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ファッキングワールド。どうも、シャーリィ=アーキハクトです。

犠牲者が出ているのを感じながら、それでも確実に数を減らし続けた結果群れの殲滅に見通しが立ち始めた頃、そいつは現れました。

優に八メートルを越える巨大な赤い熊。通称ブラッディベアです。血染めの名の通り、その体毛はまるで血のように真っ赤なのです。

巨大で頑強な身体、鉄を砕くと言われる顎と牙。

岩を投げ飛ばすと言われる腕力を持つ前足と鋭い爪。

巨体に似合わぬ俊敏な動きを実現して見せる強靭な後ろ足。

ブラッディベアに町が滅ぼされたなんて記録はいくつもあります。もし出現すれば腕利きの冒険者多数と軍の精鋭をぶつけて対処するような存在。何でそんなのが私の前に現れるのか?

「こいつが群れの主か!」

ベルの叫びに私は納得をしてしまいます。要はコイツがアーマーリザードやアーマードボアを『ロウェルの森』から追い立ててこの惨劇を引き起こしたと。つまり、今回の件の黒幕ですね。

「怯むな!巨大な熊など恐れるに足らん!」

「あっ!待って!」

近くに居た士官が皆を奮い立たせて、小隊がブラッディベアに向けて攻撃を開始しました。

私は慌てて止めに入りましたが、全てが遅すぎました。

ガァアアッッ!!!!

ブラッディベアは銃弾をものともせずに、その巨体に似合わない素早さで大地を駆け抜け、その強靭な前足を振るいました。

「なっ!?」

次の瞬間、強烈な腕力と鋭い爪による一撃を受けた小隊十二名は、悲鳴を挙げる暇もなくバラバラにされながら吹き飛ばされました。

周囲に彼等の身体のパーツや血液が雨のように降り注ぎ。

グォオオオオオッッッッ!!!

ブラッディベアはまるで勝ち誇るように雄叫びを挙げたのです。

私は目の前で起きた惨劇を見て唖然とし、そして怒りが湧くのを感じました。コイツを野放しにしたら被害が増える!

「ブラッディベアへの手出しは無用!掃討戦を継続!コイツは私が相手をします!」

「お嬢様!?」

マクベスさんの悲鳴が聞こえましたが、私は勇者の剣を強く握り、足に力を込めて一気に駆け出しました。コイツの注意を引き付けないと。

魔力を剣に循環させてっ!

「サンダー・レイ!!」

柄から放出された電撃を浴びせてやります。しかしブラッディベアは堪えた様子もなく、ゆっくりと此方を振り向きました。

グルルッ!!

牙を剥き出しにして私を睨み付けます。そうです、私が貴方の敵ですよ。

「輝けぇ!!!」

私が光の刃を出現させると……ん。

怯んだ?一歩だけブラッディベアが後退り、明らかに警戒心を高めたのを感じました。これは…。

「なるほど、貴方は賢いみたいですね?これが何なのかちゃんと理解しているみたいですね?」

生き物としての本能か、それと経験があるのか。どちらにせよこれでブラッディベアは私を警戒してくれた筈。他に目を向ける心配はありませんね。

グルルッ!!

「貴方の相手は私ですよ、大きな熊さん。私に背を向けたら後ろから刺してしまうかもしれませんよ?」

私は勇者の剣を正眼に構え、挑発します。

グァアアッ!!

ブラッディベアは私の挑発を理解したのか、吠えながらその巨体に闘志を滾らせています。よしよし。

「無茶をするよなぁ!お嬢は!」

駆け付けたベルが私の前に立ちながら大剣をブラッディベアへ向けながらぼやきました。

「あの個体を仕留めるには、これしかありません」

奴は至近距離からの銃撃を受け付けなかった。確実な有効打を与えるならば私か魔法が得意なレイミだけ。でもレイミは疲労困憊。ならば私がやるしかない。

「選択肢としては正しいんだろうな!お嬢、好きにやれ。俺が盾になる!」

痺れを切らしたのか、ブラッディベアはその強靭な足で大地を踏み締めながら此方へと迫ってきました。

「では背中を任せます!無理だけはしないでください!ブースト!」

私は魔力を自分の身体に巡らせて身体強化の魔法を自分にかけました。とは言えまだ学び始めたばかりで、初歩的なものしか使えないのが難点ですが。

「やぁああああっ!!」

身体能力を強化して一気に踏み込むと、私が踏んでいた地面が少しだけ凹みました。思ったよりも強化されている様子!

ガァアアッッ!!!!

強い殺気を感じて私は踏み込んだ姿勢のまま飛び上がります。今私が居た空間を鋭い爪を持つ前足が通過しました。危なっ!?

「お嬢!!」

飛び上がったため一瞬無防備なりましたが、ベルがブラッディベアの後ろ足を切りつけて時間を稼いでくれました。と言うか、まるで鉄板に打ち付けたような音がしましたね。

「野郎!なんて固さだ!」

「たぁあああっ!!」

私は落下速度を活かしてそのまま魔法剣を振り降ろしました。ですが刃が届く時には既にブラッディベアの姿はなく、脚力を活かして一気に後ろへ飛び退いていました。

「あの見た目で身軽なのか!?」

「身軽なら当たるまで攻撃するだけです!」

「だな!」

着地した私とベルは同時に駆け出しました。

「こいよ熊野郎!」

ベルが敢えて大声を出しながら挑発。ですがブラッディベアはそれに乗らずただ真っ直ぐに私を見つめていました。そして後ろ足を踏ん張り、その巨体で二足歩行に……わぁ、おっきい。

山のような巨体を見上げて、その強靭な前足が振るわれるのを見て私は咄嗟に勇者の剣を後ろへ向けた。

「ウインド!!っ!!」

途端に強烈な風が柄から吹き出して私の身体を押し出し、ブラッディベアの一撃は大地を文字通り抉り取りました。直撃なんか受けたら一発であの世へ招待されますね!これは!

私はそのまま足元へ……影を感じて右へ飛び退くと、後ろ足が私の居た場所を踏み抜きました。危なっ!?

「お嬢!」

直ぐにベルが一撃を加えたので追撃はありませんでしたが、とにかくあの凶悪な前足をどうにかしなければいけません。しかし今のブラッディベアは二足歩行。あの高さにはどうやっても届かない。

いや、手段はある!

「ベル!一瞬だけで構いません!奴の動きを封じてください!」

「任せろ!」

私はいつも持ち歩いている『飛空石』の欠片に魔力を流し込み、活性化させます。そうすると身体が羽根のように軽くなるのですが、これだけではダメ!

「ブースト!ブースト!ブースト!」

私は身体強化魔法を自分自身に重ね掛けしていきます。初歩の魔法ではありますが、重ねることで効果を増す。サリアさんの教えです。マスターからは推奨しないと言われてしまいましたが、今は非常時!

私が準備していると、ベル目掛けて前足が振るわれました。

「うぉっ!らぁああっ!!」

ベルは左へ身体を滑らせながら迫り来る鋭い爪に向けて大剣を振るい……凄い!受け流した!?

ベルは大きく後ろへ後退りましたが、それでも受け流されてブラッディベアも姿勢を崩しました!今しかない!

「やぁっ!!」

私は重ね掛けした魔力を全て足に収束し、満身の力を込めてジャンプ!更に魔法剣を下に向けて!

「ウインド!」

柄から吹き出した突風により更に加速!『飛空石』の影響を受けている私に重力は影響を与えない!つまり、減速すること無く加速し続ける!

ベルに受け流されてよろめいたブラッディベアの右前足を目掛けて一気に加速!

「輝けぇ!!!」

そして光の刃を加速した勢いを乗せて右下段から左上段へ向けて振り抜くと。

ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッッッ!!!!!!!!!!!!!

狙い通り光の刃はブラッディベアの右前足を斬り付け、斬った先から光の粒となって消えていく。

……流石に強力な魔物相手だと一撃とはいきませんか。

「ウインド!」

私は真上に風を放ち急ブレーキ。空中に留まりながら右前足を失い悲鳴を挙げるブラッディベアを見下ろすのでした。さあ、反撃です!

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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