沢山の浴衣を着た人達が色々な屋台に群がっており、綿あめや、かき氷を持ってあるいているのを只々眺めていた。
すると「ジリリリン!ジリリリン!」とけたたましく鳴るベルの音の先に賑やかな電飾に彩られた見世物小屋に吸い寄せられた。
俺は、その見世物小屋を無性に見物したい気分になっていた。山高帽子を被って丸眼鏡の男がマイクを使って呼び込みをしている。横の入り口から他の人達と入っていった。中には編みかごに入った二股の頭を持った白蛇や蝙蝠、白い蜥蜴、白いドブネズミ、白い鴉が別々に入れられいた。
空いている席に座ると舞台の上のカーテンの裏から、あの山高帽子を被った男がでてきて、アナウスする。「へびを飲み込む蛇女〜どうぞ〜!」
幕が開かれると女の首に太い蛇が巻かれている。
それを、おもむろに掴んで口の中へ手繰り寄せながら入れていく。
「うおー!なんか凄いぞぉ!」と思っていると先程から生臭い臭いが漂って来て気持ち悪くなって、
ガクっとそこへ跪いて(クルクルと頭が回る)目を瞑って、その場を凌ぎたかった。
暫くして、「よし!」目が回らなくなったので、
立って目をそっと開けると、そこは豪華な洋館の前にいた。驚いて何気に胸に手を置いたら違和感があり、自分の服装が変わっているのだ。高級であろう黒い背広に中のシャツはサテンで前ボタン2番目まで空いて、下は黒い色でビロードの柔らかい生地のスラックスを履いていた。1度も正装なんてした事がない俺でも、この服装が最高級品だとわかる。
これなら、この建物内に入れそうだと思って扉を開けてみると、ハウスメイドの装いをした女が
「どうず、こちらへ。」と案内されるままに着いていく、朱色の絨毯が敷き詰められ窓には、青い色のステンドグラスがまぶしい。踏み込むたびに絨毯の厚みが感じられていた。
通された場所は広いダンスホールで、そこには
ドレスを着た淑女と燕尾服の紳士や外国人が社交ダンスを楽しんでいる。
よく周りを見渡すと胸ボケットにチーフが差し込まれた下に名札があった。
女性は腰の前側によく見ると付いていた。男性陣を見ていくと、芥川龍之介、谷崎潤一郎、大宰府、安部公房、松本清張、司馬遼太郎、横溝正史、
(文豪界の重鎮ばかりが集まる会なのか?)俺はまた
女性陣の名札を見ると、倉橋由美子、フランソワーズ.サガン、中川孝枝子、宇野千代、林芙美子、
(これは、凄い!)と思いつつ楽しくなってしまい、自分のおかれている状況が、わからなくなっていた。
シャンパングラスを持って呑んで人、社交ダンスに夢中になっている人、談話を楽しんでいる人、
その先の人物に目がいくと、そこには寺山修司と三島由紀夫が談話に夢中になっているのがわかる。
早口で喋る寺山と重い口調でゆっくり話している
三島、対象的な2人に(俺の姿が見えないのか?)
こんなに好きな人物に会ったのと酔ってしまったのか、 急にホールの先の先の階段を走って真ん中まで
辿り着くと上から、フランス人形の様に可愛い女の子が階段を降りてきて、俺にその子は金の鍵を渡す。
その子の手の甲には桜の花弁の痣があり、鍵を渡すと否や踵を返して去って行った。
俺はそこで、振り向いてホールの人々に
「俺は小説家になる!!」と大声で叫んでいた。
すると耳元て「どうしたの?」の声で目が覚めた。(全ては夢だったのか?)
「なあ香織、俺は明日から本物の小説家として活動していきたいんだけど、いいか?」
「もちろん、いいわよ。」
「助けられる事があったら力になるからね。」
夢から覚めて、この話しを題材にして題名は
(透明な文豪達の集い)
それからは、収入源が無くなりアルバイト4時間に
香織は給料を文句も言わずに生活費として入れてくれていた。
官能小説仲間からは嫌な噂話とか、
「何時でも戻って来いよ。」とか言われ
俺はオレで「絶対に戻らんぞ!」と心に誓う。
それからは、小説だけを書く事に没頭しながら時々、香織が散歩に誘ってくれたり、ビルの屋上に上がって夕焼けを見に連れ出してくれたりして気分を変えさせてくれた。
AIは、絵も曲も小説も書くらしい。世間はAIに任せておけと言うだろう。でも俺はオレの言葉と感情を小説へ入れたいんだが、これを自己満と言うのだろうか?
歴代の文豪達は、どう言うだろうか?
半年後、色々な出版社に投稿し続けていた頃
香織は妊娠3ヶ月だという事がわかり、俺は焦っていたが、有るSNSで話題になるきっかけで出版社も
決まった。7ヶ月後、産み月に受賞式があり、産まれた子と香織と俺は赤い絨毯の上を歩いていた。
産まれた子の手の甲に桜の花弁の痣があった。
(こういう暗示もあるのだと驚いた。)
こうして俺の小説家の道も開けたが、あの夢の鮮明さと鮮やかさには不思議で一生忘れえぬだろう。
~完~