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それから、また歩き出した。さっきまでと同じ道のはずなのに、景色が少し違って見えた。
「……あの」
沈黙を破ったのは、千代。
「翔さんは、元の時代に……戻りたい、ですか」
不意を突かれて、すぐには答えられなかった。
戻りたいか、と聞かれても、正直、考える余裕すらなかったからだ。
「……分かんない」
しばらくして、そう答えた。
「戻れるなら、戻らなきゃいけない気もする。でも、」
言葉が途中で止まる。
「でも?」
「今は、どうしたらいいのかも分からない」
千代は小さくうなずいた。
「そうですよね」
否定も、決めつけもなかった。
少し歩いた先で、鐘の音がまた聞こえた。
朝よりも遠く、低く響く音。
「この音……さっきも鳴ってましたよね」
俺が言うと、千代は空を見上げた。
「はい。この町の鐘です」
「よく鳴るんだ」
「ええ。時間を知らせる音でもありますし……」
そこで、少し言葉を切る。
「迷っている人に、気づかせる音だとも言われています」
「迷ってる人?」
「はい。昔から、そういう言い伝えがあるんです」
俺は無意識に、その音に耳を澄ませた。
まるで、自分のことを言われているみたいだった。
「……千代はさ」
「はい?」
「さっき言ってたよね。勘、だって」
「ええ」
「その勘って……よく当たるの?」
千代は少し考えてから、首をかしげた。
「どうでしょう。でも……」
そして、控えめに笑う。
「外れたと思ったことは、あまりありません」
その言葉が、妙に心に残った。
「だから」
千代は前を向いたまま、続ける。
「しばらくは、この町で過ごしましょう」
「しばらく?」
「はい。答えが出るまで」
歩幅を合わせながら、彼女は言う。それから、また歩き出した。
さっきまでと同じ道のはずなのに、景色が少し違って見えた。
「……あの」
沈黙を破ったのは、千代だった。
「翔さんは、元の時代に……戻りたい、ですか」
不意を突かれて、すぐには答えられなかった。
戻りたいか、と聞かれても、正直、考える余裕すらなかったからだ。
「……分からない」
しばらくして、そう答えた。
「戻れるなら、戻らなきゃいけない気もする。でも……」
言葉が途中で止まる。
「でも?」
「今は、どうしたらいいのかも分からない」
千代は小さくうなずいた。
「そうですよね」
否定も、決めつけもなかった。
少し歩いた先で、鐘の音がまた聞こえた。
朝よりも遠く、低く響く音。
「この音……さっきも鳴ってましたよね」
俺が言うと、千代は空を見上げた。
「はい。この町の鐘です」
「よく鳴るんだ」
「ええ。時間を知らせる音でもありますし……」
そこで、少し言葉を切る。
「迷っている人に、気づかせる音だとも言われています」
「迷ってる人?」
「はい。昔から、そういう言い伝えがあるんです」
俺は無意識に、その音に耳を澄ませた。
まるで、自分のことを言われているみたいだった。
「……千代はさ」
「はい?」
「さっき言ってたよね。勘、だって」
「ええ」
「その勘って……よく当たるの?」
千代は少し考えてから、首をかしげた。
「どうでしょう。でも……」
そして、控えめに笑う。
「外れたと思ったことは、あまりありません」
その言葉が、妙に心に残った。
「だから」
千代は前を向いたまま、続ける。
「しばらくは、この町で過ごしましょう」
「しばらく?」
「はい。答えが出るまで」
歩幅を合わせながら、彼女は言う。
「大丈夫です。ここには、時間がありますから」
時間がある。
その言葉を聞いて、胸の奥が静かにざわついた。
未来の約束。
過去の世界。
そして、今。
——俺は、どこに向かえばいいんだろう。
答えはまだ分からない。
でも、隣には千代がいる。
それだけで、足を止めずにいられた。
「大丈夫です。ここには、時間がありますから」
時間がある。
その言葉を聞いて、胸の奥が静かにざわついた。
未来の約束。
過去の世界。
そして、今。
——俺は、どこに向かえばいいんだろう。
答えは分からない。
でも、隣には千代がいる。
それだけで、足を止めずにいられた。