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ミーンミンミン………
海水浴から2日後。
窓の外では、変わらず蝉の声が鳴り続けている。
渚の部屋
「……あっつ」
机に突っ伏しながら、渚がぼやく。
「渚……さっきから何回目?」
「知らなーい」
「もう十回は聞いた」
「だって暑いんだも〜ん」
だらけた空気が、部屋に広がっていた。
「こはるの部屋にすれば良かったぁ……」
「あはは〜…」
エアコンはついているはずなのに、
部屋はなかなか涼しくならない。
こはるもあまり暑いのが得意ではないため、机にぺたっと頬をつける。
少しでも冷たいところを探すように、顔を横にずらした。
ふと、視線を感じ、渚と目が合う。
「そう言えば……」
「紅葉とこはる」
2人を交互に見比べる渚。
「2人とも、めっちゃ顔赤いよ(笑)」
「日焼け止めの塗りが甘かった……」
「身体中ヒリヒリします………」
そう言いながら、腕をさする紅葉とこはる
「ちゃんと冷やした?」
「冷やしたけど」
「まだ痛いです……」
「これ塗る?」
そう言って起き上がり、小さなボトルを取り出した。
「なにそれ?」
「日焼け後のアフターローション。冷たくて気持ちいいよ」
「ちょっと借りていい…?」
「……私もお願いします」
そう言って2人が腕を差し出す。
「じっとしててね」
「ん」
「はい」
ボトルから液体を手に出し、よく馴染ませた後、2人の腕に同時に塗り込む。
ひんやりとした感触が、じわっと広がる。
「……お」
「……あ」
「どう?」
「ちょっといいかも……」
「……気持ちいいです」
「もっと早く言えばよかったのに」
「いや……別に我慢できなくはないし」
「……同じく」
「そこは我慢しないでよ(笑)」
そう言って渚は優しく微笑んだ。
「……ありがとうございます。」
「ありがと」
2人は小さく、頷いた。
⸻
「はいよっ!」
渚が小さなソフトクリームを2人に渡す。
「お、ありがと」
「……ありがとうございます!」
早速食べ始める3人。
「あ、そういえばさ」
アイスを口に含みながら渚が紅葉の方に身体を向ける。
「ん?」
「海の時の写真!紅葉結構撮ってたじゃん!」
「あ、そう言えばまだ送ってなかったね」
「送ってよ〜」
「あ、私も欲しいです!」
「ほい、グループラインに送るね」
そう言って、アイスを食べながらスマホを操作する紅葉。
ピロン♪
グループラインに、写真が送られた。
砂浜ではしゃぐ姿。
笑っている顔。
渚がスイカを一刀両断している瞬間。
埋められている陽向。
「うわ、これいいじゃん」
「私もこれはお気に入り」
紅葉の自撮り。
後ろではみんなが水を掛け合っている姿。
「……ほんとうに、楽しそう」
「実際楽しかったじゃん」
「……そうでしたね(笑)」
こはるは、小さく頷いた。
(……また、みんなで行きたいな)
(……でも――)
「………」
静かに画面の中の自分たちを、じっと見つめるこはる。
「また行きたいねー!」
「いいね、今度はもうちょい早く行こうよ」
「日焼け対策ちゃんとしないとね」
笑いながら、会話が続く。
「……」
こはるは、少しだけ遅れて頷く。
「……はい、そうですね。」
(……また)
(……その“また”は――)
小さく笑いながら、
こはるは言葉の続きを……
胸の中で、そっと止めた。
⸻
ピロン
「ん?」
もう一枚、写真が送られる。
「……そう言えばこれも送るの忘れてた」
修学旅行の時の写真。
眠っている、2人。
「あぁ〜…帰りの時のだ(笑)」
「そそ、2人で仲良く寝てたやつ」
「…いつのまに!?」
驚くこはる。
「2人していい顔してるでしょ(笑)」
「消してください!」
「え、嫌だよ面倒だし」
「も〜!!」
そう言いながら再度送られてきた写真を見るこはる。
(すごく、幸せそうな顔してる………)
真っ赤になりながら、何度も何度もその写真を見返していた。
⸻
その頃――
雪斗の家。
「……あっつ」
床に転がりながら陽向がぼやく。
「さっきからそれしか言ってないな」
「だって暑すぎでしょ…」
「……今エアコン入れたよ」
「ありがてぇ……」
ピロン
2人のスマホが同時に鳴る。
「ん?」
「なんだ?」
スマホを見る陽向。
「あぁ〜海行った時の写真か!紅葉があげてくれてる。」
「ほら見てみろよ」
そう言って陽向は雪斗にスマホの画面を見せてきた。
画面には、楽しそうにはしゃぐ姿。
「あ、ほんとだ。」
そう言いながら、自分のスマホを確認する雪斗。
「……お前がうまってるやつもあるな(笑)」
「いつの間に撮ってたんだよこれ……」
そんな話をしながら、ラインに上げられた写真を一枚ずつ確認している2人。
すると……
ピロン
「……あ」
もう一枚の写真が届く。
「修学旅行の時のやつじゃん」
「こんなの……いつの間に……」
「あまりにも仲睦まじい様子だったからな(笑)」
苦笑いする雪斗。
「……で?」
「ん?」
「実際どうなのよ」
「なにが?」
「こはるのこと」
「……」
少しだけ、間が空く。
「……別に」
「いや絶対なんかあるだろ」
「ないって」
「またまたぁ」
「ほんとだって」
視線を逸らす。
「ただ………」
「……なんていうか」
言葉を探す。
「……一緒にいると」
「落ち着くっていうか」
「……癒されるっていうか」
「……なんだろう。そばにいるのが当たり前みたいな?なんか変な感じというか。」
「ほ〜ん……」
ニヤリとしながら雪斗のことを見る陽向。
「だから、違うって!」
「……多分」
「どっちだよ(笑)」
「あぁ〜」
「ん?」
「あれに近いかも、ペットと一緒にいる感じ?」
「……は?」
「ほら、なんかこう」
「ほっとけないというか、見守りたくなるみたいな?」
「まぁ……確かにこはる小動物っぽいし……分からなくはないかもな(笑)」
笑う陽向。
それに釣られ少しだけ困ったように笑う雪斗。
「でもさ、それだけじゃないんだろ?」
「………」
「もう答えじゃね?」
「違うって…」
そう言いながら―
もう一度、スマホを見る。
画面の中。
静かに眠る、雪斗とこはる。
幸せそうに眠る2人の写真を、
そのまま、少しだけ見つめていた。
⸻
帰り道。
暑さも少しだけ和らぎ、
夕方の風が、心地よく頬を撫でていった。
「……」
こはるは、ふと空を見上げる。
空には、うっすらと輝き始める三日月。
立ち止まってその月を眺める。
「……あっという間だな」
そう呟いたこはるの表情。
それは――
あの月だけが知っていた。
#無課金
#どなたでもOK!ウェルカム!