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#シリアス
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「パパ、あのね…今度、授業参観があるの。……パパ、来てくれる?」
ひまりが、教科書を胸に抱えながら上目遣いで聞いてきた。
俺は一瞬、肩の傷がズキッと痛んだ気がしたが、即座に頷いた。
「当たり前や。パパが一番前で、誰よりもデカい拍手したるわ」
「あ、拍手はしなくていいんだよ?静かに見てるだけなの」
ひまりに苦笑いされ、俺は「……そうか」と眼鏡を直した。
当日。
俺は、和幸に三時間かけてブラッシングさせた漆黒のスーツに身を包み、小学校の廊下に立った。
他の保護者たちが「あ、あの委員長さんよ……」「今日は一段と気合が入ってるわね……」とヒソヒソ囁きおるが
俺の目は教室の三列目、一生懸命にノートを取るひまりの背中一点に集中しとった。
国語の授業が始まった。
テーマは「私の宝物」についての発表らしい。
子供たちが次々と、おもちゃやペットの話をしていく中、ついにひまりの番が来た。
「……私の宝物は、パパです」
ひまりが教壇に立ち、ハッキリとした声でそう言った瞬間、教室中の視線が俺に突き刺さった。
俺は石像のように動かず、だが心臓はドラム缶を叩くような音を立てとった。
「パパは、ちょっと見た目が怖くて、お仕事も大変そうだけど、とっても優しいです。私が寂しいときはいつも手を握ってくれるし、お料理も頑張ってくれます。……この世にひとりだけのパパです」
ひまりが作文を読み終え、俺の方を見て、はにかむように笑った。
その瞬間、俺の視界が歪んだ。
極道として生きてきて、人から「宝物」だなんて言われる日が来るとは、夢にも思わんかった。
「……ッ」
俺は溢れそうになるもんを堪えるために、わざとらしく天井を仰ぎ、鼻の頭を強く擦った。
横にいた佐藤さんが、そっと俺の肩に手を置き、「……いい娘さんですね」と囁いてきおった。
◆◇◆◇
授業が終わり、帰り道
校門を出たところで、ひまりが俺の大きな手をぎゅっと握りしめた。
「パパ、かっこよかったよ!ずっと背筋がピーンって伸びてて!」
「…褒めるのはひまりの方やろ?ひまりの作文も百点満点や」
俺は、ひまりをひょいと抱き上げた。
ひまりの夢は、医者
この汚れた手で育てた子が、人を救う光になろうとしとる。
その未来を守るためなら、俺はどんな泥を被っても、どんな十字架を背負っても構わん。
「パパ、今日の夜ごはんは、またあのカレーがいいな!」
「…またかいな?好きやなぁ…ほな今度は、もっと野菜を細かく刻んで、世界一のやつ作ったるわ」