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それから旦那が空色をディスる発言に腹を立ててしまい、ついおせっかいなことを言ってしまった。放っておけばいいのに……。
あとは音楽の話で盛り上がった。音楽好きとはなかなかいい趣味やん。聞けば好きなジャンルや知っているジャンルも好みに近い。空色とは好みが完全一致で嬉しくなる。
そしてRBに話が及んだ。
「新藤さん、RB――Red BLUEってご存知ですか? 私たち、めっちゃ好きなんです。もう六年くらい前に解散しちゃった、ビジュアル系のバンドですけれど」
「ええ。知っています」
俺はそのバンドのヴォーカルだった男や。
「最初、僕らがバンドを組んだ時、RBのコピーバンドをやっていました。懐かしいなぁ。彼女なんか未だにRBが好きで、ずっと聴いていますよ。車内は延々RBのリピートです」
空色……。今でもRBが好きなんや。
それを聞いて俺は嬉しくなり、思わず笑ってしまった。
空色は俺やRBを忘れていなかった――
「そうですか。RBがそんなにお好きとは」
どうしよう、めっちゃ嬉しい。空色が俺のことを忘れずにずっと好きでいてくれた――それを知ることができて、嬉しさがこみあげてくる。
だめだ。顔がニヤけてしまう。堪えるのに苦労した。
「はい、音楽は本当に大好きです。新藤さんも相当詳しいので、バンド経験あるのでは?」
「経験者に見えますか?」
空色が聞いてきたので、逆に質問で返した。
さあ、何て答えるのかな。RBが好きって聞いて若干ニヤけてしまったから、もしかしたら気が付かれたかも。
「失礼ですが、ご経験は無さそうに見えます」
空色の予想を裏切らない回答。そうやな。空色は俺の正体を見抜けるような、したたかな女じゃない。
「はい。私は聴き専です。演奏するより、聴く方が好きですから」
ただ、あまりの鈍感さに腹が立つ。俺のことずっと好きやったら、少しくらい気づいてほしい。じっと空色を見つめた。
「でも、新藤さん低くていい声しているから、歌ったらすごく人気出ると思いますよ」
「オンチなので、私は歌いません」
もうこの話はしたくないので自分からシャットアウトした。
空色に期待してもしょうがない。
「新藤さんでも苦手なことがあるのですね。完璧に色々こなせそうなのに、意外です。実は、夫もオンチなんですよ」
「コラ、バラすな」
胸中は複雑やったけど、三人で楽しく盛り上がった。
音楽好きな旦那もいい男や。俺にはない魅力がたっぷり溢れている男で、互いに信頼関係のあるいい夫婦だった。
またの機会があったら、互いに好きな海外アーティストのCD交換をすることになり、ライブハウスへも行く話にもなったし。
実現して欲しい半分、して欲しくない半分の会話と約束を交わし、空色夫婦と別れた。