テラーノベル
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夏の終わり。
少しだけ涼しくなった風が吹き始めた頃。
施設では、小さな花火大会が開かれることになった。
「今年最後の夏の思い出だね。」
先生の言葉に、子どもたちは大喜びだった。
「花火するの!?」
「いつ!?」
「早く夜にならないかな!」
その様子を見ながら、愁斗は笑っていた。
こんな風に。
何気ない毎日を過ごせることが、嬉しかった。
夕方。
花火の準備が始まる。
子どもたちは飾り付け。
先生たちは机や椅子を並べる。
ひでも手伝いに来ていた。
「ひで兄、それ持って!」
「こっちも!」
『俺、大人気じゃん。』
「違う。」
愁斗が笑う。
「使いやすいだけ。」
『ひどいな。』
その会話に、周りの子どもたちも笑った。
愁斗はその光景を見ながら思った。
前なら。
こんな時間が来るなんて思わなかった。
でも。
体はまだ完全には戻っていなかった。
飾り付けをして。
子どもたちと走り回って。
気づけば少し息が上がっていた。
立ち上がった瞬間。
視界が一瞬揺れる。
「……。」
壁に手をつく。
誰にも見られていないと思った。
でも。
『愁斗。』
振り向く。
ひでが立っていた。
「……見てた?」
『見てた。』
「大丈夫。」
言った瞬間。
自分で気づく。
また言った。
ひでが少し笑う。
『今、禁止ワード出た。』
愁斗も苦笑する。
「……ごめん。」
『謝るのも禁止。』
「難しいな。」
『じゃあ、言い直し。』
少し間を置いて。
愁斗は小さく息を吐いた。
「……少し休む。」
『うん。』
『それでいい。』
二人でベンチに座る。
数分休むと、また戻ることができた。
夜。
花火大会が始まった。
小さな手持ち花火。
子どもたちの楽しそうな声。
夜空に広がる火花。
「きれーい!」
「見て見て!」
笑顔がいっぱいだった。
愁斗も笑っていた。
その時。
風向きが変わった。
花火の煙が、一気にこちらへ流れてくる。
「……っ。」
愁斗の表情が変わる。
煙を吸い込んでしまい、咳が出た。
「げほっ……げほっ……。」
『愁斗。』
ひでがすぐに気づく。
「大丈夫……。」
でも、声が少し苦しそうだった。
『こっち。』
ひでは周りに聞こえないよう、そっと声をかける。
『少し中入ろう。』
「でも……。」
『花火は逃げない。』
『今は愁斗が先。』
その言葉に、愁斗は素直についていった。
部屋に戻る。
窓を少し開ける。
静かな空間。
外からは、子どもたちの楽しそうな声と花火の音が聞こえていた。
愁斗は椅子に座り、ゆっくり呼吸を整える。
『落ち着いた?』
「……うん。」
『苦しかったら言えよ。』
「分かってる。」
少し間が空く。
「……言えるようになった。」
『え?』
「前だったら。」
「絶対、大丈夫って言ってた。」
ひでは笑う。
『知ってる。』
「でも今は。」
「少し苦しいって言える。」
ひでは頷いた。
『それ、すごいことだよ。』
愁斗は少し照れたように笑う。
「ひでくんが言ったから。」
『俺?』
「苦しい時は苦しいって言えって。」
『……そっか。』
二人の間に、優しい沈黙が流れる。
しばらくすると。
外から大きな歓声が聞こえた。
最後の花火が上がったらしい。
「終わったかな。」
『見に行く?』
愁斗は少し迷う。
前なら、無理をしてでも行った。
でも。
「……今日はここからでいい。」
『え?』
「音、聞こえるから。」
「それに。」
少し笑う。
「今、休む時間も大事だから。」
ひでは嬉しそうに笑った。
『成長したな。』
「子ども扱い。」
『褒めてる。』
二人で笑う。
花火が終わり。
子どもたちも眠そうになった頃。
先生が声をかけた。
「ひでくん。」
「今日はもう遅いし、泊まっていく?」
「え?いいんですか??」
「え!泊まるの!やったー!!!」
「お兄ちゃんが2人もいるー!!!」
『……(安心,するな…)』
『……(泊まって欲しい…)』
「愁斗…?」
『え、?あ…』
「俺泊まっていい、、?」
『………嬉しい…』
「…素直になったな 」
『なんだよそれ。』
こうしてひでは、泊まることになった
コメント
1件
愁斗が「大丈夫」って言いかけて、自分で気づいて「少し休む」と言い直したところ、めっちゃ刺さったわ。前は絶対に言えなかった「苦しい」をひでに伝えられるようになったの、確かにすごい成長だよ。最後の「今、休む時間も大事だから」ってセリフ、愁斗のペースで生きる覚悟が感じられた。ひでが泊まることになって、嬉しそうな愁斗の反応も可愛すぎた。この関係性、ずっと見ていたい。
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