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「言っとくけど、そんな暇ねぇっての。俺はこれから四神の『印』を全員分集めて、元の世界に戻んなきゃいけねぇんだ」
煌のその言葉に、庭園の空気が少しだけ静まる。
お茶を淹れていた燕花が、どこか寂しそうに眉を下げた。
「童殿……。まだ、そんな事を言っておいでなんですか?」
「そりゃそうだ。確かに、燕花にはよくしてもらってるし、なんだかんだで賑やかな日常も悪くないとは思ってる。住めば都って言葉があるんだけど、それなりに楽しいしな。……けどさ、帰れるもんなら帰りたいんだ。退屈な日常だったけど、あっちに残して来た仲間だっているし……」
ぽつりと、けれど確かな重みを持って紡がれた煌の本音に、誰もが言葉を失う。
朱雀は煌をからかうような笑みを完全に消し、ひどく寂しそうな、今にも泣き出しそうな瞳で煌を見つめた。
「……やはり、お主の帰りたいという意志は、固いのか?」
向けられた切ない視線に、煌の胸が不意にズキリと痛んだ。
魂の交わりを終えた今、朱雀を置いて元の世界に戻るという選択に、自分でも気づかないくらい、ほんの少しだけ心がぐらついているのを感じてしまう。
けれど、煌はそれを押し込めるように、わざとぶっきらぼうに腕を組んでみせた。
「あぁ、決めてんだよ。それに……次の『玄武』ってやつがどんな奴か、単純に気になるしな。氷嵐のジジイは玄武の手下らしいじゃん。直接殴り込みに行って、一発クソデカい拳骨でも食らわさねぇと俺の気が済まねぇ」
氷嵐の名前を出した瞬間、煌の瞳に鋭い怒りが宿る。そして、ふと顎に手を当てて声を落とした。
「あと……少し、気になる事があるんだよな」
「気になる事、ですか?」
燕花が不思議そうに尋ねると、煌は真剣な目を一同に向けた。
「もしかしたらさ……玄武の所には、既に別の『巫女』が現れてるんじゃないかっていう。推測だけどな」
「なっ……」
白虎が目を見張り、燕花が息を呑む。
「氷嵐がわざわざ|焔南国《ここ》に来て、俺を排除しようとしたり朱雀を暴走させようとしたのは、あっちにいる巫女にとって俺たちが邪魔だからだろ。それに、この国の街中で見た俺の国の言葉が書かれた看板。どう考えたって、俺より先に此処にきたやつが居るって事だろ。ソイツが今どうなってるのか……。寧ろ本当に居るのか。知りたいんだ……。それを確かめるためにも、俺は玄武の国へ行く」
煌が力強く宣言すると、朱雀がすかさず身を乗り出して、煌の手を両手でぎゅっと握りしめた。
「ならば、わしも行くぞ! お主を一人でそんな危険な国へ行かせるわけにはいかぬ!」
「はぁ!? お前は何言ってんだ、この国を守る仕事があるだろうが!」
「嫌だ、留守番など絶対にせぬ! 片時もお主と離れたくない……!」
「お前は駄々っ子か――っ!!」
コメント
1件
読了しました〜🥀 煌、ちゃんと帰りたい気持ちがあるんだね。でも朱雀があんな切ない目で見つめるから、心がぐらついてる感じ、すごく伝わってきた…。「離れたくない」って我がまま言う朱雀、可愛いし切ないし、もう胸がぎゅってなるよ😢 玄武の国に別の巫女がいるかもって推理、確かに気になる…!氷嵐の行動にも納得できるし、物語がもっと深まっていく予感がする🌙