TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


レーボリッヒ村の村人達との宴会が終わったあと、俺とテオは広場に設営したテントで休むことにした。



就寝準備をしている最中に、ふっと思い出した俺が聞く。


「……なぁ、さっきのってどうやったんだ?」

「さっきの?」

「ほら、演奏中にパァッと辺りが光るやつ」

「あぁ! あれはね……」


テオが、先ほど奏でていた楽器――花柄の透かし模様が刻まれたリュート――をマジカルバッグから取り出す。



彼によれば、この『星屑のリュート』は、魔導具――素材に魔石を使い、魔力を籠めると魔術を発動できる道具――でもあるらしい。

以前たまたま通りがかった骨董品店で見つけて気に入り、少し高額ではあったが、数日迷った結果、思い切って購入したのだという。



テオに言われ、俺はリュートを鑑定してみた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

名前 星屑のリュート

種別 道具

売却目安価格 32100R(リドカ)


■説明■

弦楽器

辺りを神秘的な明かりで照らすことができる

火・水・風・土の上級魔石を使用した魔導具

【耐久加工LV3】

【防汚加工LV3】

【防水加工LV3】

【防燃加工LV3】


■神の一言メモ■

800年程前に作られたもんじゃが、まだまだ現役みたいじゃな。

むしろ作られたばかりの頃より良い音色が出るようになったようじゃの。

それにしても、さっきの演奏も良かったのう……ワシが「また聴きたい」と言ってたと、テオに伝えておいてほしいんじゃっ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



いや、そもそも『神様の一言が見える』なんて言えるわけないだろ。



心の中でツッコんだ俺は、メモは見なかったことにしてテオとの会話を再開する。

「……なるほど、楽器自体が明かりを出す魔導具になってるのか」

「そういうこと!」


いったんテントの中を照らす火の魔導具の明かりを弱め、最低限の明るさにしてから、テオは実演も交えつつ説明し始めた。


「さっきの演奏の時は、このリュートのヘッド部分に仕込んである『水の魔石』だけに魔力を籠めたんだっ。ほら、こんな風に」

テオがヘッド部分に触れて軽く魔力を籠めると、リュートから、ほんのり青く輝く光の粒10個ほど飛び出す。


「で、籠める魔力の量を少し増やすと――」

再びテオが魔力を籠めると、先ほどの何倍かの青い光が追加された。


「……ちなみに他の属性の魔石部分に魔力を籠めると、光の色が変わるんだぜっ」

「へぇー。やっぱり火だと赤、とかそういう感じ?」

「そう。風の魔石だと緑っぽい光になって、土の魔石だとオレンジっぽい光になるんだ。ちょっとやってみるぞ? まずは火、お次は風……」


テオがリュートへ触れるたび、様々な色に光る粒たちが、パッと散らばっていく。




気が付けばテント中には色とりどりの光がきらめき……座って天井を見上げると、そこはまるで、小さなプラネタリウムに来たみたいだった。


「すごいな……」


つい俺がもらした言葉を聞いて得意気になったテオは「よ~し、じゃあ今日は特別に……」と満面の笑みを浮かべ、大げさなポーズで思いっきり魔力を籠めた。


「いくぞ! 全属性、出力全開ッ!!」




――ビガァッ!!!!




「「⁉」」


目の前がベタッと白で塗りつぶされる程の、強烈なまぶしさ。


さすがにヤバいと本能的に感じたテオが即座に明かりを消すものの、奪われた俺達の視界はすぐには戻らず……。




何とか視力が回復するまでの数十秒、俺とテオはうずくまったままだった。






宴会の翌朝、名残惜しそうな顔をした村人達に見送られながら、俺とテオはレーボリッヒ村を発った。

しばらくは大きな事件も無く、街道沿いを順調に徒歩で進んでいく。




そして、村を出てから11日目の朝。



――ザアアアア……


「……雨だな」

「うん、雨だね……」



旅人の野営地に設営したテントで目覚めた俺達2人。

出発準備を終えテントから出ようとしたところ、目に飛び込んできたのは、降りしきる雨だった。


エイバス滞在中はずっと晴れの日が続いていたため、俺にとっては、このリバースという世界にやってきてから初めての雨。

そういえばゲーム内でも、トヴェッテ辺りではよく雨が降っていたなと思い出す。


空からまっすぐ落ちてくる雨は大粒で、途切れそうな気配が一切無い。

地面が砂利っぽいおかげか、ぬかるみそうにないのは幸いかもな。



俺が無言で入口を閉めた途端、テントに施された【防音加工LV5★】の効果で、スッと静けさが訪れた。



「……どうする?」

「ん~……」


腕組みをし考えを巡らせるテオ。

ややあって、1つの結論を出した。


「……なぁタクト。急ぐ旅でもないんだし、雨が落ち着くまでしばらく待つことにしない?

「別に待つのはいいんだけど……この雨、いつ止むんだろ?」

「たぶん割とすぐ止むんじゃないかな」

「え?」

「そろそろトヴェッテ王国が近いじゃん? トヴェッテの天気って、エイバスと違って凄く変わりやすいんだよねー。で、雨も結構多いんだけど、長く降り続けるなんてめったになくて、大体すぐに晴れちゃうんだっ」

「へぇ、そうなのか」



雨が落ち着くのを待つと決めた俺とテオは、しばらくテントでのんびり過ごす。





テオの言う通り、気付けば雨は止んでいた。


打って変わってカラッと晴れた昼下がり。

先程の雨の匂いの欠片も無い乾いた空気の中、俺達は歩き出すのだった。






雨を最初に見た日を境にして、街道周辺の景色がだいぶ変わった


それまで周りは森や山に囲まれていて、街道の両脇には背の高い木々が鬱蒼(うっそう)と茂っていることが多かった。

俺達が現在歩いているエリアはほとんど草原であり、木は所々にポツポツと生えている程度。


街道自体もそれまでの蛇行状態と違い、真っすぐ延びる一本道へと変化。




また、出現する魔物の種類もガラッと変わった。


少し前までは、土属性を持つゴブリン族や魔獣族――ワイルドラビット、ワイルドウルフなど――の魔物が中心だった。

現在よく出現するのは、水属性を持つスライム族の魔物である。



スライム族の魔物には物理攻撃が効きにくく、魔術での攻撃が有効となる。


周りに他の旅人がほぼ居なかったため、最初のうちは普通に俺の【光魔術】で倒していたのだが、トヴェッテ王国が近づいてくるにつれ人に見られるリスクは高まってしまう。

万が一【光魔術】を見られては、俺の正体が勇者だとバレかねない……ということで、しばらくスライムへの魔術攻撃はテオに任せようと決めた。




ちなみにテオに確認したところ、周りの景色や出現する魔物などが変わったのは、ゲームと同様エイバス周辺は『土の魔力』が豊富であり、トヴェッテ王国周辺は『水の魔力』が豊富な地域だから、という理由らしい。


魔物は体が魔力で出来ているため、元となった魔力の属性に、諸々影響される。


地形や天候については、土の魔力が豊富なエイバス周辺では土壌が豊かなため、

木々や作物が良く育つとのこと。

またトヴェッテ周辺に雨が良く降るのは、水の魔力の影響だとされているようだ。





村を出てから2週間後の昼前、俺達はトヴェッテ王国の王都に到着した。

ブレイブリバース~会社員3年目なゲーマー勇者は気ままに世界を救いたい

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

144

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚