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# 第3章:病み上がりのバディと、不穏な呼び出し(前編)
「おい佐藤、歩くの早ぇよ。一応こっちは病み上がりなんだぞ」
「どの口が言ってるのよ! 病院を脱走同然で退院してきたゾンビ刑事が!」
警視庁の地下駐車場。美和子は赤いサバンナRX-7のドアを乱暴に開け、助手席の松田を睨みつけた。
復帰初日だというのに、米花町5丁目の路地裏で不審車両の目撃情報が相次ぎ、二人はさっそく現場への急行を命じられていた。
「怪我人の私をこき使うなんて、捜査一課はブラック企業だな」
「あんたが大人しくデスクワークしてられないから、目暮警部が根負けしたんでしょうが。ほら、シートベルト締めて」
美和子が呆れ顔でキーを回すと、ロータリーエンジンが小気味よい重低音を響かせて目覚める。
松田はシートに深く背中を預け、カチリとベルトを締めた。爆発の激痛からは解放されたものの、急に身体を動かしたせいで、全身がまだ少しだけ軋む。
「……なんだよ、じっと見て」
不意に美和子が運転席から覗き込んできた。彼女の手が、松田の胸元のシートベルトへ伸びる。
「ちょっと、ちゃんと締まってない。まだ骨が完全にくっついてないんでしょ? 急ブレーキ踏んだらまたブラジルまで叫ぶ羽目になるわよ」
至近距離。美和子の髪から、かすかにシャンプーの甘い匂いが漂う。
爆発のあの瞬間、現世の暗闇を引き裂いてくれた、愛おしい女。
松田はサングラスの奥の目を少しだけ細め、不敵に口元を緩めた。
「へえ、心配してくれんの? 嬉しいねぇ」
「ば、バカ言わないでよ! あんたにまた死なれたら、寝覚めが悪いだけでしょ!」
美和子は一瞬で顔を真っ赤に染め、乱暴にギアをバックに入れた。タイヤを激しく鳴らしながら、RX-7が急発進する。
「お、おい! Gが体に響く! 殺す気か佐藤!」
「うるさーい! 病み上がりは大人しく黙ってなさい!」
車内にはいつもの、けれど少しだけ距離の縮まった、騒がしくも心地よい空気が流れていた。
現場である米花町5丁目の路地裏に到着した二人は、付近の住民への聞き込みを開始した。
「数日前から、夜中に黒いセダンがずっと停まっていてね。中の男が、そこの毛利探偵事務所をじっと見張っているみたいなんだ」
住人の証言を聞いた瞬間、松田の鋭い刑事の勘がピクリと跳ね上がった。
(毛利探偵事務所……? 確か、降谷の野郎が言ってたな。「ゾンビ警察官の噂が組織の末端に流れてる」って。まさか、俺の生存ルートから、何かの線がここに繋がっちまったか……?)
「松田? どうしたの、急に難しい顔して」
美和子が心配そうに顔を覗き込んでくる。松田は慌てていつもの不敵な笑みを作った。
「あ? いや、ちょっと腰が痛んだだけだわ」
その時、松田の胸ポケットで、個人用の携帯電話が静かに震えた。
美和子が次の聞き込み先へ歩き出した隙を見計らい、松田は画面を確認する。表示されたのは、またしてもあの「非通知」――降谷零からの暗号メールだった。
『今夜22時、米花埠頭の第3倉庫へ一人で来い。組織の目が毛利探偵事務所、そして君の周辺に動き始めている。情報を共有する』
松田は画面を消し、携帯をポケットに深くしまい込んだ。サングラスの奥の瞳が、狩人のそれに変わる。
「おい佐藤、この一件、俺が少し深く洗ってみるわ」
「え? 急にやる気出しちゃってどうしたのよ」
「なに、ちょっとあの世の土産話の続きを、別の奴にも聞かせてやりたくなっただけさ」
奇跡の生還を果たした松田陣平。彼の存在そのものが、黒ずくめの組織という巨大な闇を、原作とは違う方向へと狂わせ始めていた。
コメント
1件
あおいです🤍 第6話、読ませていただきました! 病み上がりの松田さんと美和子さんの掛け合い、もう最高でした。「どの口が言ってるのよ!」からのシートベルト直しのシーン、距離感が絶妙でドキドキしました。シャンプーの匂いを感じ取る松田さんの心情描写が特に好きです。 後半で一転、組織の気配が毛利探偵事務所にまで及んでいる展開にゾッとしました。降谷からの暗号メール…松田さんが単独で動こうとしているのが不安で仕方ないです。次回が待ち遠しい!
坂田銀にゃん
26
花梨
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哀雷🥀
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