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追手を振り切り、霧深い山岳地帯にたどり着いた一行。そこには古びた木造の掲示板があり、いくつかの依頼書が風に揺れている。
「ここにある仕事の中から、何か金になりそうなものを選びましょう。」ローザリンドが掲示板を睨む。
「ほら、これなんてどうだ?」フィンが指差した依頼にはこう書かれていた。
依頼名: 真紅の魔王討伐
依頼金額: 100万ゴールド
条件: 討伐成功後、証拠品を持参のこと
注意: 魔王は極めて危険。挑戦者の自己責任で。
「100万ゴールド!?そんな大金、一発で手に入るなんて!」フィンの目が輝く。
「ちょっと待って。危険な香りしかしないわよ。」ローザリンドが腕を組む。
「魔王って…本物の魔王よね?ただの異名じゃなくて?」
「問題ありません。」ドーベンが静かに口を開く。
「お嬢様、私の必中があれば、どんな敵でも倒せます。」
「またそれ!万能だと思わないでよ!」ローザリンドが眉をひそめる。
「それに…これ、なんか胡散臭くない?報酬が高すぎるわ。」
「真紅の魔王が何者であれ、まずは情報を集めるべきです。」ドーベンが冷静に提案した。
情報を求めて、一行は山奥の村を訪れた。村人たちは真紅の魔王の話になると震え上がり、会話をする者はほとんどいなかった。
しかし、一人の老人がすすり泣きながら語り始めた。
「真紅の魔王…あの忌まわしき存在は、洞窟に住んでおる。紅い炎をまとい、目が合っただけで魂を燃やされるのじゃ…。」
「おいおい、そんなのに本気で挑む気か?」フィンが不安げにローザリンドを見る。
「…でも、100万ゴールドよ。」ローザリンドは意を決したように言う。
「私たちには資金が必要だし、これを逃したら生き延びる術がないわ。」
「ならば準備を整えましょう。」ドーベンが立ち上がる。
洞窟は不気味なほど静まり返り、入り口には焼け焦げた草や動物の骨が散乱していた。
「ここ、本当に魔王がいるの?」フィンが怯えた声を上げる。
「注意を怠らないで。」ローザリンドが槍を構える。
洞窟を進むたび、空気が徐々に熱を帯びてきた。そして奥の広間にたどり着いた瞬間、目を疑うような光景が広がる。
広間の中央には、炎をまとった巨大な存在が立っていた。それは人型をしており、体全体が真紅のオーラに包まれている。
「お前たちは何者だ…ここに何の用だ。」低く響く声が洞窟を揺らす。
「あなたが真紅の魔王ね!」ローザリンドが声を張り上げる。
「私たちはあなたを討伐しに来たの!」
魔王が炎の剣を振り上げると、熱波が一行を襲う。
「このままでは焼け死ぬぞ!」フィンが叫ぶ。
「ドーベン、頼んだわ!」ローザリンドが叫ぶと、ドーベンは冷静に前へ進み出る。
「必中能力、起動。」
ドーベンは懐から弾丸を取り出し、それを指で軽く弾いた。弾丸は空中を舞い、まるで意志を持ったかのように魔王へ向かう。
「これが王国の虎の子…必中能力だ!」
弾丸は魔王の胸部に命中し、その瞬間、魔王の炎が一瞬にして消え去った。
「なっ…なぜだ…」魔王は驚愕の声を上げ、その場に崩れ落ちた。
しかし、倒れた魔王の姿が徐々に変化し、真紅のオーラが消えた後、そこに現れたのは普通の人間だった。
「これはどういうこと?」ローザリンドが目を丸くする。
「私…私は村人たちに無理やり魔王に仕立て上げられたんだ。」その人物は怯えながら語り始めた。
「税金が高すぎて、みんなで何かしらの伝説を作り上げ、依頼金を得ようとしたんだ…本当はただの鍛冶屋だ。」
「税金が原因って…」ローザリンドがあきれたように頭を抱える。
「では、依頼金は?」フィンが確認すると、魔王(元鍛冶屋)はポケットから手紙を取り出した。
「それも嘘だ。依頼金は存在しない…」
「はぁぁぁ!?!?」