カン カン カン カン
ジャッ ジャッ ジャッ
ムワッとした暑さの漂う室内で作業音が響く
カン カン カン カン
ジャッ ジャッ ジャッ
そしてその中で罵声が響くときは、大体俺のせいだ。
「おい!ヤマ!」
「は、はいっ!」
緊張で背中に力が入る
「お前、本当に使えないな」
「何回言ったらわかるんだ、脳内スライムでできてんじゃんねのか?あぁ?」
「いいか、車輪のストローク部分は長さとバランスが命なんだ」
「ここの圧力が緩んだらちょっとした衝撃で壊れるって俺何度も言ってるよな!」
この作業場に似つかない派手な指輪をつけた
恰幅のいい男が俺に容赦ない怒号を飛ばす。
他の作業員たちはまるで聞こえていないように黙々と作業を続ける。
「す、すいません」
「毎朝言ってるからわかるよな?」
「うちの会社のポリシーはなんだ!」
「あ、安心安全な旅をどこよりも安くお届けします…」
「そうだろ?お前がミスしたらウチの信用が落ちるんだ!」
「はい…」
しまった
この暑さで疲弊していたのかそれとも容赦のない怒号にうんざりしたのか、
つい気のない返事をしてしまった
まずいと思ったときにはもう、遅かった。
「や〜ま〜ざ〜き」
「お前はいつからそんなに偉くなったんだ!?」
「なあ、今の態度はどう考えてもおかしいよな?」
「なんでお前がふてくされるんだ!!??」
「すいません…」
「街で露頭に迷ってたお前を拾ったのは誰だ?」
「そ、ソクさんです」
「そうだよな」
「命の恩人だよな?」
「お前は命の恩人に適当な態度を取れるのか?」
「取れません…」
「…先週言ったこと覚えてるよな?」
「はい」
「言ってみろ」
「い、一回ミスするごとに」
「10000チックの減給です」
「そうだ!よく覚えてたな」
「じゃあこれは天引きしておくから」
「言っておくが、これはお前が言い出したんだからな」
胸ポケットから取り出したボイススネイルから
俺の力ない声が再生される。
「わ、わたしヤマザキが次からミスするごとに…10000チックを給料から天引きしてください…。」
お前が強制的に言わせたんだろ…。
と心のなかで悪態をつくものの逆らえるはずもなかった
「わかりました…」
「それじゃあそういうことで!」
暑さからのイライラが少し晴れたのか、
満足そうな表情でヤツは持ち場に戻っていった。
そして俺もまた車輪のカンナがけに戻る。
最近、こういうことがある度、俺は思う。
なんで俺
異世界転生してまで
社畜してるんだ?
コメント
2件
面白い!
なにこれ❣️やば