テラーノベル
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また数日後。朋菜はいつも通り畑仕事をする。
その時、松前が畑の様子を見に来た。
「朋菜様、まだそのような道具を使っておられるのですか?」
「…悪いの」
「いえ。他にも便利な道具があると伝えようとしただけです」
「え!?」
すると松前は、朋菜を畑の裏に連れて行った。
「何これ?」
「農業の道具です。左から順番に、備中鍬、唐箕、千石通し、千歯扱、踏車です」
「どうやって使うの?」
「備中鍬は深く耕す時、唐箕と千石通しは米と籾の選別時、千歯扱は脱殻時、踏車は潅漑時に使うものです」
「1回使ってみてもいい?」
「よろしいですよ」
朋菜は備中鍬で畑を耕し、唐箕と千石通しで米だけを取り出し、千歯扱で脱殻させる。それは今までの作業より楽で簡単だった。これからの農業も、この道具に頼りたいと思うほどだ。
「これ…かなり便利なんだけど」
「でしょう?これを使って庶民たちは農業効率を上げ、より多くの収穫を得ることができたんです」
「すごーい」
「他にも、諸産業の発達も進んでいるんです」
「例えば?」
「例えば、家などの建物では木造建築が主流になり、大量の木材が必要になったことから、林業が盛んになったんです」
「だから、この家も木でできているのか」
「今頃気づいたのですか、朋菜様」
数分後、町で商売をしている人を見つけた。
「あれは何を売ってるの?」
「地方の特産品ですよ。織物では、京都西陣で高機を用いた高級絹織物を生産したり、朝鮮から普及した綿織物を販売したり、奈良晒や越後縮などの麻織物も売ってるんです。後、陶磁器や醸造なども販売したんですよ」
…聞かなきゃよかった。やはり自分で見る方が早かったか。
「でも、生産してからここで売るまでは、どのルートで輸入するの?」
すぐさま松前が答える。
「まず、陸上を渡っての輸入では百姓が伝馬役や助郷役を負担して江戸の日本橋を起点として五街道を通っていました。一方の水上交通では、京都商人である角倉了以は河川から、江戸商人である河村瑞賢が海上と通っておりました」
「…大体わかった気がする」
もしかすると松前は、ここの分野が得意なのかもしれない。
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