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俺らは地方で生まれた。
それぞれ別の場所だった。
地獄のような夏を耐え、活動期間である冬に活発に行動をし。
自由だった。それまでは。
しかしどんどん仲間が死んでいく。
人間が大きな建物を建てて行くまでは仲間と雪の中を駆け回れるくらいだった。
俺らは逃げ回り、必死に生きてきた。
そんな中で出会ったのが若井。
今にも死にそうになっていた若井を俺がなんとか助けた。
この不自由な体では大変だった。
自分勝手でどんどん進めていく、 あの憎い人間のように、動けたら。
そう毎日願っていた。
するとある日俺は姿を変えられるようになっていた。
耳と尻尾は隠せないが自由に動ける。
ものも動かせる。
そんな姿で若井に触れたら若井も使いこなせるようになっていった。
それが今の俺たち。
決して人間と共存したいとは思わない。心から嫌いだから。
しかし目の前にいる彼は違うようだ。
安易に動物を殺す人間と違い、 優しく声をかけ、手当をしてくれた。
そして人間から守ってくれた。
彼の話を聞き、境遇は違えど俺らと同じかもしれない。
そう思って彼に頼んだのだ。
俺はりょうかにこの話をした。
「そっか。頑張ったんだ。」
とりょうかは泣きそうになっていた。
俺はどうしてこんな人が不幸にあっているのか。それしか考えられなかった。
若井はまだ揺らいでいる。
それもそうだ。りょうかの見た目は人間。
そう簡単に信じられないだろう。
俺らは人間に殺されかけた。
その事実は変えることができない。
この先も安易に優しくされ、安易に信じた人間に手のひら返しにされるかもしれない。
でも俺はりょうかは違うと確信している。
人間じゃないと言っているからか。
何故か、それは分からない。
本能というのか。勘というのか。
「りょうか。俺らと一緒に過ごそう。」
俺はそう口にしていた。
「んー……。そういえば、ご飯とかお風呂とかどうするの?」
りょうかは俺らを家に入れてくれた。
家賃安くて広い田舎でよかった〜と言っていた。
確かに広いと思う。人間の部屋なんて見たことがないから分からないが。
「人型に戻る?狐で食べるのかな?人間のご飯って狐だと体に影響あるんじゃ……?うーん歯磨きとかは……?お風呂も嫌いだよね……?」
と次々に質問をしてきた。
人間の姿になっている期間もあった。ちょっとくらいは知っている。
「りょうかと過ごしたいから、なるべく人間でいる。全部、真似する。ご飯は人間の食べても平気だった。そうするしかなかったし。」
俺はりょうかの質問に答えた。
「そっか、じゃあ買い出しだ。俺行ってくるね。」
そう言うが「連れてって。」とお願いした。
若井には「はぁ!?」と言われる。
「人間の所に行くんだぞ!?」と。
そう。だから外に行きたいのだ。
人間が嫌いだからあえて。
バレなければ殺されはしない。今は耳と尻尾以外は人間の姿。共存はしたくないが
りょうかとはしたい。そう思ったのだ。
「まぁ、全部仕舞えば確かに人間だけど……危険すぎるよ。俺が必要なものあればその都度行くから。ふたりで待ってて。」
りょうかはどこまでも優しい。
若井もそれに気付いてはいる。ただ素直になれないだけ。
「お願い。1回だけでもいいから。」
そう押してりょうかを無理矢理了承させた。
「俺のがでかくて良かった……。分かってはいると思うけど帽子は絶対取っちゃダメだよ。」
りょうかに深めの帽子を被せてもらった。
若井も耳に来るのが嫌なのかソワソワしている。
尻尾は今の格好に普通に収まっていた。
「絶対離れちゃダメだよ2人とも。」
りょうかはそう俺らに言った。
なんとか俺らの分の買い物を済ませた。
案外普通だ。そりゃ見た目は人間だから。
「ドキドキした……。」
と若井が疲れた顔で言った。
「ごめんね……。疲れたね。」
とりょうかが言う。
俺のわがままなのに何故かりょうかが謝っている。
どこまでこの人はお人好しなのだろうか。
「あんたのせいじゃないだろ。元貴が悪い。」
若井が俺を見てそう言った。
それはそう。
「でも、俺、りょうかと若井と一緒にいたい。」
俺は素直に言う。
若井も満更では無さそう。
りょうかは優しく微笑んでいた。
何故かその姿に目が離せなくなっている自分がいた。