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ウチの名前は龍驤ヒカリ。東京に住む元艦娘や。
ウチは終戦後、艦娘から人間に戻り、普通に働き普通に生活しとった。
ずっと普通に生活できとった……あの日までは。
その日、ウチは在宅ワーク後の気分転換で、散歩をしとった。
そこで、ウチは久しい顔を見た。
「おっ! 大淀やん!」
それは、昔の艦娘仲間「大淀」やった。
「あっ……龍驤さん」
その日の彼女は前見たときと違った。いつも真面目でキリッとして彼女やったが、なんか隈が出とったり、キョロキョロして落ち着かん様子やった。
「どないした大淀ぉ。元気ないなぁ」
「い、いえ。そんなことは……」
こん時、ウチは彼女を元気づけようとしとった。ちょうど家にビールがあったのを思い出し、彼女を宅飲みに誘った。
「せや。今日那智が来る予定やから、ビール用意してんねん。一緒に飲もうや」
「え……いや」
「ええやんええやん。久しぶりに会ったわけやし」
大淀は申し訳なさそうにしとったけど、少し微笑み、ウチの誘いに乗ってくれた。
夜になった。
大淀と最近のことについて話とると、玄関のチャイムがなった。
「龍驤、来たぞ」
インターフォンから、那智の声が聞こえる。ウチは彼女を家に入れる。
そん時、彼女がよう分からんことをいった。
「……龍驤、冷房つけてるのか?」
「は? 何言うとんや今は冬やで? 暖房ならガンガンにつけとるけど」
「そ、そうか。何だか背筋が冷たくてな」
思えばあん時、その言葉を聞いとった大淀の顔が、少し曇っとった気がする。
なんだかんだあったが、宅飲みがはじまった。
「「「かんぱーい」」」
そして、今やっていることについて話し合った。
「那智ぃ、お前今何やっとん?」
「ん? ア○ヒ飲料の会社で働いてるぞ」
「あぁ、あの大手企業ですか?」
そんな感じで話しとった。
そんな時やった。
ふいに、大淀の方に目が行った。彼女の後ろには、少し大きい鏡が立てかけられとった。そこに写っていたものを見たとき、ウチは驚愕した。
「うおわっ!!」
ウチは椅子から転げ落ちた。
「なっ、龍驤どうした!」
那智が駆け寄って来て、ウチを起こす。
ウチは鏡を指さした。
「あ、あれや! 鏡に変なのがうつっとる!」
彼女はその方向を見る。しかし、そこにはもうあの化け物はうつっとらんかった。
そのかわり、彼女は大淀がひどく震えていることに気づいた。
「……いたんですか? 化け物が」
そして、そう言いおった。
「……へ? 大淀どないした」
その時、彼女は立ち上がり、玄関から外へ出て、走り去りおった。
「お、大淀!? どうした!」
那智もそれを追いかけていった。
飲んどった時とは比べ物にならんほど静かになった。
「な、何なんや……?」
そして、ウチが視線を上げた瞬間やった。
ウチの目に飛び込んできたのは、ウチを見下ろす鏡にうつっとった化け物やった。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
家のチャイムがなった。
『龍驤さーん! いますかー?』
ピンポーン。
『いないんですかー? 青葉ですけどー!』
青葉。元艦娘で、今は記者をしている。
『入りますねー!』
その言葉を聞いとったウチは、押し入れで震えとった。