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縁側に座り夜空に浮かぶ星々や雲を何も言わず眺めていた。

空間にヒトがフタリいるとは思えないほどの静けさ。聞こえるのはおそらくスズムシが鳴いているであろう音と風が葉をそっとなで木々がささやきあう優しい自然の音のみだ。

慣れない着流しを着付け、同じく着流しを纏う隣に座っているヒトに身を寄せる


「どうしたのイギリス。今日は随分甘えただね」


「別になんでもありません」


そんな素っ気ない返しに「そっか」と短く答えが返ってきた。けれど、その声の響きや表情にはどこか嬉しさが滲んでいるようだった

そのあと、フランスは嬉しさを誤魔化すように静かに夜空へと視線を戻した。


「それにしても日本ってば優しいよね」


「私たちが付き合ったと知ってすぐに温泉旅行のチケットを2枚も取ってきましたもんね」


あの行動力にはさすがに驚いたものだ。

そもそも、私たちが付き合ったなんて公言していない。本当にいつも彼の洞察力には感心する


「温泉も良かったよね。露天風呂での景色最高だったな〜」


「また明日も入れると考えるとテンションが上がりますね」


「ほんとにね!」


そんな話を続けていると、体が冷えてきてしまったのかくしゃみをしてしまう。


「ブレスユー。寒いの?」


「サンクス…若干寒いです」


私がそう言うとフランスは腰を浮かせ、ふっと私との距離を縮めてきた。

フランスの瞳には、外の綺麗な夜景が小さくゆれ、星々が輝いていた。普段なら文句をつけたくなるその澄んだ瞳も愛おしく見えた。瞳に映る 輝きをじっと見ていると、 フランスは割れ物を扱うような愛おしげな手つきでそっと抱きしめてきた。

フランスの方が長く温泉に浸かっていたからか、いつものハグよりも温かさがじんわりと染みてくる気がした。


私も気持ちに応えて背中に手を回すとフランスはふにゃりと顔を崩し笑った。

普段の私なら「何です、そのバカみたいな顔は。間抜け面」とでも言うだろうが今夜はそんな気分でもなかった。

どうやら、私はこんなフランスの表情に惚れてしまったらしいのです

抱きしめ合い、互いを見つめたままフランスが首を小さく傾げた。

その行動の意図を理解し、私はそっと瞼を閉じる。

まだ火照りの残る唇を静かに重ねた。

触れ合うだけの、柔らかな口付けだった。


我に返り私とフランスは共に頬を紅く染めた。フランスの瞳からそっと目を逸らし、再び夜空へと視線を戻す。雲は少し浮かんでいるものの、星座は十分に見える。

あの星座はペガスス座だろうか。あまり日本の星座について詳しくはないから自信はない


「…綺麗だね、星」


しばらくの静寂を切り裂いてフランスは言った。


「何百年も前も同じ会話しませんでした?」


「そうだっけ?」


「そうですよ」


まあ何百年も前のことなんて覚えている方が稀だ。それもただなんにも考えずボーッとフタリで夜空を見ただけのこと。

私も記憶力はいい方だと自負しているが正直他の記憶と混ざってる可能性もある。

ただ、記憶違いでなければあの夜も日本で言う秋の頃だった。

今日とは違い、喧嘩をした後に眺める夜空。

あの時はただの腐れ縁、恋仲でもなかった。

今日、私達はただの腐れ縁から腐れ縁の恋人 という関係性に進化してあの時の空を見上げている。日本とヨーロッパでは夜空の見え方は違うだろう。時代の関係もある。

だが、星は、地球は回っているのだ。


「あっ、流れ星だよ流れ星!」


「本当ですね」


「お願いごとお願いごと…!」


「ふふ、アホ面」


「はぁっ!?意味わかんないんだけど!」


「ふふっ、冗談ですよ」



なんでもない日常を、今もこれからも愛せますように

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