「クルル」
「ひぃ?!」
「どうした?」
「い、いえ。なんでもありません。」
「なら良い。お前に付いてきてほしい所がある。」
「良いですよ。お供します。」
俺は快く答えた。
先生に変に思われたくないからだ。
「なら…付いてこい。」
「はい。」
木の扉をゆっくり開いてコンクリートの道を進んだ。
しばらくすると大きな部屋の前で先生が立ち止まる。
「入れ。」
「分かりました。」
俺が扉を開けて中に入ると
先生も部屋の中に入って扉を閉めて鍵をかけた。
「気づいてたろ。」
先生がポツリと言う。
俺は慌てて言った。
「何のことでしょう?」
「…サーフィーの翼のことだ。」
「見ただろ。」
先生がこちらを横目で見ながら
部屋の机にある薬を取った。
「そして、この毒を打ったんじゃないか?」
サーフィーが渡してきた毒と同じ毒だった。
魔獣の体液らしい。
「…そうです。すみません。」
俺が頭を下げる。
「何故謝る?お前もサーフィーも悪くないだろ。」
「逆に手術できて良かったのだがな。」
「それより、ここに来た理由は他にある。」
「?」
そう言うと先生は無数に並べられた
小さな箱を開けた。するとそれは驚くものだった。
「…体の一部?」
俺が答えると先生は深く頷いた。
「左様。これは魔物の体の一部だ。」
「何でこんなものが?」
「俺が解体した。それで体の構造を調べ上げたんだ。」
「へぇ…大きな特徴は?」
「脳の構造が人間に等しいのと爪が鋭い。」
「これが大きな特徴だ。」
「凄いですね。人と同じ脳って。」
俺が感心して言うと先生が言った。
「それが恐ろしいのだ。」
「それに、これから俺らは
魔物と戦わないといけない。」
「え?」
「米国は安全だって言ったじゃないですか!」
「そう思ったが全国各地にいた。もう攻めてくる頃だ。」
「戦闘する準備でもしてろ。」
「急所は脳だからな。」
先生が言う。
戦闘なんて出来ない俺に何をしろっていうのだろうか?
立場的に俺はかなり役立たずだ。
「無理でしょ。絶対無理。」
「無理じゃない。はよ準備しろ。」
「ま、炎吹けば一発だが。」
「は?煽ってるんですか?」
「いいや。事実を言っただけだ。」
「かなりショックなんですが?」
先生に馬鹿にされた…。まぁいい。
今は戦闘に役立つ方法を考えなければ…
そんなことを考えていたら扉が開いた。
「魔物が来てるよ!」
サーフィーが扉を開いて大声で言った。
「起きたか?」
「起きたか?じゃないよ!魔物が入ってきてるの!」
「そうだな。戦うの手伝ってくれ。」
「何でそんなに冷静なの兄ちゃんは。」
「いつものことだろ。」
「先生、慣れてますね。」
「なんかクルル、諦めてない?」
「諦めました。」
「俺もやっと飛べるようになったのに…」
「頑張って飛べよ。」
俺は天を仰ぎながらサーフィーに言った。
そう。現実逃避しているのである。
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