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運動会まで残り1週間、ここ3日めぐみがリレーの練習に顔を出さない。声をかけようとしてもどこかへ行ってしまうのだ。なぜ彼女が休んでいるのか誠は検討もつかない。
「なあ中山、お前勝原見なかったか?」
「ん、勝原?いや、見てねぇよ」
「そうか」
「でもなんで?」
「ココ最近練習来ねぇんだよあいつ」
「え、それやばくないか?」
「たまたま担当の先生が高松だったからよかったけど、他だったら終わってるよ」
夕方、委員会で誠はまた遅くなってしまっていた。
「あー、これじゃあ部活できないじゃねーか」
ガラン
「もぉ最悪だっつーの、うわぁ!」
「きゃああ!」
勢いよくドアを開けると、まさに帰ろうとしていためぐみとぶつかりそうになってしまいよろける。
「か、勝原、お前委員会か?」
「誠くん、うん、そうだよ、じゃあ」
そう言って帰ろうとしためぐみに誠が叫んだ。
「お前なんかあんだろ!」
「!!」
誠の鋭い言葉に思わず振り返る。
「なあ、言いたくないなら言わなくてもいいけどよ、なんか隠してねぇか?」
「….」
「そうか、いいよ、じゃあな」
「ま、待って!」
「あん?」
「話すわよ….」
「え、いいのか?」
予想外の言葉に思わず聞き返す。
「うん、誠くんにはあのこと知られてるし」
「あのこと?」
必死に頭の中で考えるが答えが分からない。
「実はね、私、リレー選手辞退しようかと思って」
「え、、それはまたどうして….」
「実は運動会の次の日、相撲の大会なの」
「え、、、」
「しかも日本一を決めるものだから簡単に負けられる大会でもないのよ….
もし運動会頑張れても、次の日の大会でヘマして負けるのは申し訳ないし….」
「….」
「じゃあ逆でいいかっていうとその場合は運動会の主催者に迷惑かけちゃうし….
だったらいっそ辞退した方が、いいかなって」
「あのさ」
「え?」
「俺はその両立の大変さが分からないからこんなこと思ったんだけど」
「うん」
「両方とも頑張ろうとは思わないのか?」
「り、両方?」
「運動会のリレーやその他もろもろと相撲、両方とも頑張れないのかって」
「何よその言い方….」
「悪気はない、でも俺だったら両方やる」
「誠くんにこの大変さはわからないわよ!」
「だから言ってんだろ、分からないって」
「それに、自主練もしなきゃいけないし」
「自主練….」
誠は自主練という言葉が嫌いだ、いや、実際にするのが苦手なのだ。でも、こんなこと簡単に言ってしまっているが実際に自分がなにかに対して頑張ったことはあるだろうか。努力したことはあるだろうか、いや、ない。
(自分を少し変えるきっかけにするのも悪くは無いか….)
(自主練の大変さがわかってないのよ、全くもう)
「俺も協力するよ」
「え?」
「自主練大変なんだろ、ちょうど体もなまってたしいい機会だ」
「だってリレーの練習に稽古もあるんだよ?」
「それは全部一人でか」
「うん、、」
「稽古は相手になるかわかんないけど、リレーの練習なら全然余裕だぞ。それに、1人だと寂しいんじゃないのか?」
「そ、そんな、悪いよ」
「俺は別に大丈夫なんだ、問題は勝原がいいかどうかだ」
「….」
「ほんとに、いいの?」
「当たり前だ、いいっつってんだろ?」
「じ、じゃあ、お願い….します」
「よし、じゃあ明日から早速練習しような」
「あの、今日はだめ?」
「え、今日からできるのか?」
「うん、だめかな….」
「いや大丈夫、やろうぜ!」
「うん!」
そして、バッグを持って帰ろうとするめぐみに
「勝原、頑張ろうな!」
と言いながらめぐみの手を握った。
「あ、うん!」
「じゃあな」
誠が教室を出ていった。めぐみは1人、教室で立っていた。誠に手を握られた時、微かにだが嬉しかった。
(私、もしかして….)
ドン!
音で我に返りその方を見てみると、野球のボールが転がっていた。
早速夜から練習が始まった。リレーの練習と相撲の稽古である。リレーの練習は誠と、相撲の練習は道場で行う。
「もう少し早くから走り始めていい」
「わかった!」
「いや、今のちょっと遅い」
「あーやっちゃった!」
「おいおい、バトン落とすのはいちばんまずいぞ」
「ごめんごめん!」
「じゃあもう1回!」
ひと通り練習すると誠と別れて道場へ行く。
「勝原、遅いぞ!」
「すみません、ちょっと用事があって」
「まあいいだろう、早く着替えてこい!」
「はい!」
直ぐに着替えて準備をする。
「コーチってああいうとこは優しいのよね」
「真優美ちゃん、遅くなってごめん!」
「大丈夫だって、練習大変なんでしょ?」
「え?」
「さっき道場行く時に見えたわよ、頑張ってね!」
「あ、うん!」
そして運動会まで2日になった時だ。誠とのリレーの練習を終えいつも通り道場へ行こうとすると
「今日は俺も行くよ途中まで」
「え、なんで?」
「近くのタバコ屋に用があってな、そこの」
「え、誠くんタバコ吸ってるの?!」
「バカ、んなわけないだろ!じいちゃんちだよじいちゃんち!」
「あ、なんだ〜」
「じいちゃんちに用があるから近くまで行ってやるよ」
「そ、そう?じゃあお願いします」
プルルルルルル
「はい、勝原です。あ、すみませんコーチ、今向かってるので」
どうやら通ってる道場のコーチと電話しているようだ。しかし、話すにつれめぐみの顔はどんどん青ざめていく。
「そ、そうですか….分かりました。お大事になさってください、では」
「どうした?」
「コーチ、階段で転んで足を靭帯損傷だって」
「マジかよ….」
「大会の日は行けるけど稽古は出来ないから道場も開けてないって」
「う….」
「どうしよ….あと2日しかないのに、まだ時間あると思って全然やることできてないのに」
「あーもう!」
「?!」
また怒られると思った。誠はこういう後回しにする行為は大嫌いなのを知っている、だからまた、、、
「なんでいっつもこう、、、いや、、わかったよ、俺が相手になってやる!」
「は?」
予想だにしない答えだった。
「え、相手って?」
「相撲のだよ、相手いないんだろ?」
「それは、まあね….」
いないことは無い、だが真優美を含む他全員は隣町の人達が多い。だから呼ぼうにも遠くて申し訳ないのだ。それに、せっかく提案してくれた案を無駄にするのも惜しい。稽古相手がいないのも事実。ならば、、、
「じゃあ、お願いしてもいい?」
「よしわかった、一応腕力には自信あるから任せろよ!」
「う、うん笑」
「そうと決まれば今日から早速練習だ!」
「え、今日から?!」
「そうだよ今日から!」
こうしてめぐみは誠と相撲の練習をすることとなった。