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いつも通り夜空に祈っていたら、神様…なのかな。男の人が「多賀大社に来い」と言ってきた。私自身はその場所を知らないからなと考えていたら、凛音が「俺に案がある。明日の朝、俺と変わってくれ。」と言う。何をするのか分からないけど…多賀大社に行けるのならいいか。
「おい琳寧!起きてるか!!」
琳寧の1日はこのクソ野郎の怒声から始まる。しかし、今日は違う。
「あ“〜うっせぇな。そんな大声じゃなくても聞こえてるよ!このクソ親父!!」
俺は琳寧よりも口調が荒い。だから、このクソ野郎はすぐに気付く。
「その口調…凛音か!」
「せ〜か〜い」
相変わらずこのクソ野郎の声はうるさい。これだけで腹立ってきそうなんだが…それに加え、こいつ、俺に向かって舌打ちまでしやがった。
「生意気な態度とりやがって…」
あ〜まずい。本当にキレそう。
「それで?わざわざお前が出てくるなんて、なんか用があるんだろ?言えよ。」
「おぉ、話が早くて助かるわ。んじゃ、単刀直入に言わせてもらうけどよ…」
「…は?」
おぉ、驚いてんじゃん。ま、当然だわな。さっさと多賀大社に行きたいし、俺は玄関に向かって歩き出した。なのに、この野郎は俺の腕を掴んで、引き戻そうとする。汚ねぇ手で触んなと言いたいところだが…まぁそこは堪えようか。
「家を出ていくつもりだと?どこに行くんだ?何をするつもりだ?」
「そんなのどうだっていいだろ?何をするにしても俺らの自由。お前が口出しするのももう終わり。理解できたか?」
てか今更俺らの行動を気にするつもりか?どこまで頭悪りぃんだよこいつ。
「…そうか。なら少し待ってろ。飯でも作ってやるよ」
「おぉそうか!たまには気が効くじゃねぇか!!」
…とは言ったものの、これからこいつがとる行動なんて大体想像がつく。ほら見てみろ。調理器具のところを探してる。仕方ない。ちょっと茶番に付き合ってやるか。
「そういえば、お前の好きな食いもんはなんだ?」
「あ?んなもん別にねぇよ。つぅか早くしてくんね?」
「はいはい、だったら…」
ったく、ほんとこいつは叫ぶのが大好きだよな。さて、今こいつは包丁を持って俺を刺しに走ってきているが…遅すぎるな。この程度なら寝起きでも躱せる。俺は余裕で躱した。にしても殺そうとまでするか?普通。正真正銘のクソ野郎だろこいつ…。
「てめぇこの野郎!!」
刺せなかったからって、次は殴りかかってきた。軌道も分かりやすくて、狙いなんか考えなくても分かるくらいだ。でもまぁ、昔ボクシングをやっていたからかスピードは速いな。でも、躱すまでもない。片手で止めれた。本当に芸がない、単調な攻撃ばかりでつまらない。
「つまんな…」
「はぁ?!」
おっと、つい声に出ていたそうだ。まぁいいけど。
それよりも考えないといけな事はこいつの処分の仕方だ。どうしようか?…いや、こいつ相手に手間かけるのも馬鹿馬鹿しいか。
俺はこいつの首をなぞるように、ただ何もない空間で指を動かした。すると、あーら不思議。ゴトッという重い物が落ちる音がしたと思ったら、クソ野郎の頭が落ちているではありませんか〜。
あとはコレの処理。燃やせばいいだろ。そこで、俺は指を鳴らした。パチンといい音が鳴ると、瞬く間にコレは燃え、炭になった。
「それでは、地獄を楽しんでくださいね〜。ま、残念ながら生ぬるいものでもないけどな。」
そう言い捨てて、俺は家を出た。
あ、そういえば、勝手にあいつ殺しちゃったけど、琳寧に怒られるかな?俺は立ち止まって、少々考えるが…。
結論、バレなきゃ犯罪じゃない。誤魔化すことにした。
さてと、確かここが多賀大社のはず。琳寧と変わろっと。
気が付くと、神社の前にいた。多分ここが多賀大社なんだろうな。
「ありがとう、凛音。」
「おう!」
あれ、凛音がいつにも増して気分がよさそう。何かいいことでもあったのかな?
それにしても、神社は初めて見るかも。今まで外に出たこともあまりなかった訳だし。
「綺麗だね。」
「そりゃ有名な神を祀っている神社だからな。綺麗にしなきゃ罰が下る。綺麗にすれば加護を授かる…。昔から人間が持ってる感性だな。」
「そうなんだ…」
また一つ、新しいことを知れた。
「それより、いつまで鳥居の前で突っ立ってるつもりだ?早く行こうぜ」
「あ、そうだね」
私は大きな鳥居をくぐり、本殿まで歩いた。それにしても、本当に大きな神社だなぁ。ここって、どんな神様が祀られてるんだっけ?きっと偉大な神様だろうな…。そう考えていると、ポンッと後ろから肩を軽く叩かれた。
「やぁ、“君ら”がリンネだね?」
振り向くと、そこにはフードを深く被った、背が高い男の人がいた。170くらいかな。フードの隙間から白い髪が少し見える。
「はい、そうですけど…あなたは誰ですか?」
「おっと、失礼。」
そう言いながら、男の人はフードを外す。男は白髪。三方向に分かれた前髪で、所謂…うるふかっと?って言う感じの髪型。襟足の部分では三つ編みをしていて、特徴的な髪型だなぁと思った。優しい顔つきで、耳に直径5cmほどのピアスをしている。服装は着物。
「私は“イザナギ”。よろしくね」
笑顔で自己紹介をした。イザナギさんか…どこかで聞いたことがあるような…。
「あぁ、あのイザナギか。」
そう凛音が呟いた。
「凛音、知ってるの?」
「まぁな。こいつが琳寧の求めていた神サマだよ。イザナギは日本と、日本の神を創った創造神。そして、同じく創造神のイザナミの夫だ。」
あぁ、聞いたことがある気がする。お母さんがよく話していた神話だ。
「ということは、イザナギさんはかなり位が高い神様なんですね」
「そう!その通り!」
自慢げにそう答えた。感情が豊かな人なんだな…。私は…。いや、そんな事はどうでもいいか。
「昨日、私に話しかけてくださったのはイザナギさんですね?」
「そだよ〜」
返事が軽い…とは思ったけど、言わないでおこう。
「でしたら、私はこれからどうしたらいいんですか?」
そう聞くと、イザナギさんは少し目を伏せながら、
「…ここでは話せない。場所を変えようか。」
と言い、何もない空間に手をかざした。すると、ヴォンという音と共に、ワープゲートのようなものが現れた。
「ここを通れば、私の部屋に行けるよ。入っておいで」
と言って、イザナギさんはそのゲートに入っていった。それに続いて、私も入った。
入ってみると、そこはさっきまでいた場所と全く違う場所になっている。そこはとても広くて、白がよく使われている和室。障子から光が入り込んでいるからか、明るくていい雰囲気だなぁ。
「いらっしゃい!」
そんな和室の中央付近に、イザナギさんは笑顔で立っていた。
「あれ、もうちょっと驚くと思ったんだけど…」
…ごめんないさい。感情表現は苦手で…。と言おうとしたら、
「イザナギ、そうゆう系の話はやめてくれ。琳寧の今までを思い出してくれ。こいつは感情を表に出すのが苦手だ。」
「あ…ごめんね、琳寧ちゃん」
やっぱり凛音は優しい。私よりも私のことを理解して、心配してくれる。
「えと…話というのは?」
「おっと、ごめんごめん。立ち話も何だし…」
と言いかけてると、イザナギさんは手を叩いた。すると、2つの座布団、1つの机、2つのお茶が出てきた。
「ほら、座って座って〜。気楽に話そうよ。」
何処から出したのか、少し気になったけど、私はイザナギさんと向かい合わせになる形で座布団に座った。
「さて、本題に入る前に、君は『黄泉の国』という話を聞いたことがあるかな?」
黄泉の国…イザナミさんが死んでしまって、黄泉の国にいると聞いたイザナギさんは黄泉の国へ向かう話。黄泉の国の食べ物を食べてしまうと黄泉の国の住人になってしまうが、イザナミさんはそれを食べてしまった。醜い顔になったため、イザナミさんはイザナギさんとは絶対に会いたくなかった。しかし、イザナギさんは会いたい一心で黄泉の国へ向かったため、会ってしまった。イザナミさんは「1日に人間を1000人殺める」と言い、イザナギさんは「ならば1日に1500人を誕生させる」という約束が有名な話。
「おぉ!琳寧ちゃんは物知りだね!」
「いえ、母がよく話を聞かせてくれたお陰です。」
お母さんは神話をよく知っていた。そのため、毎日1話ずつ、私たちに話してくれた。全部の神話を覚えている訳じゃないけど、この話をするお母さんは、他の話とは違う雰囲気で話していたから、よく覚えている。
「そして、君は助けてほしいと言っていたね?」
「はい…。」
もう、考えたくない。痛いのは嫌だ。血も、怒声も、全部、全部…。
「そこで私からの提案だ!琳寧ちゃん、人間界じゃなくて、天界に来ないかい?」
…え?天界…?何それ…。コレに関しては、感情が薄い私でもすごく驚いた。でも、これからもっと驚くことを言われる。それは…
「それとね、琳寧ちゃん…