テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
Aꪔ̤̮
2,605
154
ぱぴぷぺぽ
52
🤍「……柚葉が結婚したら、私、どうやって息すればいいのか分からないよ。」
ぽつりと溢れた來亜の言葉は頼りなく、だからこそ粘りつくような執着を含んでいた。
けれど、柚葉は、行儀の悪いペットを突き放すように鼻で笑うだけだ。
來亜の惨めな表情を見て、柚葉の唇の端が、ほんの少しだけ愉悦に歪んだ。
🩵「そういうの、彼女に言いなよ。喜んで新しい酸素でも買ってくれるんじゃない。」
ジュッと、湿った嫌な音がして、短くなった煙草の火が空き缶の底で消える。
柚葉は指先についた灰を払うこともせず、ベットの端に放り出されていた、見慣れない革のバッグを引き寄せた。
ジッパーが噛み合う、ざらついた金属音が静かな部屋にやけに大きく響く。
その音が來亜にとっては、自分の世界が永遠に閉ざされるカウントダウンのように思えて、心臓の奥が冷たくねじ切られそうになる。
柚葉がドアの方へ一歩、踵を返そうとした、その瞬間だった。
🤍「……待って、っ。」
考えるより先に、柚葉の手を掴んでいた。
けれど、薬指の金属が、酷く冷たかった。
柚葉は掴まれた腕を振り払いもしない。
ただ、冷え切った沈黙だけが、二人の間に横たわっている。
來亜は弾かれたように手を離し、そのまま床を見つめていた。
その視界の中で、視線すら寄越さない柚葉の、白く細い足首が躊躇なく翻る。
🩵「またね。」
それだけ言って、柚葉はドアノブを回した。
來亜はその言葉がまた訪れることは無いことを意味するのを知っていた。
けれど、開け放たれた隙間から流れ込む廊下の冷気に、彼女の背中がほんの一瞬、躊躇ったように強張る。
けれどそれも、來亜が顔を上げるより早く。
抵抗するような重みを伴って、ドアが閉まった。
静まり返った部屋に、柚葉の残していった紫煙だけが残ってた。
203号室の真ん中で、來亜はただ、冷え切った薬指の残像を抱いたまま、もう誰もいないドアを虚ろに見つめ続けていた。
end。
コメント
1件
うわああああ第2話もエモすぎる〜!!😭💕「柚葉が結婚したら、私、どうやって息すればいいのか分からない」って來亜の言葉、心臓ギュッてなったよ…。對して柚葉の「新しい酸素でも買ってくれるんじゃない」の冷たさがもう刺さりすぎる。薬指の冷たさとか、紫煙だけが残る部屋とか、絵が浮かぶ描写がずるい…またね、が永遠の別れって分かってるのにドア閉めるの躊躇した柚葉の一瞬も好き…切なさが詰まりすぎてて泣く🥺