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アンケートアイドル。
その名のとおり、活動内容をすべて“アンケート”で決める新企画だ。ファンとの距離が近づいた今の時代らしい、ちょっと風変わりなアイドル像。
香花には、その話が降ってきた瞬間、胸の奥がふっと熱くなるのを感じた。
特別な才能があるわけでもない。オーディションには受かったけれど、鳴かず飛ばずで時間だけが過ぎていく。
「アイドル戦国時代」と呼ばれる今、このままでは終わる気がしていた。
だからこそ――この企画は、もしかしたら自分を変えてくれるかもしれない。
そんな予感があった。
条件はふたつ。
ひとつめは、アンケートで選ばれた内容は必ず実行すること。
ふたつめは、アンケートの中身は事務所は一切口出ししないこと。
つまり「すべて、自分で考える」ということだった。
「アンケートは一週間後に実施します。それまでに内容を考えてね」
マネージャーにそう告げられた夜、香花は公園のベンチで明け方まで紙と向き合った。
自分のことを応援してくれる人たちが、どんな選択をしてくれるだろう――それを思い浮かべながら、ひとつひとつ言葉を並べていった。
翌日、案をマネージャーに渡すと、彼は目を丸くした。
「香花さん、これ……本気でやるんですか?」
「はい。これが、私の全部です」
そのアンケートはファンのもとへ渡り、多くの人が思いを込めて投票してくれた。
数日後。
マネージャーが勢いよく控室に飛び込んでくる。
「結果が出ましたよ、香花さん!」
その声に振り向いた瞬間――
私はマイクを手に取る“ふり”をした。
一ノ瀬香花(いちのせ こうか)は今、武道館のステージに立っている。
まばゆいライト、揺れるペンライトの海、響く歓声。
その真ん中で、歌っている自分がいる。
アンケートの一番上に書いた選択肢。
ファンが選んでくれた、たったひとつの願い。
――「香花を、武道館へ連れていく」
目の前の景色は、いつか夢見たものだった。
そこに立った瞬間、香花は思った。
「……夢って、本当に叶うんだ」