「ごめんクルル。少し庭で話がしたいから…いい?」
「いいけど…」
話ってなんだろうか?俺は戸惑いながら答えた。
「ん、ありがとね。」
サーフィーはそう言うと笑って何かを
隠すように持って外へ出た。
「クルルにお願いがあるんだけど。」
「少し、翼を見てくれないかな?」
「翼………………?!」
それを見て驚いた。
翼の根の部分は黒くなり、
今にも千切れそうだったのだ。
「お前、なんでこんなに放置した?!」
「仕方ないじゃん。
忙しい兄ちゃんに言うわけにもいけないし。」
サーフィーがそう言った。
俺は少し考える。
「…感覚はまだあるのかよ?」
「ないよ。」
「しかも、これのせいで飛べないわけじゃない。」
「元々飛べないんだ。俺。」
「元々…?なんでだ?」
竜が飛べないわけがない。
「龍王と竜の子だ。当たり前でしょ。」
「翼のない龍王と翼のある竜じゃ違うし
何らかの障害が出ても仕方ないよ。」
「だけど、信じられなくて翼を
無理やり動かしてたの。だから、こうなった。」
赤黒くなった翼の根を撫でながら
サーフィーは話した。俺は心が押し潰れそうだった。
「俺はどうしたらいい?何ができる?」
出来るだけ、少しでもいいから協力したかった。
医者として、先生の助手としてだ。
「飛べるようにして。お願いだから。」
「他は何も望まない。飛べたらいい。」
サーフィーは一生懸命話す。
だが俺には現実がある。
「……俺は助手だから…手術は出来ない。」
「けど…先生にうまく理由をつければ…」
「そうだね。だから持ってきたよ。」
サーフィーはそう言うと
バッグから注射器を出した。
「これは毒。少し神経に効く毒だよ。」
「そんなに強くないから大丈夫だけど
これを理由に手術すればいい。」
「そうだな…大丈夫か?」
「うん。平気。」
サーフィーは翼を向けて言う。
「だから打って。」
「分かった。」
俺はゆっくりと翼に注射した。
少しずつ翼の色が赤色になり始める。
「痛…痛い…!」
「大丈夫か?!」
サーフィーが震え始めたその時
先生が来た。
「何事だ?!」
「先生!サーフィーが…」
「?!」
「…神経性の毒か?蛇毒に似ているな…」
(さすが!)
「それより、サーフィーの翼の
手術を早くしないと!」
俺はわざとらしく言った。
どうせ、弱い毒なんだから…そう思っていた。
「…あぁ。クルル、麻酔をしておいてくれ。
俺はペストマスクと手術道具を持ってくる。」
先生は何かを察したのかすぐに
手術道具を取りに行った。
「これより手術を開始する。」
「はい。」
「今回は特別な場合だ。切除はしない。」
「ただし神経の手術となる。油断するな。」
「分かりました。」
「電気メス」
俺が電気メスを渡すと、先生は慣れた手付きで
翼を切り開いた。すると神経が固まり
無惨な姿になっている
神経部分を細かく切り開いていく。
カチャカチャ…
「鉗子」
「了解」
鉗子で筋肉を切り左側の翼
右側の翼を交互に治療した。
筋肉も縮まってしまい、動かすことは
ほぼ不可能かと思われた。
「こいつは…難しいぞ…」
「筋肉も神経を縮んでしまっています…」
俺も先生も手が止まってしまった。
この状況の悲惨さを味わったのだ。
嫌な汗が出てくる。
もし失敗したら一生翼は動かない。
それに、脳に異常が出てくるだろう。
正直とても怖い。
だが、サーフィーの思いを考えたら
諦めるわけにはいかなかった。
「クルル。人工神経を使おう。」
「それって危険性が…」
「大丈夫だ。糸を切って繋げるだけさ。」
「人工神経」
「…はい」
0.5mm程度の神経を先生は
ルーペを使いながら縫合していく。
俺もすぐさま縫合糸を先生に渡す。
プツプツと先生は神経を切っては繋げ、
ときには切断しながら正常になるように
祈りながら手術をした。そして六時間ほど経った頃。
「術式成功。」
「…やっ…やった!」
「幸運だ。根本の神経だけだったからな。」
サーフィーに早く伝えたかった。
伝えたい気持ちで満ち溢れていた。
けど先生は何か心配らしい。
(…あれに毒は関係なかった。どういうことだ?)
(弱い毒でほとんど効き目がない。
だが神経が弱っている。)
先生は何かを考え、納得のいかない目をしていた。
俺はそんな先生を見てオドオドとしていた。