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「私と同じ、顔……?」「ふふふ、期待通りの|驚いた顔《リアクション》。その鳩が豆鉄砲を食ったような間抜けた表情、はぁ……|愛玩《いと》おしい」
銀雪は私を見つめ満足げに目を細める。
私と同じ顔なのに、そこに浮かぶ笑みは、ひどく見知らぬものに思えた。
何か言わなければ。
そう思うのに、喉元までせり上がった言葉は、声になる寸前でつかえてしまう。
「——でも残念ね。|素顔《コレ》をみせたら少しは思い出すかもって期待したのだけど」
「思い出す……?一体、何のことを言って——」
問いかけた私の声に、烈々子の声が重なる。
「あの……|銀雪《ぎんせつ》、さん。瑠璃とは、どういう関係なんですか……?もしかして生き別れた姉妹だったり……」
「残念だけど、姉妹とか家族とか、そんな”分かりやすいもの”じゃないわ。あえて私と|瑠璃《その子》の関係を表すなら——」
銀雪は、言葉を選ぶように小さく首を傾げると、少しの間を置いて告げる。
「”成功作”と”失敗作”——かしらね」
成功作と失敗作。
言葉の意味は理解できる。
けどそれは、人間同士を比べる時に使う言葉なのだろうか。
まるで、私たちを何かの製作物として扱うようなその言い方に、私は強い違和感を覚えた。
「……それは、どういう意味ですか」
「それは、最後の|試練《ゲーム》で分かるわ。何の関わりもないはずのあなたたちが、なぜここに集められたのか。あなたたちの正体と、このデスゲームの目的——真実は”そこで明かされる”」
聞きたいこと。
いや聞くべきことはまだ他にもあるはず。
なのに、何から問いただせばいいのか分からない。
まとまりきらない雑然とした頭の中では、『成功作と失敗作』、その言葉だけがぐるぐると何度も繰り返されていた。
「ゲームマスターとして、私はこの先で待っているわ。真実と向き合う覚悟ができたら——この扉を開きなさい」
銀雪はそれだけ言い残すと、鼠の面をつけ直す。
私と同じ顔が、再びその下へ隠されると、こちらの返事を待つこともなく扉へと歩き出した。
コツッ。コツッ。コツッ。
ヒールの音が、静まり返った場内に響く。
遠ざかる背中を、私はただ呆然と見つめていた。
彼女の姿が見えなくなっても、私たちはしばらく、その場から動けずにいた。
ようやく、|試練《ゲーム》を乗り越えた。
あれほどの犠牲を払い、どうにか生き残ったはずなのに。
安堵する暇さえ与えず、彼女が残した言葉によって、私たちが抱いた疑問の種は、さらに深まるばかりだった。
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けっかはっぴょう〜|阿修羅道《アシュランド》〜ロボットさんは仲良ちこよち!〜
難易度:★★★★☆
だつらく者:ましろ、まじゅま、きわむ
えむぶいぴー:きわむだな!
行動ろぐ:れつこ、おまえなにしてた?
総合ひょうか:ぜんめつしないでほっとしたぜ
ねくすと:じぶんとのたたかい
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✳︎ ✳︎ ✳︎
結局、|銀雪《かのじょ》の言う”成功作”と”失敗作”が何を意味するのか。
なぜ私と同じ顔をしているのかについては、分からないまま。
次が最後の|試練《ゲーム》。
“真実はそこで明かされる”——彼女はそう言っていた。
でも、これ以上。
もうこれ以上、誰かが死ぬところなんて見たくない。
真実を知るために、また誰かの命を犠牲にしなければいけないのなら、いっそのこと真実なんてどうだっていい。
……全員で、生き残る方法はないのだろうか。
誰も犠牲にならずに、最後の|試練《ゲーム》をクリアする方法。
私はこれまでの|試練《ゲーム》を、ひとつずつ思い返す。
告げられたルール。
用意されていた道具。
私たちが選んだ行動。
言葉通りに従うだけが、必ずしも正解とは限らなかった。
だったら、最後の試練にも何かあるかもしれない。
ルールの抜け穴や、禁止とも許可とも取れる|曖昧な領域《グレーゾーン》。
全員で生き残るために利用できる余地が、どこかに。
第三、第四|試練《ゲーム》のような協力戦なのか。
それとも、第一、第二|試練《ゲーム》のような個人戦なのか。
せめてそれだけでも聞き出せていれば、少しは作戦の立てようもあるんだけど。
そこまで考えた、その時だった。
「あのぅ、すみません」
不意に、誰かの指先が肩に触れる。
「ひゃっ!」
思考に沈みきっていた私は、反射的に肩を跳ねさせ、声を上げてしまった。
「あわわっ!す、すみません、驚かせちゃって!何度かお声がけしたんですけど、反応がなかったもので……」
振り返ると、そこには申し訳なさそうに身を縮める|罪深《つみか》が立っていた。
考え込むあまり、近づいてきたことにも気づかなかったらしい。
そういえば、|阿修羅道《アシュランド》が爆発しそうになった時、彼女には闘技場の隅へ逃げるように言ったきりだった。
爆発も起こらず辺りも静かになったので、もう大丈夫だと思って出てきたのだろう。
「こちらこそすみません。ぼーっとしていて、気づかなくて」
「あ、いえ……気にしないでください。影が薄いのは昔からなので……」
罪深はしゅんと肩を落とし、ぼそりと呟いた。
「そ、そういう意味じゃないですよ!落ち込まないでください!少し考え事をしていて、周りが見えていなかっただけですから。罪深さんのせいじゃないです、本当に!」
私が慌てて両手を振って弁明すると、罪深は伏せていた顔をおずおずと上げ、「ありがとうございます……」と小さく頭を下げた。
きっと私を気遣って声をかけてくれたのに、謝らせたうえお礼まで言わせてしまった。
なんだか、こちらの方が申し訳なくなってくる。
そんな私をよそに、罪深は何かを確かめるように辺りをきょろきょろと見回すと、恐る恐る尋ねてきた。
「その……第四|試練《ゲーム》が始まってから、今までの記憶が曖昧なんです。もしかしてこの惨状……全部”ワタシ”のせいだったりしますか……?」
自分の中に別の人格がいることは、本人もある程度は理解しているのだろう。
記憶のない間に、その誰かが何かをしでかしたのではないかと、不安に思っているようだった。
私はその問いかけに対して、即座に首を横に振り否定する。
はじめに、彼女がこの惨状を招いたわけではないこと。
むしろ、あの巨大な殺戮兵器やせんじゅ相手に立ち向かい、その度に何度も私たちを助けてくれたこと。
自分が見ていた限りの出来事を、一つずつ順を追って伝えていった。
「罪深さんがいなかったら、私たちは間違いなく揃って全滅してました。罪深さんのおかげなんです。今こうしてお話しできているのは。ありがとうございます」
私が頭を下げると、罪深はようやく安心したのか、ほっと息をついた。
「そうだったんですね。お役に立てたのなら、良かったです」
少し照れくさそうに頬を赤らめながら、彼女は小さく頷いた。
「あの子たち、いつも無茶ばっかりするんです。後から何があったか教えてはくれるんですけど、説明が大雑把で……。詳しく聞くと、『罪深はいちいち細かいんだよッ!』って、なぜかワタシが怒られちゃうんです……」
「そんな肩身の狭い思いを……」
多重人格についてほぼ知識ゼロの私でも、彼女の大変さは何となく想像できる気がした。
彼女の言う多重人格を私なりに解釈すると、自分はベッドの上で眠っているつもりなのに、別の誰かが身体の主導権を握って、好き勝手に出歩いているようなものだろうか。
目が覚めた時にはすべてが終わっていて、自分の身体が何をしていたのか、自分だけが知らない。
それでは、誰かの顔色を窺いたくもなるはずだ。
今、目の前にいるのは、少し気弱なごく普通の少女だった。
ついさっきまで見せていた、狂気すら感じさせる戦いぶりも、近寄ることさえためらうような威圧感も、すっかり鳴りを潜めている。
「あっ」
ほっとしたのも束の間。
不意に、罪深の膝ががくりと折れた。
前のめりに倒れかけた身体を、とっさに両腕で受け止める。
その重みに私までよろめいたが、足を踏ん張り、どうにか二人で倒れるのだけは免れた。
「大丈夫ですか!って、その脚……」
よく見ると、罪深の両脚には、所々に青紫色の痣が浮かんでいた。恐らく、さっきまでの戦いで負ったものだろう。
あの時は平然と動き回っているように見えたけれど、戦っていた時の興奮が冷めた今、痛みが一気に押し寄せてきたのかもしれない。
「うぅ……だ、大丈夫です。これぐらい、慣れっこなので」
「慣れっこって、そういう問題じゃないですよ」
大丈夫だと言いながらも、罪深は脚に体重をかけようとするたび、わずかに顔を歪めていた。
「私たちは味方なんですから。つらい時くらい遠慮しないで頼ってください」
私は彼女の腕を自分の肩へ回し、腰に手を添えた。
少しでも脚への負担を減らせるよう、その身体を引き寄せて支えるように。
「……ありが……とう。優しいんですね。でも、大丈夫です。さっきは少しほっとして、気が緩んじゃっただけなので。骨までは折れてませんから」
そう言うと、罪深はそっと私から身体を離し、自分の脚で立ってみせた。
だけど、立てるからといって、ひびくらいは入っているかもしれないし、何より痛みを堪えていることは表情からも分かった。
「…………」
少し考えた後、差し出しかけた手をいったん引っ込める。
本人が大丈夫だと言っているのに、無理に支えようとしては、かえって気を遣わせてしまいそうだった。
「分かりました。でも、無理はしないでくださいね」
なんにせよ、彼女は今回の戦いで、誰よりも身体を張って私たちを助けてくれた立役者だ。
とりあえず彼女に気を遣わせない範疇で、また脚がもつれそうになった時には、すぐに手を伸ばせる距離にいようと。
そう心に決めた、その時だった。
「ミスティさんっ!!」
烈々子の悲鳴に振り返ると、その足元にミスティが倒れていた。
「ミスティさんっ!しっかりしてくださいっ!ミスティさんっ!」
私は慌てて駆け寄った。罪深も少し遅れて後に続く。
「はぁ……はぁっ、はぁ……」
烈々子が何度呼びかけても、返ってくるのは苦しげな息遣いばかり。
ミスティは固く目を閉じ、眉間に深い皺を刻んでいた。
額に滲んだ汗が、こめかみを伝って床へ滴り落ちる。
いつもなら、こんな時こそ軽口を叩いて、こちらの心配など吹き飛ばしてしまう人だ。
そのミスティが、言葉を返すことさえできずにいる。
それだけで、どれほど深刻な状態なのかは嫌でもわかった。
「はぁ、はぁ……ダメねぇ、アタシ……」
やがて、わずかに開いた唇から、掠れた声が漏れた。
「最年長の……”オネエ”さん、なんだから……アタシが、しっかりしなきゃ……いけないのに……」
途切れ途切れの言葉に、また荒い呼吸が混じる。
こんな時まで、この人は私たちの心配をしている。
「どうしよう……ねぇ、どうしようっ!?このままじゃ、ミスティさんが死んじゃう……!」
烈々子はミスティと私を交互に見ながら、今にも泣き出しそうな声で訴えた。
何かしようと手を伸ばしては、どこに触れればいいのかわからないように、その手を引っ込める。
「烈々子、落ち着いて。まずは、ゆっくり息をして」
そう言う私自身、声が震えるのを抑えるので精いっぱいだった。
彼女の肩にそっと手を添え、もう片方の手をミスティの額へ伸ばす。
「ミスティさん、ちょっと失礼します」
額に触れた瞬間、思わず手を引きかけた。
熱い。
汗に濡れた皮膚の下に、熱がこもっている。
こんな状態で、今の今まで意識を保っていたのか。
それどころか、あの重い|電磁砲《レールガン》の砲台を持ち上げて、私たちを助けてくれたなんて。
目を落とすと、左腕の傷口に巻かれた布には、また血が滲み始めていた。
止めたはずの血が、じわじわと赤い染みを広げている。
もう、その場しのぎの応急処置ではどうにもならない。
一刻も早く、ちゃんとした治療を受けさせなければ。
こんな時こそ|彼《ちぎり》がいてくれたら。
そう思ってから、唇を強く噛み締めた。
もう叶わない事だとわかっているからこそ、余計に悔しさが込み上げる。
「ミスティさんっ!ミスティさんっ!」
烈々子はミスティの右手を両手で握りしめ、繰り返しその名を呼んでいた。
「死んじゃ嫌ッ!死んじゃ駄目ですっ!ミスティさん!!起きてください!起きてくださいってば!!」
握った手に額が触れそうなほど顔を寄せた、その時だった。
「……っさいわねぇ……」
ミスティの瞼が、わずかに持ち上がる。
「ちょっと……|休憩《ブレイク》してただけよ。アンタ……もしかして……彼氏を起こす時も、そうやってやかましく騒ぎたてるタイプなの……?」
「彼氏なんて……できたことありませんっ!烈々子はみんなのアイドルですから!」
「ふっ……今は、カメラも回ってないんだから……営業トークはいらないわ」
「ほ、本当なんですっ!」
ミスティは薄く微笑んだ。
「あら……じゃあアンタ……恋の駆け引きも知らない、初心者マーク付きの……アイドルちゃんってわけ……?」
「だ、だから、烈々子はっ、みんなのアイドルなんですっ!結婚はちょっと興味あるけど……それは夢を叶えてからでも遅くありませんし……」
「ふふっ……甘いわね……世界中のオトコを……夢中にさせるつもりなんでしょ……? それで……世界中のオトコを、魅了しようなんて……百年、早いわ……」
一度言葉を切り、浅く息を継ぐ。
「いーい……?オンナってのはね……恋をしてこそ磨かれるものなのよ」
「もうっ……こんな時まで、お説教しないでくださいよぉ……!」
「フフフ……不思議な事ってあるものよね。アンタに励まされてたら……なんだか、元気が出てきちゃったわ」
そう言うと、ミスティは右手を床につき、ぐっと身体を押し上げた。途中、苦痛に顔を歪めながらも、左脚に体重を乗せて立ち上がってみせる。
そのまま上半身をぐいっと逆方向へ捻ると、右肘を軽く曲げ、反らした手首から指先を頬へと垂らす。
さらに顎を引き、こちらを誘うような流し目で、ぴたりと決めポーズをしてみせた。
「アモォオオオオォレ・ミィオッ!♡トゥーマス・ミストゥビオ!大復活ヨォッ!♡♡♡」
「烈々子も混ぜてくださいっ!」
すかさず隣に並んだ烈々子も、負けじと腰をくいっと捻った。
片手を腰に添え、もう片方の手は目元で横向きのピース。
ミスティと肩を寄せ合い、こちらへばちんとウインクを飛ばしてくる。
流石はアイドルといったところか。
ミスティに負けるとも劣らない、洗練されたポージングだ。
って、何を見せられているのだろう私は。
そもそもミスティは、立っているだけでも辛いはずなのに。
どうしてわざわざそんな奇妙な体勢を取る必要があるのか。
思わずツッコみたくなったけれど、今のミスティの笑顔は、不思議と無理に取り繕ったものには見えなかった。
「……本当に大丈夫ですか?もう少し休んでいた方がいいんじゃ——」
「ルリリン!いつまでそんな暗いカオしちゃってんのよ!」
「るり……りん?」
聞き慣れない響きに、思わず首を傾げた。
……もしかしなくても、私のことだ。
いつの間にか、名前にずいぶん陽気な付属品がついているではないか。
「次が最後の|試練《ゲーム》だって、あのオンナも言ってたでしょう。だったらとっととクリアして、こんな陰気臭い場所なんておさらばよ!」
「それはそうなんですけど、さっきまであんなに熱が」
「アタシは普段からこんなもんよ!”愛の化身”と呼ばれたアタシは、常に情熱のエネルギーが滾ってるの♡」
私たちを不安にさせないためにそう言っているのか、それとも少し休んだことで本当に持ち直したのか。
こんな短時間で回復するなんて、普通ならまず考えられない。
けれど、ミスティの声や表情には、先ほどまでの苦しみようが嘘に思えるほどの活気が戻っていた。
なら、これ以上心配してばかりいるのも、かえってお節介なのかもしれない。
ひとまず私たちはその言葉を信じることにした。
ただ、仮に峠を越えたとしても、私たちが依然としてぎりぎりの状態にあることは変わらない。
ほんの些細なきっかけで、今にも崩れてしまいそうな危うさは常に付きまとっている。
左腕を失い、右脚を骨折したミスティ。
せんじゅとの攻防で、全身に傷を負った罪深。
私と烈々子は大きな怪我こそないものの、度重なる|試練《ゲーム》で蓄積した疲労は、確実に身体を蝕んでいた。
この状態で、最後の|試練《ゲーム》を乗り越えられるのか。
冷静に考えるまでもなく、見込みが薄いことくらいわかっている。
だけど、ここで立ち止まったところで、何が変わるというのだろう。
私たちをこんな目に遭わせた連中が、今更救いの手を差し伸べてくれるはずもない。
生きて帰りたいなら、進むしかない。
どれだけ勝ち目が薄くても、まだ終わっていないのだから。
私は一度、深く息を吸った。
そして、残った三人と顔を見合わせ、小さく頷く。
こうして私たちは、最後の|試練《ゲーム》が待ち受ける扉へと、足を踏み出した。
✳︎ ✳︎ ✳︎
ミスティに肩を貸しながら、薄暗い通路を進んでいく。
歩調を合わせるたび、肩にかかる重みがわずかに揺れた。
通路は長く、いくつもの分岐があった。
角を曲がっても、その先にはまた同じような景色が続いている。
ここは一体、どこまで広がっているのだろう。
これほど巨大な施設が、日本のどこかの地下にあるなんて、未だに信じられない。
そもそも、ここが日本だという確証すらないのだけど。
道すがら、私たちはぽつぽつとお互いのことを話していた。
趣味とか、好きな食べ物とか。
そんな他愛もない話。
こうして話してみると、みんなは私に比べて過去のことをずいぶんはっきり覚えているのだと感じた。
好きなものを挙げるだけでなく、それにまつわる思い出まで、自然と言葉になって出てくる。
「瑠璃は?甘いものとか好き?」
烈々子に訊かれ、記憶を探る。
だけど、浮かんでくるのはケーキやチョコレートの形ばかり。
それを食べている自分の姿は、いまいちはっきりと思い出せない。
「……たぶん、好きだと思う」
私も何か話したいのに。
好きだった理由も、よく食べていたものも思い出せない。
すると烈々子は、少し考えるように首を傾げた。
「じゃあさ、ここを出たら何食べたい?烈々子はねぇ〜、絶対パフェ!トッピング盛り盛りのバケツみたいなおっきいやつ!」
「……それ、一人で食べきれないでしょ」
「食べきるの!そのためにも、今のうちからお腹空かせとかなきゃ!」
思わず笑うと、烈々子も嬉しそうに笑った。
過去のことではなく、これからのこと。
答えに詰まった私のために、話を変えてくれたのだと、そこで気づいた。
「じゃあ、私も同じのにしようかな」
「決まり!一緒に食べに行こうね!」
今度は、無理に記憶を探らなくても頷けた。
今更だとは思う。
一緒に命を懸けてきた相手のことを、私たちは驚くほど知らなかった。
それでも、誰かが話せば誰かが応えた。
ミスティが茶々を入れ、烈々子がむきになって言い返す。
そのやり取りに、罪深も小さく笑った。
私も、気づけば口元が緩んでいた。
怖くないわけじゃない。
ただ、最後の扉に辿り着くまで、ずっと俯いていたくはなかった。
きっと、みんなも同じだったのだと思う。
そうして少しずつ言葉を交わしながら、入り組んだ通路を進んでいくと。
やがて、正面に大きな扉が見えた。
「……着きましたね」
足を止めると、さっきまでの会話が途切れた。
烈々子が扉を見上げ、ぽつりと呟く。
「これで本当に、最後なんだよね……?」
「うん。生き残ろう。もう、誰一人欠けることなく」
口にしてから、三人の顔を見た。
ここまで一緒に来た。
だから、この先も一緒に進んで、一緒に帰りたい。
その願いだけは、何が待っていようと手放したくなかった。
ミスティを支える肩に、もう一度力を込める。
空いた手を扉にかけると、指先に冷たさが伝わった。
私は深く息を吸い、その扉を押し開けた。
#デスゲーム
鬼霧宗作
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コメント
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みぅです🥀第38話、読み終えたよ……。 銀雪が「成功作と失敗作」って言ったとき、ゾッとした。同じ顔なのに、言葉の重みが全然違ってて。ミスティが無理してポーズ決めて笑わせようとしてるところ、読んでて切なくなった。ああいうとこ、この作品の好きなところ。 次が最後の試練。全員で生き残る方法、瑠璃が真剣に考えてる姿に、こっちまで「絶対帰ろう」って思えた。続き、しっかり読ませてもらうね🌙