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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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「もともと蘭子さんとは知り合いで……。姉ちゃんがたまたま相談したら、俺の事情を理解した上でSTARに誘ってくれた。他者とコミュニケーションを取るのが苦手な俺が接客業なんてできるか?って思った。STARには、本当に同性が好きな人とか、同性と付き合っている人とかもいて……。偏見とか気にしないで自分らしく働いている人たちがいて……。ただただ凄いなって思った。最初は、ボーイみたいな感じでお酒とか運んでいるだけだったけど、蘭子さんが俺の容姿を活かして、働いている間はオネエとして演じることを提案してくれたんだ。そしたら女の子に絡まれること少なくなるし……。椿として働くことで、トラウマを少しずつ克服していったつもりだったけど。昨日、たまたま同級生がお客さんで来て。当時のことを思い出したら、動悸がして具合が悪くなった。さっきも当時のことが、夢に出てきてフラッシュバックして。桜に迷惑かけた。まだまだ自分は弱いなって思ってる」


蒼さんから過去について教えてもらえて良かった。


「迷惑だなんて……。そんなこと、全然思ってないです!それに私は遥さんと蘭子ママさんのように、蒼さんの味方です!蒼さんに酷いことする人、許せません。私は、遥さんと蒼さんがいなかったら、どうなっていたかわかりません。だから今度は私が蒼さんのこと守ります!!蒼さんを虐める人なんて、やっつけてやりますよ!」


蒼さんを傷つける人なんて許せない。


蒼さんは驚いたような顔をしていたが、ハハっと笑って

「ありがとう。女の子に守ってもらったことなんてないからな。なんて言って良いかわからないけど。桜が今一緒に居てくれるだけで、本当に助かってるから」


よしよしと頭を撫でられる。


「蒼さんの番犬になりますので!」

私の発言を聞いて、彼はまたハハっと笑ってくれた。


次の日――。


「そう、そんなことがあったんだね。蘭子ママから連絡があったから家に行こうと思ったけど。何かあったら桜が連絡くれると思って甘えちゃった。ありがとうね、蒼のこと見守ってくれて?」


お昼休み、遥さんとラウンジでご飯を食べていた。

人が少なかったから私のこと、桜って名前で呼んでくれた。


「蒼さんの過去、私も知ることができて良かったです。私で良ければ何か力になりたいです。蒼さんにはいつも元気にしてもらっているので」


「桜が居てくれるだけでかなり癒しになっているみたいよ?てか、あいつ、私には話さなかったけど、かなり酷いこともされていたみたいで。蒼もさ、ホントにバカだよねぇ……」


そんな酷いこと!?


「なんでバカなんですか?蒼さん、別に何も悪いことなんてしてないのに……」


「ん――。桜には言ってないみたいだけど、あいつ、やり返すくらいの力はあるのよ?でも――…」


蒼さんのもう一つの一面について、遥さんから教えてもらう。


「へっ?そんな凄い人なんですかっ?私、蒼さんのこと守りますって言っちゃったんですけど、失礼でしたね」


「まぁ、問題は精神《メンタル》の方だから、また何かあるかもしれないけど、支えてあげてね?」

「はいっ!」


実は先日、給料日だった。

給料のほとんどを蒼さんに渡そうとした。


そしたら

「いらない。桜が使って?余ったら今後の貯金にすればいい」そう言われた。


そんなわけにはいかないし、私も引けなかったら

「じゃあ、一万円で。それ以上は本当に返す」

一万円というお金で家賃・光熱費・食費までも蒼さんに実は養ってもらっている状態だ。


遥さんにも相談したけど

「蒼は聞かないし、いいよ。蒼もお金に困ってはいないから。ご飯作ってあげて掃除もして、洗濯もしているんでしょ?甘えなさい」

と言われてしまった。


だから少しでも蒼さんのために何かしたいと思い、STARに行って椿さんを指名しようと思っている。STARでは指名はあまり関係ないみたいだけど、蒼さんのためになるんだったら……。

蘭子ママさんにお礼も伝えたいし、売上に協力できればいいと思った。

今度の金曜日に行こうと思っている。


その日、帰宅をする――。

蒼さんはいなかった。出勤したんだ。もう大丈夫なのかな。

キッチンへ行くと、蒼さんのために作った朝食と昼食がなかった。

食べてくれたんだ。良かった。

心配になり

<蒼さん、体調大丈夫ですか?酷かったら言ってください。迎えに行きます>

メッセージを送る。


お節介だと思ったが、昨日の蒼さんの様子を見ているととても不安になった。


夕ご飯の支度をしていると

<ありがとう。迎えに来てくれるとか……。嬉しかったよ。無理しないようにするから>

蒼さんから返信が来ていた。

「蒼さんが元気になってくれるような夕ご飯、作ろう!」

気合を入れて準備に取り掛かった。


夜二十四時すぎ――。

<ガチャ>

玄関の開く音がした。

蒼さんだ。玄関まで迎えに行く。

「おかえりなさい」

私が声をかけると「ただいま」椿さんの声のまま、いつもみたいに微笑んで答えてくれた。


「体調は……」

「もう大丈夫。心配してくれてありがとう」

顔色は悪くないみたい。良かった。

もう蒼さんが辛い想いをすることが起こりませんように。

そう願った。




一週間後――。


今日は金曜日だ。

仕事が終わったら蒼さんに秘密で「STAR」に行く。

遥さんを誘ったが、子どもさんの用事があるからと断られた。

一人で「STAR」に行くのは初めて。そして久し振りだ。

なのでちょっと緊張しているが、楽しみ。

椿さんの姿の蒼さんにも会えるし。


仕事が終わり

「じゃあ、桜。蒼によろしくね!」

帰り際、遥さんから声をかけられた。


「はい!」

返事をし、ドキドキしながらお店に向かう。

蒼さん、びっくりするかな。

綺麗なオネエ?さんは好きですか?

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