テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『見つけてしまった 潤也side』
久々に、直樹の部屋に入った。
別に、やましいことがあったわけじゃない。机に兄弟共用の本があると思って、つい開けただけ――の、つもりだった。
でも、俺の目は、机の中の奥にしまわれていた一冊のノートに吸い寄せられた。
手に取ったとき、少しだけ背徳感が走った。
でも、それ以上に、俺は――気になって仕方なかった。
《表紙に、自分の名前が書かれていたからだ。》
「……え?」
開いた最初のページに、ボールペンの跡がくっきり残っている。
なんで兄貴は、あんな顔して笑ったんだろう
僕の話、ちゃんと聞いてなかった
シェアハウスほんと?
一行一行、まるで胸を刺されるようだった。
僕の方、全然見てくれないくせに
お兄ちゃんが誰かと笑ってるの、見たくなかった
ページをめくる手が止まらなかった。
俺の名前が、何度も何度も出てくる。感情がぶつけられていた。
怒り。戸惑い。寂しさ。そして――
お兄ちゃんにだけは、気づかれたくなかった
でも、たぶん僕、もう限界かもしれない
「……直樹」
息が詰まる。
俺は何をしてたんだ。
構ってほしくて嘘を重ねて、試して、からかって――
弟は、こんなに必死で、俺を見てたのに。
(バカだな、俺……)
直樹に見せるわけにはいかない顔で、俺はノートをそっと閉じた。