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◇
航太とのいざこざで火照った顔を冷ますべく、リカは電車に乗らずひと駅分歩いた。日中は春の訪れをが感じられるものの、夜風はまだ冷たく肌をピリリとさせる。
けれどそのおかけで火照りはすっかりと治まっていた。
駅前ではすでに魚月が待っていて、リカの姿を確認するとうんうんと頷く。
「よしよし、ジャージじゃないね」
「さすがにね。てか、いつまでもそのネタ引っ張らないでよ」
「何言ってるのよ。リカがそういうとこ無頓着だから気にしてあげてるんでしょ。やる気出せばおしゃれで可愛いんだからさ、もっと気合い入れなよ」
「気合いねぇ……」
思い起こせば高校生のときが一番気合いが入っていた気がした。
覚えたてのメイクを先生に見つからないように施したり、スカートを折り曲げて足を見せたり。毎月ファッション雑誌で流行り物をチェックしたり……。
いつからだろう、そういうことをやらなくなったのは。
「まあ、私たち水泳部だったし? ジャージが楽なのはわかるけどね」
リカと魚月は大学の水泳部で出会った。
リカは中学卒業まで水泳を習っていたことと、スポーツジムでアルバイトを始めた関係で水泳部に入った。
魚月は高校まで水泳の大会に出るほど活躍していたため大学でも引き続き水泳部に入部。
そこで二人は出会い、意気投合して今でも仲がいい友人だ。
魚月は体育教師として私立の中学に勤めている。
「今日は絶対いい人みつける!」
ふん、と意気込む魚月にリカはなぜだか賛同できなかった。いつもなら魚月とキャイキャイ盛り上がるというのに。
「魚月はさ、職場にいい人いないの?」
「いるわけないじゃん。おじさんか男子中学生しかいないってば。仮に若い男がいてもさ、体育教師はダメなのよ」
「なんで?」
「私ずっと水泳やってきたからさ、肩幅広いしガッチリ体型なのよね。ガタイのいい女を好きになってくれる男は少ないの」
魚月は肩をすくめる。
確かに魚月は見た目華奢タイプではないけれど、髪もつやつやでおしゃれだし何より素直で可愛らしい。
「リカみたいに女の子らしい、なで肩に憧れる」
「これはこれで不便なのよ……」
などと話しているうちに街コンの会場に辿り着いた。