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#見捨てられた
リコりす@アナログタノピイ
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#shedletsky
ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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「…つまり、コード入りスパゲッティを食べた結果。」
静かな図書館に、冷たい声が響いた。
「胃の中でバグコードが暴れている、と。」
「そう。」
テラモンは壁によろよろとぶつかりながら歩いてくる。
「お腹の中が……ずっとバチバチしてる……。」
「自業自得だね。」
声の主は、半地下研究室の奥から現れた。
ギィ……。
床の古びた小さな扉が開く。
そこからひょこっと顔を出したのは、灰色の肌。
丸い頭。
緑色の胴体。
青い脚。
いかにも昔ながらのRobloxianらしい姿をしたその男は、大量の古書を抱えながら呆れたようにため息をつく。
古代コードや失われたデータを研究する学者、2x2だった。
「やあ、テラモン。」
2x2は穏やかに微笑む。
「そんなに騒ぐと、本の文字が驚いて逃げてしまうよ。」
その瞬間。
ドスッ。
「ぐわっ!?」
「……。」
2x2の丸い頭の上に、テラモンの足が乗った。
「……。」
「……。」
「テラモン。」
「はい。」
「僕の頭を踏む理由を聞こうか。」
「いや、違う。」
テラモンは慌てて足をどける。
「胃が痛くて目の前がぼやけて……階段かと思った。」
2x2は踏まれた頭を撫でながら、呆れたようにため息をつく。
「概念変換用のバグコードを食べれば当然だ。」
「お腹の中でコードが喧嘩してる。」
「するだろうね。」
「まだ『ERROR』って鳴ってる。」
「幻聴だ。」
横では1xが腕を組み、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「だから言ったんだ。」
「そんな怪しいもん食うなって。」
「でも触れたじゃん。」
「……。」
「嬉しかった。」
「うるさい。」
少しだけ顔を背ける。
照れているのが丸分かりだった。
「俺は無理やり連れてこられただけだからな。」
「そうだね。」
2x2は視線を1xへ向ける。
じっと観察する。
上から。
下まで。
「……。」
「……。」
「ふむ。」
2x2は目を細めた。
「興味深い。」
「何だ。」
「半透明の身体。」
「……。」
「浮かび上がる黒い骨格。」
「……。」
「神の力と負の感情が完全に融合している。」
1xが嫌そうに眉をひそめる。
「実験体として一回解剖──」
「殺すぞ丸頭!!」
ぼっ!!
黒緑の炎が勢いよく噴き上がる。
「冗談だよ。」
2x2は顔色一つ変えなかった。
「冗談に聞こえねぇ!」
「よく言われる。」
「直せ!」
テラモンは横で笑っている。
「ぷっ。」
「笑うな!」
「ごめん。」
「謝るな!」
「はい。」
「返事だけいい!」
騒がしい二人を見ながら、2x2は静かに本を閉じた。
「……それにしても。」
少しだけ声色が変わる。
「テラモン。」
「ん?」
「君は本当に危険なことをした。」
テラモンも笑うのをやめる。
「魂から感情だけを切り離す。」
2x2はゆっくり話し始めた。
「恐怖。」
「嫉妬。」
「執着。」
「憎悪。」
「本来、この世界に存在してはいけない情報だ。」
図書館は静まり返る。
「Robloxという世界は秩序で成り立っている。」
古い本を一冊取り出す。
「その秩序から外れた感情は。」
ページをめくる。
「ノイズになる。」
その一言に。
1xの身体がぴくりと震えた。
「……。」
赤い瞳がゆっくり伏せられる。
(やっぱり。)
(そうなんだ。)
(俺は。)
(いてはいけない。)
(世界のゴミ。)
小さく笑う。
「……分かってる。」
乾いた声だった。
「俺はノイズなんだろ。」
そのまま一歩後ろへ下がろうとして。
ぎゅっ。
「あ。」
テラモンが手を掴んだ。
「……。」
1xが目を見開く。
「テラモン?」
「関係ない。」
テラモンはいつもの調子で笑う。
「ノイズでも。」
「バグでも。」
「お前は俺から生まれた。」
そのまま指を絡める。
「俺の半身。」
「だから。」
照れもなく言い切った。
「俺のもの。」
「……。」
1xは固まった。
「Roblox様に見つかったら?」
テラモンは肩をすくめる。
「その時は。」
にかっと笑う。
「ダイナマイト投げて逃げる。」
「やめろ。」
2x2が即座に突っ込む。
「神が取る行動じゃない。」
「大丈夫大丈夫。」
「何も大丈夫じゃない。」
「バレなきゃセーフ。」
「犯罪者の発想だ。」
テラモンは笑い続ける。
その横で。
1xだけが何も言えなかった。
握られた手を見る。
温かい。
逃がさないように。
でも苦しくないくらい優しく。
(なんなんだ。)
胸の奥が熱い。
(俺を捨てたくせに。)
核が痛いほど脈打つ。
(いらないって。)
(切り離したくせに。)
それなのに。
どうして。
こんなにも大切そうに握るんだ。
(……嫌いだ。)
心の中で何度も繰り返す。
(大嫌いだ。)
そう言い聞かせないと。
泣きそうだった。
「さて。」
2x2は引き出しを開けた。
奥から一冊の本を取り出す。
メモや術式など、たくさんの紙が挟まれている。
「僕も最近。」
本を優しく撫でる。
「魂の分離。」
「悪魔。」
「呪術。」
「概念。」
「そういうものを研究していてね。」
「へぇ。」
テラモンが興味津々で覗き込む。
「タイトルは?」
2x2は少し考え。
静かに答えた。
「ネクロブロキコン。」
その名前が告げられた瞬間。
ゾクリ。
1xの全身を悪寒が走った。
「っ……!」
胸の骨が軋む。
ギリッ。
見えない何かが。
その本の奥から。
自分を見ている。
そんな感覚。
(何だ。)
ただの本なのに。
(怖い。)
ページをめくれば。
戻れなくなる。
そんな予感がした。
(近付きたくない。)
それなのに。
目を逸らせない。
底なしの闇が。
「……帰る。」
突然1xが呟いた。
「え?」
テラモンが振り向く。
「帰るぞ。」
袖をぐいっと引っ張る。
「もう?」
「今すぐ。」
「でも2x2のお茶──」
「飲むな!!」
珍しく本気で怒鳴った。
「危機感持て!」
「はい……。」
勢いに押され、テラモンも素直に頷く。
「じゃあまたね、2x2!」
「本が完成したら読ませて!」
「もちろん。」
2x2は静かに微笑んだ。
「君たちの記録も載せておくよ。」
「やった!」
「やってない。」
1xが即座に否定する。
図書館をあとにする二人。
帰り道。
テラモンは自然な調子で、また1xの手を握った。
「離せ。」
「やだ。」
「離せ。」
「やだ。」
「……。」
少しだけ抵抗して。
結局そのまま歩き出す。
そんな二人の背中を、図書館の窓から2x2は静かに見送っていた。
机の上には、一冊の本。
その表紙に黒い文字がゆっくりと浮かび上がる。
NECROBLOXICON
その本はまだ何も語らない。
だが、そこに記される未来は。
テラモンと1xの運命を。
そして世界そのものを、大きく狂わせていくことになる。