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ふと入ってみただけの店。
入口から見て左の棚の3段目。
たまたま視界に入ってしまったんだ。
なのに…「魅力的」という表現が1番似合う、そんなものを見つけてしまった。
仮にもしも…そんなスイッチが目の前に現れたのなら
_Q,アナタは押す?
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「たまには散歩も良いなぁ…」
なんて独り言をポツリ、漏らしてみる。
…今日は、久しぶりに外に出てみた。
家に居ると、某工場長ゲームに時間を溶かしてしまい、挙句の果てには体が凝り固まってしまっていた。
気分転換に外に出てみれば、意外にも楽しくて。
「…あっつ、」
額の汗を腕で拭う。
それにしても外は暑い。
夏ももう終わりかけ。
ヒグラシが街路樹にしがみついて必死に鳴いている。
「どっか涼しいとこ…」
「…あー、あそこでいいや」
見回して、偶然目に入った涼しそうな店。
飲食店ではなさそうで、周りが今どきのオシャレな店に比べ古風な外観である。
ひっそりと佇むその店に、おれは不思議と惹き付けられた。
(…骨董品店、?)
近づいて見れば、小さな字でそう扉に書かれていた。
木造のドアノブはひんやりとしていて。
それを引くと、一気に店内から出てきた冷気が自身の体を包み込む。
ちりんちりん、
ドアベルの鳴る音と共に、中に入って扉を静かに閉めた。
しん…
「いらっしゃいませー」
なんて声は聞こえてくるどころか、まず人の気配すらない。
いまだ揺れるベルの音がまるで場違いみたいだ。
…とりあえず、店内を見回して歩いてみることにした。
まぁその内店員さんが出てくるのかも知れない。
床と自分の靴の擦れる音だけが反響する。
(…なんか落ち着くとこだなぁ、)
それもそのはず。
鼻をかすめるのは木材特有の、あの匂い。
祖父母の家と似た感覚を彷彿とさせてくるからなのかな…と勝手に思っておく。
「…すご、」
店内を見回し、思わず声が漏れていた。
…はやり、さすが骨董品店といったところか。
どこに置くんだってくらい大きな壺や、珍しい形の陶器。壁掛けの綺麗な絵画から、見たことの無い植物が生けてある花瓶まで置いてある。
それが、ずらりと壁から天井まで置いてあるもんだから見飽きるなんて事はなくて…。
…でもさっきからおれが、ずっと商品を見ているというのに一向に店員が出てくる気配はない。
というか感じられなかった。
( …不気味、かも)
蒸し暑い外に比べて、妙に涼しいこの店。
汗がへんに乾いて背中が気持ち悪い。…そのせいか全身の毛が逆立っている。
壁掛けの鹿の頭の置物も、心做しかこっちを見て…。
「…ッ、」
こわい
突然、なんだか居た堪れない気分になって、おれは一刻も早くこの店から出たくなった。
そうして、さっきの入口まで早歩きで行く。
…はずだった。
「ぁ、」
そう、出会ってしまった。
途端に引きずり込まれるかのように、それから目を離せなくなる。
…スイッチ、、
そう。ただのスイッチ。
…柄もなく、ワンポイントすらついてない手のひらサイズの質素なデザイン。
でも商品札には人によって書かれた字が、でかでかと主張している。
『転生スイッチ⚠︎絶対押すな⚠︎』
きっと黒いペンで書かれた、元気のいい字。
でもソレには、どこを見ても値札は付いてない。
乱雑に置かれた雑貨の棚の中にぽつんと置かれてるだけ。
押しちゃダメなんて…そう言われたら押したくなるのが人間なのに。
(…だから、いいよね?)
だって”転生”なんてきっとただの売り文句なはずだから。
きっと何も起こらない。
そうしておれは、そっとソレに手を伸ばしてた。
店内を見回して誰も見ていないことをいい事に…ソレに触れる。
そして指に力をいれて__
カチッ
、、、
「…ほらなんにも起きないじゃん、笑」
「やっぱ嘘じゃーん…」
視界が歪む。
ぐらぁ
「、ぇ」
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『あーあ…押しちゃった、』