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貴仁さんと正式なお付き合いをすることになったのを報告しようと、久しぶりに父を飲みに誘った。
ちょっと恥ずかしくて、素では言えそうになかったからなのだけれど、実際父と二人きりでお酒を飲むのも意外に照れくさかった。
「おまえと酒を飲むのは何年ぶりだろうな」
「何年ぶりって、そんな大げさな」
居酒屋のカウンター席に並んで座り、グラスビールで乾杯をする。
「いや、大げさなぐらいに、嬉しいってことだ」
「お父さんたら、もう……」
本当に嬉しそうに、若干顔を赤らめてそんな風にも言われたら、ますます照れくさくなりそうだった。
「……娘と酒を酌み交わすのはいいものだな。ここに母さんも居てくれたら、もっといいんだが」
父の呟きに、手にしたビールをごくっと飲み込んで、「うん……」と小さく頷く。
「今日の話はね……私もお母さんに聞いてもらいたかったかも」
そう口にすると、アルコールで緩んだ涙腺から、涙がちょっと零れ落ちそうにもなった。
「なんだ話って、改まって」
「うん、あのね……私、」
なかなか言い出せずに、グラスの残りを飲み干すと、手酌で自らビールを注いだ。
「お父さんは、おかわりは?」
瓶を携えて聞くと、父は「私はいい」と首を振って、「そんなに言いにくいことなのか?」と、心配げに眉をひそめた。
「う、ううんそうじゃなくて……だけどその、言いにくいのは、言いにくいかもっていうか……」
しどろもどろになる私に、「どうしたんだ、本当に」と、父がさらに眉根を寄せ心配を深める。
「ああーえっとね、いい話だから安心して!」
そう言って、父の気がかりを解くと、
「あの、貴仁さんと、お付き合いをすることになって……」
その流れで、思い切ってひと息に告白をした──。