禪院奨也

奨也が東京の本校との交流会に参加することが決まったのは、禪院家の分家を守るため、そして父親の死の真相を追い求めるために必要な一歩だった。交流会は、東京本校の優れた術師たちと分校の生徒たちが直接戦い合い、実力を示す場として位置づけられていた。

奨也は、分校の代表として選ばれたことを誇りに思っていたが、同時にプレッシャーも感じていた。東京本校の生徒たちがどれほど強いのか、実際に戦うことになるまで分からなかったからだ。

そして、ついにその日が訪れた。

東京本校に到着した奨也を迎えたのは、すでに待機していた東京本校の生徒たちだった。虎杖悠仁、伏黒恵、真希、狗巻棘、秤金次、釘崎野薔薇、乙骨憂太、そしてパンダ……彼らは皆、奨也が想像していた以上に強そうで、気圧されそうになった。

「分校の連中か。どうせ、こっちには勝てるわけないだろ。」虎杖が軽く挑発の言葉を投げかける。

「そうだな。分校の奴らなんて、お飾りみたいなもんだ。」伏黒が不敵に笑いながら言う。

「せいぜい頑張ってみろよ、分校の“代表”。」真希が冷ややかに言い放つと、狗巻棘がその後ろで呟いた。

「おかか。」

奨也はその言葉に怒りを覚えたが、それでも冷静に対応しようとした。

「君たちの言う通りかもしれないけど、僕は少なくとも自分の力を証明するために戦いに来たんだ。」奨也はそう言って、ハンドスピナーを指先で回す。彼の術式がどれほど進化しているのか、本校の生徒たちに見せつけることができれば、彼らの挑発に打ち勝つことができると思った。

その時、秤金次が一歩前に出て、顔に興味深そうな表情を浮かべながら言った。

「分校の連中も、案外面白いかもしれないな。だが、術式の進化なんて、まだまだだろう。」

「進化？」乙骨憂太が横から口を挟んだ。「どんな術式を使ってるんだ？ ハンドスピナーを使うんだって？ 正直、笑えるね。」

奨也は、乙骨の言葉に動じることなく、目を見開いて答えた。

「笑うのは構わない。でも、今は笑っている場合じゃない。僕は、ただの分家の使い走りじゃないことを証明したいんだ。」

その言葉が、東京本校の生徒たちに微妙な緊張を生み出した。彼らは奨也の真剣な眼差しに、一瞬だけためらいを見せた。

「では、さっさと戦おう。」真希が無駄に時間をかけることを嫌い、すぐに戦闘を開始するよう促した。

交流会の開始とともに、最初に戦うことになったのは奨也と虎杖。

虎杖は素早く近づき、力強い一撃を奨也に繰り出してきた。奨也はその攻撃を素早くかわし、ハンドスピナーを回しながら反撃のタイミングを見計らう。しかし、虎杖の力強さは予想以上で、奨也はその迫力に少し圧倒されてしまった。

「速い！」奨也は一瞬動きが止まり、虎杖の攻撃を直感的にかわすことができなかった。だが、すぐにハンドスピナーを全開にして、物質の状態を一瞬で変化させる術式を使った。

ハンドスピナーの回転速度が上がると、奨也の周囲の空気が変わり、次の瞬間、氷を液体に変えた水流が反発して虎杖を吹き飛ばした。

「うわっ！」虎杖は背後に転がりながらも、すぐに立ち上がった。「面白い！でも、これじゃ足りないぞ！」

奨也はその瞬間、確信した。この戦いで自分の術式が進化しつつあることを。

「これで終わりじゃない。」奨也は冷静に、再びハンドスピナーを回した。自分の術式の限界を突破し、進化の兆しを感じていた。